日本の消防
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救助

救助は、災害や事故により危険の迫った者を救出する業務である。救助隊・特別救助隊レスキュー隊ともいう。)が救助工作車に搭乗し、救助資機材を駆使して救助業務を行う。救助の対象事案で最もポピュラーなものが交通事故であろう。主に事故車に閉じこめられた乗員・乗客を救出することとなるが、実は閉じ込められた人がいなくても、「危険排除」と呼ばれる、事故車からの燃料・オイル漏洩防止処置など、レッカー移動までの一連の作業を行う。

また水難事故山岳事故での捜索・救助、地震NBC災害の救助、洪水土砂災害などの災害で孤立した住民を救出するのも救助の範囲である。さらに、エレベーター停止による閉じ込め、一人暮らしまたは一人の際に急病となり施錠された家屋・室内から脱出不能者の救出も担う。つまり、救助を求めているあらゆる事案で救助活動を行う。

日本は地震などの自然災害が多く都市化などが進んでおり通常の救助隊よりもより高度な装備や技術を持った消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)が東京消防庁に、特別高度救助部隊(スーパーレンジャー)が横浜市消防局にそれぞれ創設された。

さらに新潟県中越地震福知山線脱線事故の教訓に上記の部隊を参考とし特別高度救助隊・高度救助隊政令市特別区中核市等の消防本部にそれぞれ創設された。

また、本部によっては河川や山間部で起こる水難救助山岳救助等の専門的な部隊として化学救助隊水難救助隊山岳救助隊も編成されている。東京消防庁には東京消防庁航空隊、政令市消防局には消防航空隊、都道府県(都と府を除く)には防災航空隊が設置されており消防防災ヘリコプターによる救助活動を行っている。

大規模災害時には国内の災害なら緊急消防援助隊、海外の災害なら国際消防救助隊国際緊急援助隊救助チームの一員)が編成される。

救助隊の種類:保有装備などにより救助隊、特別救助隊、高度救助隊、特別高度救助隊の四段階構成になっている。なお、いずれ部隊も配置の基準を満たしていない自治体でも自主設置可能とされている。

区分救助資機材の基準車両の基準配置の基準隊員の構成
救助隊救助活動に必要最低限の資機材救助工作車又は他の消防車1台人口が10万人未満の地域人命救助の専門教育を受けた隊員5名以上で編成するように努める。いわゆる兼任救助隊。
特別救助隊救助隊よりプラスアルファの資機材救助工作車1台人口が10万人以上の地域人命救助の専門教育を受けた隊員5名以上
高度救助隊高度救助資機材電磁波人命探査装置、二酸化炭素探査装置、水中探査装置など一部の高度救助資機材は、地域の実情に応じて備える)救助工作車1台中核市もしくは消防庁長官が指定するそれと同等規模もしくは中核市を有しない県の代表都市を管轄する消防本部人命救助の専門教育を受けかつ高度な教育を受けた隊員5名以上
特別高度救助隊高度救助資機材と地域の実情に応じてウォーターカッターと大型ブロアー救助工作車1台と特殊災害対応車1台政令指定都市および特別区が連合する消防(東京都)人命救助の専門教育を受けかつ高度な教育を受けた隊員5名以上


救助活動(東北地方太平洋沖地震に伴う東日本大震災被災地にて)

救助工作車

予防

予防は、火災の原因を調査し、建物の法令適合性を審査及び検査するとともに、火災が発生しないように建物管理者へ指導を行う業務をいう。建築確認と並行して行われる消防同意、建物への消防用設備の設置の指導、危険物の規制、防火対象物への予防査察、民間事業所の自衛消防組織への指導育成などが予防業務の範囲である。現在の建築物を始めとする都市の工作物や機能については、消防隊や救助隊の出場件数が多かった時代と比べ、安全性が遥かに高まっており、近年の火災・救助の出場件数は下げ止まり傾向にあるのが実情である。そのため消防行政全般の中で、警防業務における法改正や改編は減少しているものの、予防業務については複雑・高度化する建築物の進化の流れや、頻繁な法令改正に適応するため、高度化・改編が図られている。特に新宿歌舞伎町の火災事案以降、消防の行政責任が強くを問われるようになったことにより、消防法だけでなく、行政手続法や建築基準法といった予防行政の執行に付随する他法令の知識についても熟知が求められ、高度な知識を要する専門職域となっている。
消防機関

消防を行う組織を消防機関という。消防の責任は市町村が負うこととされている(消防組織法第6条)。そのため消防機関は市町村長の管理下にある。都道府県は、市町村消防へ指導・助言を行うにとどまり、市町村消防を管理する権限を持たない(同法第36条ないし第38条)。

消防機関には2種類あり、一つは消防本部、もう一つは消防団である(消防組織法第9条)。
消防本部

消防本部は消防専門の市町村部局である。常備消防ともいう。消防本部の業務実施機関として消防署が置かれる。詳細は「消防本部」を参照
消防本部の内部組織
消防本部(
東京消防庁を含み、「消防局」などの名称の場合もある)

消防署・分署

出張所・分遣所

消防吏員と消防団員の身分と給与
消防吏員は各自治体の職員で公安職地方公務員である。労働三権は適用されない[注釈 1]

消防団員は非常勤の地方公務員である。災害出動・訓練などを行うことによりその費用(一日あたり100円、一出動ごとに手当7000円)が支弁される[注釈 2]。よって無償のボランティア団体ではなく、有償のボランティア団体である。

消防吏員の階級詳細は「消防吏員」を参照
消防総監:人事選考により昇任する。消防長級の階級である。消防機関としてこの階級を定めているのは東京消防庁のみである。

消防司監:人事選考により昇任する。消防長級の階級であることが多い。

消防正監:人事選考により昇任する。消防長級の階級であることが多い。

消防監:人事選考により昇任する。消防長級の階級であることが多い。

消防司令長:人事選考により昇任する。消防署長級の階級であることが多い。

消防司令:人事選考により昇任する。

消防司令補:各組織の規定によってことなるが、消防士長に昇任してから数年経過で昇任試験受験資格を得て、試験合格後この階級へ昇任する。一定の年齢に到達することにより昇任する場合と、年功序列・その他の人事選考により昇任する場合もある。

消防士長:各組織の規定によってことなるが、採用後数年経過で昇任試験受験資格を得て、試験合格後この階級へ昇任する。一定の年齢に到達することにより昇任する場合と、その他の人事選考により昇任する場合もある。

消防副士長:各組織の規定によってことなるが、採用後数年経過でこの階級へ昇任する。

消防士:採用時のほとんどがこの階級である。

消防団

消防団は、民間人により構成されるボランティア的な消防機関である。非常備消防ともいう。詳細は「消防団」を参照
消防団員の階級
団長

副団長

支団長

副支団長

分団長

副分団長

部長

班長

団員

国・都道府県の関係組織

消防に関する事務を所管するため、国においては消防庁が、都道府県においては消防防災主管課(都道府県により、防災消防課・危機管理課などと名称が異なる)が設置されている。


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