日本の高齢化
[Wikipedia|▼Menu]
2015年には、15歳から29歳までの177,600人が高齢の家族の面倒をみていた[21]。しかし、若者の日本の主要都市への移住、女性の労働への参加、および面倒をみる費用が増加し、老人ホームデイケアセンター在宅医療プログラムなどの新しい解決策が必要である[22]。毎年、日本は400の小学校中学校を閉鎖し、そのうちのいくつかを高齢者ケアセンターに転換している[23]。多くの高齢者が一人で孤独に暮らし、毎年数千人が死後数日から数週間気づかれずに死亡しており、この現象は孤独死といわれる[24]

認知症高齢者数は、2012年現在約462万人であるが、2025年には約675万人になると推計されている[25]。また、2002年9月現在は要介護者の半数に認知症の影響が認められており、今後認知症高齢者は急速に増加すると見込まれている[26]
政治日本の福祉に占める高齢者関連支出(100億円)日本の人口一人あたり年齢別国民医療費(千円)

東京都市圏は、地方からの移住により、日本国内で唯一の人口が増加している地域である。2005年から2010年の間に、日本の47の都道府県のうち36が5%以上も縮小した[4]。放棄された家屋が問題になっている(全国で846万戸)[27]。かつて総務大臣であった増田寛也は、若い人、特に若い女性たちが農村部から、東京、大阪名古屋に移住し、それらの都市には現在すでに日本の人口の約半分が集中している。2040年にかけて日本の市町村の約半数が消滅する可能性があると推定している[28]。政府は、地域活性化対策特別委員会を設立し、特に札幌仙台広島福岡などの地域拠点都市の開発に注力している[29]

都市への移動と人口減少は、選挙権の大きな地域格差を招いている。いくつかの過疎地区は、都市と比較し国会への選挙権が実質3倍あり、一票の格差と呼ばれている。2014年に最高裁判所は投票権の格差が憲法に違反していると判決を下したが、農村部の有権者に依存している保守的な与党は、必要とされる再編を中々進められないでいる[19][30][31]

高齢者の割合の増加は、政府の支出に大きな影響を与える。1970年代初めには、公的年金、医療費、福祉サービスの費用は日本の国民所得の約6%に過ぎなかった。しかし、1992年には国家予算の18%が費やされるようになり[32]、2019年時点では国民所得の30.88%になった[33]。1980年代半ば、政府は医療と年金の政府と民間部門の相対的負担を再評価し、政府の費用を管理する政策を確立した。「日本の福祉」および「日本の年金」も参照
経済日本における労働力人口と、その将来予想。青は実績データ。
オレンジは現状維持モデル。緑は男女の賃金差解消、赤は定年延長、紫は男女の賃金差と定年延長の両方を行った場合。[34]

1980年代から労働力の不足は、女性の社会進出につながった[35]。米国国勢調査局は、2030年までに日本の労働力が18%減少し、消費者が8%減少すると、2002年に推定した。高齢の世代が退職し、若い世代が少なくなり、2015年度末の日本の求人倍率は1.25倍となった。労働市場はすでに労働者が不足している[36]

1980年代と1990年代の労働力不足の結果、多くの日本企業は定年を55歳から60歳または65歳に上げた。今日、多くの従業員は退職後も働くことを選べる。退職者が増加し、国民年金制度に負担がかかっている。1986年に政府は年金給付の年齢を60歳から65歳に上げ、年金制度の疲弊は、退職を引き延ばし、そうできない人は貧困に追いやってきた[32]。定年退職の年齢は将来さらに高くなる可能性がある。2000年に発表された国連人口部の調査によると、労働者数からの退職者の減を補うためには、日本は退職年齢を77歳に引き上げるか、2050年までに1700万人の正味移民を許可する必要がある[37][38]

農業や建設などのあまり就職の人気のない産業は、他の産業よりもさらに労働者不足が深刻である。日本の平均的な農家は68.4歳である[39][40]。建設労働者の3分の1が55歳以上で、10年以内に退職すると予想される人も多く、30歳以下の労働者は10分の1である[41][42]

生産性が日本の労働力の減少率より速くならない限り、労働力人口の減少は、経済の縮小につながる[43]。OECDは、オーストリア、ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペイン、スウェーデンの同様の労働力不足が、2000年から2025年にかけて欧州連合(EU)の経済成長を年率0.4%低下させると予測している。日本では、労働不足により、2025年まで経済成長が毎年0.7%ポイント低下し、その後も日本は0.9%ポイントの成長減となると予測されている[44]
政府の政策

日本政府は、子育てを奨励し、特に女性や高齢者の労働力を増やす政策で、人口問題に取り組んでいる[45]。安倍政権では一億総活躍国民会議が設けられた。家族形成を促す施策には、保育所の拡充、子供のいる家庭への補助、地域行政が主催する結婚活動(婚活)などがある[46][47]マタニティハラスメント対策として、長い出産休暇など妊娠差別に対する法的保護など、より多くの女性を職場に留めるための政策もある[45][48]。しかし、女性たちの労働を促す政策は、アベノミクスの経済復興計画の一部であるが、文化的な障壁、固定観念に阻まれている[49]

国鉄1973年敬老の日には高齢化に対応してシルバーシートを設置している。

労働力不足を補う為、移民受け入れを緩和すべきであるという意見もあるが、慶應義塾大学の津谷典子教授によると、海外からの移民を増加させ、日本の人口減少に対抗することが非現実的である為、出産率が上がるには政府が取らなければならない政策は女性や夫婦がワークライフバランスが可能になるよう支援することであると主張している。[50]
ワーク・ライフ・バランス

日本は、出生率を高めるため、ワーク・ライフ・バランスにその政策を集中させてきた。これらの課題に対処するために、日本は、2010年6月に施行された育児・介護休業法では、理想的なワーク・ライフ・バランスとして、夫婦がより多くの子どもを育てられる環境を提供する目標を設定した[51]

この法律は、父親に、子供の出産後に最大8週間の休暇を取る機会を与え、就学前児の従業員には次のような手当を与えている。子供の怪我や病気、従業員の要請に基づいて月間24時間を超える超過時間、従業員の要請に基づいて夜間に働くことの制限、従業員の勤務時間短縮と従業員のフレックスタイムの機会などが含まれる[51]

この法律の目的は次の通り。女性雇用率(65%から72%への増加)、週60時間以上の労働者の割合(11%から6%に減少)、年間有給休暇の取得率(47%から100%への増加)、育児休暇の割合(女性の場合は72%から80%、男性の場合は6%から10%への増加)、6歳未満の子供がいる家庭での育児と家事に男性が費やす時間(1日1時間から2.5時間に増加)[51]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:80 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef