捕獲調査の副産物は有効利用が条約で義務付けられており、政府の適切な管理のもと、副産物として生じた鯨肉は一般販売のほか学校給食などの公益事業に供され、その収入は調査捕鯨の費用に充てられる。調査捕鯨については「調査」の名を借りた事実上の商業捕鯨ではないかとの批判もあるが、日本国政府や日本捕鯨協会は「調査した後の鯨体は、(可能な限り)完全に利用することが条約で定められている」などの説明を行っている[50]。(副産物の詳細については鯨肉#鯨肉の流通参照)[注 11]
大型鯨類の商業捕鯨の再開捕鯨継続の是非についての論争については「捕鯨問題」を参照
捕鯨国と反捕鯨国の対立が先鋭化しIWC管轄の大型鯨類の商業捕鯨の再開の見込みはないと判断した日本政府は、2018年(平成30年)12月26日にIWCからの脱退を発表し[52]、離脱の効力が発生した2019年(令和元年)6月30日にIWCを脱退した[53]。これによりIWCの捕獲制限を受けなくなるため、同年7月1日から日本の領海とEEZ内に限定して大型鯨類の商業捕鯨を再開した[53]。
捕獲枠は100年間商業捕鯨を継続しても鯨の資源量に影響を与えない保守的な捕獲数として、2019年7月から12月末までの半年で、ミンククジラ52頭、ニタリクジラ150頭、イワシクジラ25頭の計227頭、2020年(令和2年)以降は年間でミンククジラ171頭、ニタリクジラ187頭、イワシクジラ25頭の計383頭の捕獲枠が設定された[54]。
商業捕鯨の再開以降も、日本共同捕鯨から捕鯨母船とキャッチャーボートを継承した共同船舶[55]が世界で唯一、母船式捕鯨による大型鯨類の商業捕鯨を行っている[56][57]。唯一保有する捕鯨母船は、2023年(令和5年)に日新丸が引退した[58][59]一方で、約70年ぶりの新造船である関鯨丸が進水した[60]。 イルカ漁を含む小型鯨類の捕鯨はIWC管轄外のため、調査捕鯨時代にも商業捕鯨が継続されている。日本の沿岸域における捕鯨では、農林水産大臣が認可する「小型捕鯨業」と、都道府県知事が認可する「イルカ漁業」が設定され、さらに後者は捕獲方法で「突きん棒漁業」と「追い込み漁業」(後述)に細分され、それぞれに捕獲枠の設定が行われ捕鯨(イルカ漁)が許可されている。なお同じ鯨種でもそれぞれのカテゴリーで別々に捕獲枠が設定されている。 2017年度における農林水産大臣より許可された小型捕鯨業で捕獲された鯨の鯨体処理場の設置場所は、網走、函館、鮎川、和田、太地の5箇所のみで、その年間捕獲枠もツチクジラ69頭(網走4頭、函館10頭、鮎川と和田55頭)、タッパナガ36頭(鮎川)、マゴンドウ36頭(太地と和田)、オキゴンドウ20頭(太地)と極めて厳しく制限されている[61]。1920年代から商業捕鯨モラトリアムまでの間はミンククジラを重要な捕獲対象としており、そのため小型捕鯨業用の捕鯨船は通称「ミンク船」と呼ばれていたが、ミンククジラがIWCの管轄下に置かれてしまった為、調査捕鯨時代は小型捕鯨業における捕獲対象になっていなかった。 調査捕鯨時代は、日本政府はIWCにおいて、沿岸捕鯨は小規模捕鯨でアラスカなどが認められている先住民捕鯨と同じであると主張して[62]、大型鯨類に分類されてIWCの管轄下におかれているミンククジラの沿岸商業捕鯨再開を求めたが、アメリカ合衆国やオーストラリア、南米の反捕鯨国から、ミンククジラの商業捕鯨は認められないとする反対をうけ、IWCでの採択で承認されなかった[63]。また、2009年及び2010年には前述のようにIWC総会で調査捕鯨における捕獲頭数の削減或いは休止と引き換えに主に日本沿岸での商業捕鯨をIWCの管理下において認める議長案が出されたが、合意に至らなかった[64][65]。 「突き棒漁」は手投げ式の銛による捕獲方法、「追い込み漁」は湾などに漁船でイルカの群ごと追い込んで網で閉じ込める捕獲方法で、水族館などの飼育用生体の捕獲も追い込み漁の一環として行われている。このほかに沖縄県の一部ではパチンコと通称されるクロスボウにより銛を発射する捕獲方法が行われているが、法律上の区分としては突き棒漁に含まれている。
小型鯨類の沿岸商業捕鯨
小型捕鯨業
イルカ漁業
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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