なお、この間、1938年に厚生省が内務省から分立し、警察官の業務のうち衛生業務は保健所に移管された[4]。消防業務に関しては、1948年に国家行政組織として消防庁が設置され、消防業務は警察官の業務から独立し、自治体消防制度が発足した。 警察官の採用には、警察庁警察官の採用試験として人事院の実施する国家公務員採用試験と、各都道府県の警察官の採用試験として各都道府県人事委員会(都道府県警察に業務が委託されている場合もある)の実施する地方公務員採用試験がある。なお、警察官採用数の上位30校はすべて私立大学が占めている[7]。 国家公務員として警察庁(本庁)に採用された場合、国家公務員総合職採用者(旧T種、旧三級職、有資格者、いわゆるキャリア)は警部補の階級を初任とし、国家公務員一般職(大卒)採用者(旧U種、旧二級職、いわゆる準キャリア)は巡査部長の階級を初任とする。これら警察庁採用の警察官は昇任試験を課せられることなく、選考により昇任する。 地方公務員として都道府県に採用された場合は、採用枠や学歴に関係なく原則として巡査(旧1級職、国家III種採用相当、高卒程度)の階級を初任とする。その後は一定の経験年数を受験資格とする、巡査部長、警部補、警部と3段階の試験を通じて昇任の道が開ける。いずれも倍率の高い試験である。警視以上へは試験ではなく個別の選考により昇任する。警察制度上、巡査部長は初級幹部、警部補は中級幹部と位置づけられる。地方公務員として採用された者であっても、警視正の階級に至ると国家公務員に身分が切り替わり、任命権者も警察本部長から国家公安委員会になる(地方警務官)。俸給その他手当についても国庫がその支弁を行うようになる(警察法37条
採用・昇任
都道府県の場合、専門性を必要とされる職種については経験者または有資格者を採用しており、学歴に関係なく経験や能力によって階級が定められている。主に財務捜査、サイバー捜査において専門採用枠があり、採用時の階級は巡査部長であることが多い。
少子高齢化により受験者数が減少していることから、退職した元警察官の採用要件を緩和し即戦力として雇用する「再採用」が全国で行われている[8]。
1960年代には人手不足から採用試験は毎月のように行われており、当時大学生で就職活動が上手くいっていなかった若本規夫は11月に警視庁へ願書を出し、採用試験では身体検査、筆記試験、面接が1日で終了、当日に合否判定が下され、2月の身上調査で正式合格、4月に警察学校へ入校したという[9]。
階級・階級的職位「日本の警察#職員」も参照
警察官の階級は、警察法第62条により、警視総監以下、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査の9階級が定められている。また巡査と巡査部長の間に階級徽章から区別されるように、警察法に定められた正式な階級では無いが「階級的地位」として運用される巡査長[注釈 1]がある。警部補、巡査部長、巡査長、巡査の下位3つの階級と1つの階級的職位で全警察官の92パーセントを占めており、警部が5%、警視が3%で、警視正以上の警察官は僅か0.2%しかいない[10]。
警察庁の長たる警察庁長官は日本の警察官の最高位の官職名・職位であるが、階級を有しない警察官である(警察法第34条第3項、第62条)。警視監以下の警察官は制服着用時に「階級章」を着装するが、長官は特別に規定された「警察庁長官章」(金色の5連日章)を両肩肩章に着装する(警察官の服制に関する規則第4条第1項)。警視総監も警視監までに規定されている階級章ではなく、両肩に4連日章を着装する。
警視総監は、最高の階級として東京都を管轄する警視庁に1名のみ置かれ、その職名と階級が一致する。全国の道府県警察本部長が警視監ないし警視長なのに対して、首都の治安維持を指揮する警視総監は、階級においても特別な地位である。もっとも、長官も警視総監も、制服を着用する事は自身が直接指揮を執る場合や式典の場合以外ではなく、通常の勤務は背広・ネクタイ姿である。
その他の公務員でも同様であるが、殉職した場合は殉職の態様により二階級、あるいは一階級特進等の形で特別に昇任する場合があり、その場合には、(遺族への)退職金支払い・叙勲・その他の保障も特進した階級に基づきなされる。
1990年代に、職務の高度化及び専門化に鑑み、警視、警部、警部補の人員割合を増やすという、階級構成の是正化が行われている[11]。