日本の漫画
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近年ではスマートフォンでの閲覧を意識し、縦長のコマを連続させる「縦スクロール漫画」が登場し、これに合わせた表現手法も研究されている[45]
技法詳細は「ふきだし」、「音喩」、および「漫符」を参照

登場人物のセリフや思考はふきだしと呼ばれる枠の中に文字で書かれる。フキダシの形や文字の字体により語調を表す。

擬音語擬態語(オノマトペ)が、手書きの描き文字[46]として絵の中に書かれる。細々としたセリフが描き文字で書かれる事もある。

漫符と呼ばれる一種の記号を使用して、人物の心理や動作、ものの動きなどを明示的に表現する。

意図的に何も描かず空間を出して物語における”時間の間”を生み出したり、またキャラクターの心情をいくつかのコマ分割で描写する事で、キャラクターの心情心理を描写し、物語の奥行きを与えている。

コマを飛び出したり、隣のコマと結合させるなど過剰な表現も用いられる。

特徴
様々な方向性・対象・ジャンル

大まかには読者の年齢層、ジャンル、表現形式で分類されているが、大人向け、子供向けという大まかな区分けではなく、各年齢層や嗜好に合わせた作品が発表されている。

特にスポーツ漫画は細分化が進んでおり、メジャー競技では野球漫画サッカー漫画など一つのジャンルを形成し、さらに高校野球やプロリーグなどサブジャンルに分けられる。また同じ競技でも試合展開のリアリティを重視した作品、必殺技を繰り出すなど荒唐無稽な作品、競技ではなく選手の人間関係を重視する作品、選手ではなく監督側の視点など様々な設定の作品が存在する。社会現象の影響を受け、女子サッカーカーリングなど話題になった事象は即座に漫画の題材となる。作品が注目されると追随する漫画が増え新たなジャンルが形成されるが、逆に漫画が人気となり競技が活発化することもある。例えば『SLAM DUNK』のヒットにより、当時の日本では競技人口が野球やサッカーと比べ多くなかったバスケットボールが人気競技となった。サイクルサッカー伝書鳩レース、エアレースなど世界的にマイナーな競技、架空のスポーツを扱った作品も一定数存在している。

恋愛漫画では男性向け・女性向けという区分けもあるが、ラブコメディハーレムもの不倫同性愛などの多数のテーマがあり、登場人物の年齢も子供から中高年まである。またスポーツ漫画の一要素として扱われることもあり、多くの漫画は複数のジャンルにまたがっている。

日本では表現の自由検閲の禁止が憲法第21条で保障されているため、表現の限度は基本的に出版社の自主規制によっている。このため一般向けの漫画誌であっても過激なアダルト描写を追求した作品や犯罪行為を描いた作品が多数発表されている。
雑誌連載

プロによる作品は雑誌などの定期刊行物で連載された後、数話ごとに纏め単行本として刊行される形態が主流。日本の漫画雑誌は複数の作家が別作品を同時に連載するという形態のため300ページを超えるのは普通で、アメリカン・コミックスの雑誌と比べると非常に分厚い。また日本の雑誌は1つの雑誌コードにつき1つの増刊枠を持つことができるという制度を利用し、新人や本誌のジャンルと合わない作風の作家にも活躍の場を与えることが可能となった。規則ではないが「別冊(本誌名)」と題することが多い。

漫画雑誌は大衆を想定した『メジャー誌』、特定の層に照準を合わせた『マイナー誌』、高校生以上の若者を対象とした『青年誌』、小中学生向けの『少年誌』という区分けがある。また成人向け漫画時代劇萌えなど特定ジャンルの雑誌もあり、好みの作品を探す際には雑誌が標榜する編集方針を手がかりにすることで、インターネットの登場以前にもある程度の絞り込みが可能であった。本誌(『週刊少年マガジン』)よりマイナーなジャンル(ダーク・ファンタジーなど)をコンセプトにしていた『別冊少年マガジン』では、発行部数が多い本誌に『進撃の巨人』の読み切り版を掲載したところ認知度が上がったことから、他社でも単行本の発売やアニメ化などに合わせ、より部数の多い雑誌に読み切り版を掲載する「出張掲載」の手法が広まった。

漫画雑誌だけでなく新聞や専門誌などで連載されることも多く、専門誌では雑誌の読者向けにニッチな作品が掲載されることもある。

近年では出版社の公式サイトで一定期間無料公開し、アクセス数が多い作品を雑誌に移籍させたり直接単行本化する流れもある。作品の単品販売も行われているが、基本的に雑誌(の編集部)ごとに纏められている。また雑誌に掲載されている作品でも1話から3話程度までを宣伝のために公開したり、新人賞において雑誌には大賞作のみを掲載し、奨励賞や審査員賞にとどまった作品はウェブ限定で公開する例もある。
非娯楽漫画

文章・写真・挿絵と同様に紙媒体における表現手法として定着している。海外のような1枚の風刺絵だけではなく数コマから数ページの漫画として制作される。

純粋な娯楽ではなく、歴史や社会情勢などの説明や学習としても用いられる学習漫画、ノンフィクションやルポの漫画などもジャンルを形成している。また医療漫画には娯楽性と社会的メッセージを両立した作品も多い[47][48]

純粋に宣伝のために製作された広告漫画も多く、企業から依頼を受け漫画家に発注する仲介業者も多数存在するなど、一つの市場を形成している。
メディアミックス

漫画はオリジナル作品だけではなく、小説、アニメ、映画の漫画化(コミカライズ)として発表される作品も多い。

逆に漫画作品の小説化(ノベライズ)や当初からメディアミックスの一つとして小説、アニメと連動する作品もある。
評論詳細は「漫画評論」を参照

日本で漫画評論が行われるようになったのは大正時代中頃とみられている[49]細木原青起が日本初の本格的な漫画史『日本漫画史』(1924年、雄山閣)を出版、歴史や教育面を対象した評論が主だったが[50][51]、戦後になると文芸や映画など他分野出身者によるものが目立った後[51]、漫画に親しんだ読者や作家が同人誌で本格的な評論を行うようになり、後の漫画批評を形作った[52][53]。もう一つあなたの特色を挙げて見ると、普通の画家は画になる所さえ見付ければ、それですぐ筆を執ります。あなたは左右でないようです。あなたの画には必ず解題が付いています。そうして其解題の文章が大変器用で面白く書けています。あるものになると、画よりも文章の方が優っているように思われるのさえあります。あなたは東京の下町で育ったから、斯ういう風に文章が軽く書きこなされるのかも知れませんが、いくら文章を書く腕があっても、画が其腕を抑えて働かせないような性質のものならそれ迄です。面白い絵解きの書ける筈はありません。だから貴方は画題を選ぶ眼で、同時に文章になる画を描いたと云わなければなりません。その点になると、今の日本の漫画家にあなたのようなものは一人もないと云っても誇張ではありますまい。私は此絵と文とをうまく調和させる力を一層拡大して、大正の風俗とか東京名所とかいう大きな書物を、あなたに書いて頂きたいような気がするのです。 ? 夏目漱石岡本一平著並画「探訪画趣」序』[54][55]しかし、漫画というものは、絵よりも文学にちかいものですよ。それも少しの差ではなくて、絵が三分、文学が七分、否、一分と九分ぐらいに全然文学の方に近いだろうと私は思っています。紙芝居は一目リョウゼン、絵は従で、物語の方が主ですが、それにくらべると、漫画の方は絵が多くて言葉の使用は甚だ少い。けれども、その多少によって絵か文学かが定まるわけではなくて、漫画の発想も構成もほぼ文学そのものだという意味です。絵で読むコントであり、落語であります。 ? 坂口安吾『戦後文章論』[56]
分類書店の漫画コーナー。出版社別に分類されていることが多い。
対象読者による分類

作品の主な対象となる読者の年齢や性別という観点では、次のように分類される。

幼年漫画(小学生向け漫画) - 児童漫画とも呼ばれる。

少年漫画(小学生 - 高校生中心の漫画)

少女漫画(小学生 - 高校生、一部大人の女性向けの漫画を含む)

青年漫画(高校生以上)

女性漫画 - 大人の女性を対象とする漫画。 ヤング・レディースを含む。


成人向け漫画‐18歳以上を対象とした、性描写を含む漫画。レディースコミックを含む。

以上の分類は出版社も採用しているが、便宜上の分類に過ぎない。青年漫画を女性が読むこともあるし、少年漫画を大人が読むこともある。
ジャンル

更に題材によっては主に次のように分類されるが、1つのジャンルに縛られない作品も多い。


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