日本の捕鯨
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技術的発展としては、1951年(昭和26年)に先端が平らで水中での直進性に優れ、浅い角度で命中した時の跳弾も少ない「平頭銛」[注 9]が開発されたことや、1955年(昭和30年)に極洋捕鯨が初めて導入した探鯨機(魚群探知機)が2年で各社の船団に完備されたこと、水を吸わず耐久性が高いナイロン製のロープを他国に先んじて導入するなど新技術を続々と導入したほか、シドニーウェリントンケルゲレン諸島から送られてくる気象情報や水温分布の解析し、鯨類の群れや日本のみならず各国の捕鯨船団の動きを正確に把握し、漁場を逃さないノウハウを各社で蓄積した[31]

戦前は国際的な捕鯨管理枠組みには参加していなかった日本だったが[注 10]、戦後に国際捕鯨委員会(IWC)が設置されるとこれに加盟した。1962年(昭和37年)、日本とノルウェー、イギリス、ソ連の4ヶ国による国別の捕獲頭数割り当ての協定が発効されたが、他国の操業は照合する油脂の台頭やエネルギー革命などによる鯨油需要の激減により縮小し、1964年(昭和39年)には日本とノルウェー、ソ連のみが南氷洋捕鯨を行っていた[32]。対象種をシロナガスクジラからナガスクジラ、さらに水中速力が速くイワシクジラやクロミンククジラへと移しながら継続されたが徐々に縮小され、1976年(昭和51年)には水産会社ごとの操業は断念されて日本共同捕鯨株式会社に統合された[33]1982年(昭和57年)にIWCで商業捕鯨停止が決議されると、後に日本もこれを受け入れて、1986年(昭和61年)に南氷洋での商業捕鯨としての母船式捕鯨は完全停止された。1988年(昭和63年)には、太平洋でもミンククジラとマッコウクジラの商業捕獲が停止した(商業捕鯨モラトリアム)。
調査捕鯨時代

1986年に南極海での母船式商業捕鯨が停止されてからは、大型鯨類に対する捕鯨は南極海と北西太平洋における調査捕鯨を利用して行うことになり、1987年度から2018年度まで行われた。なおIWC管轄外の小型鯨類(イルカを含む)に対しては引き続き沿岸における商業捕鯨が行われた。調査捕鯨はIWC管轄下であるがIWCの頭数管理が及ばない為、IWC議長から日本が調査捕鯨を休止する代わりに南半球及び日本沿岸でのIWC管理下での商業捕鯨を可能とする案が提案されたこともあるが、反捕鯨国の反対で否決された[34]
実施主体

調査捕鯨の実施主体は、日本政府から特別許可証を発給された財団法人日本鯨類研究所である。捕獲を含む実際の調査活動は、南極海と北西太平洋沖合いにおける母船式捕鯨については共同船舶株式会社に、北西太平洋沿岸における捕鯨は小型捕鯨業者(後述)によって組織された一般財団法人地域捕鯨推進協会に委託する方式で行われた。共同船舶社は、商業捕鯨末期の共同捕鯨社の後身である。

調査捕鯨は、水産庁所管財団法人の「日本鯨類研究所(鯨研)」のもとで年間45億から50億円規模の予算で例年二回、12月から翌年3月に南極海、6月から9月に北西太平洋の沖合いと沿岸で実施した。そして、その調査費は日本鯨類研究所が、鯨肉販売の収益で賄った。
南極海での調査捕鯨

南極海での商業捕鯨停止の翌年の1987年度から第一期南極海鯨類捕獲調査(JARPA I)を開始した。初年度にはクロミンククジラの捕獲枠を300頭に設定し273頭を捕獲した[35]。翌1988年度から1994年度まではクロミンククジラの捕獲枠を毎年330頭に拡大、1995年から2004年までは捕獲枠を毎年440頭に拡大し、毎年ほぼ枠内いっぱいまで捕獲した[35]。2005年度からは第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPA II)を開始し、935頭のクロミンククジラの捕獲枠に加えて10頭のナガスクジラの捕獲枠を設定し、2007年度からはナガスクジラの捕獲枠を毎年50頭に拡大した上で毎年50頭のザトウクジラの捕獲枠も設定した[35]。ただしザトウクジラのみは反捕鯨国の過剰な反発を避けるために捕獲を「延期」した[36]。JARPA IIにおける捕獲実績は最高で2005年度の計863頭(ミンク853、ナガス10)で、最低で2012年度の計103頭(ミンク103)である[35][37]。計6隻(母船1、目視採集船5)の船団が、2009年度から5隻(母船1、目視採集船4)に、民主党政権誕生後の2010年度からは4隻(母船1、目視採集船1、妨害予防船2)に減らされ、調査実施期間(行き帰り除く)も約100日から約60日に減らされ、シーシェパードの妨害もあるため、捕獲実績が大幅に低下した(2010年度は172頭、2011年度は267頭、2012年度は103頭、2013年度は251頭[35][37][38])。尚、元水産庁官僚の小松正之は鯨肉の需要が低迷しているため、需給調整の為に意図的に捕獲数を減らしていると指摘している[39]

2014年(平成16年)3月31日に国際司法裁判所(ICJ)は、南極海における日本の調査捕鯨計画JARPA IIについて、現状の調査方法は事実上の商業捕鯨であり調査捕鯨とは認められないとする判決を下した(南極海捕鯨事件[40]。これを受けて日本政府は、南極海については2014年度は目視調査のみにとどめ、2015年度から捕獲枠をクロミンククジラのみの333頭に減らして非致死的調査の可能性を探る新たな新南極海鯨類科学調査計画(NEWREP-A)に基づく調査捕鯨を再開し[41]、同年度と2016年度はそれぞれ捕獲枠いっぱいの333頭を捕獲した[42][43]
北西太平洋での調査捕鯨

北西太平洋においても調査捕鯨が行われており、1994年度から1999年度まで第一期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN I)が行われ毎年100頭のミンククジラの捕獲枠が設定され、ほぼ毎年捕獲枠上限まで捕獲された[35]。2000年度からは第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN II)が開始され、新たにニタリクジラ毎年50頭、イワシクジラ毎年100頭、マッコウクジラ毎年10頭の捕獲枠が設定された[35]。また北西太平洋においては小型捕鯨船によるミンククジラの沿岸調査も開始され、これを含めると北西太平洋におけるミンククジラの捕獲枠は毎年220頭(北西太平洋沖合い100頭、同沿岸120頭)、全種総計の捕獲枠は380頭(ミンク220、イワシ100、ニタリ50、マッコウ10)となった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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