日本の国旗
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また薩摩藩から洋式軍艦「昇平丸」を幕府へ献上するため、1855年1月(安政2年2月)江戸へ回航された際、日の丸が船尾部に掲揚された[14]。これが日の丸を日本の船旗として掲揚した第一号とされる[13][15]

海事史学者の石井謙治は「斉彬提唱説」を取り上げつつも、日の丸が江戸幕府の御用船旗に用いられた事実から、日の丸が日本船の船印に提唱されたのは自然のこととしている[16]
幕閣・徳川斉昭提唱説
日の丸を掲げる幕府海軍鳳凰丸。なお、白地中黒の帆は幕府船の標識。

海事学者の安達裕之は、上記の説を俗説に過ぎないとしている。『水戸藩史料』等の幕閣や斉昭の書簡・仕様帳といった当時の史料から、安達が考察した日の丸制定の経緯は次のようになる。

1853年7月8日(嘉永6年6月3日)の黒船来航は、これまで低調であった大船建造の禁廃止による西洋船建造を推進させた。この際に問題とされたのが外国船との識別方法で、同年9月初旬(同年8月)に従前より「白地中黒」(白地に黒の横一文字)を幕府船の船印にした浦賀奉行が、蒼隼丸・下田丸の代船(後の鳳凰丸)へ白地中黒とは別に日の丸を掲げることを起工前に検討しており[17]、日の丸を日本船の船印にすることを企図している。

1853年10月6日(嘉永6年9月4日)に老中が浦賀奉行作成の鳳凰丸の図面を評定所一座・勘定奉行大目付目付に渡し、惣船印に日の丸を採用することを諮問している。これに対して評定所一座や大目付目付は、白地中黒を惣船印、日の丸は幕府船の船印にすることを、また勘定奉行は惣船印に白地中黒の帆印、幕府船に白黒の吹貫を提案した。彼らが日の丸を不可とした理由は、御城米船や銀・銅を運搬する幕府御用船に日の丸を200年近く伝統的に用いたこと、日の丸の紅が退色し易いことを挙げている。

その後、外交問題処理が優先され評議は中断したが、鳳凰丸が1854年6月6日(嘉永7年5月10日)に竣工し、幕府は惣船印の決定を迫られた。幕府は、勘定奉行・勘定吟味役・目付からなる大船製造掛に昨年9月の評議案を審議させ、惣船印を白黒の吹貫、帆印を白地中黒、幕府船を日の丸幟との答申を得た。1854年6月29日(嘉永7年6月5日)に老中首座阿部正弘が幕府海防参与徳川斉昭へこの答申を諮問した所、斉昭は白地中黒は徳川氏の先祖である新田氏の印で、日の丸は国名である日本を示す印であり、逆にするべきと提言した。その後1か月余りの間に斉昭と幕府の間で折衝が行われた結果、斉昭の意見が容れられ、1854年8月2日(嘉永7年7月9日)に白地日の丸幟を「日本惣船印」とすることが通達された[18]。竣工したばかりの「鳳凰丸」には日の丸の旗が掲げられ、白地中黒の帆が装備された。

また、石井行夫は安達説を踏襲しつつ、「鳳凰丸」が「昇平丸」よりも早く日の丸を掲げるため公試の一部を省略したこと、浦賀奉行から提出された日の丸の試案が存在したことを取り上げている[19]
国旗としての汎用化咸臨丸(1861年頃)

1858年(安政5年)、幕府目付岩瀬忠震下田奉行井上清直は、日章旗を掲げて神奈川沖に停泊中のポーハタン号に渡り、孝明天皇の勅許を得ないまま、日米修好通商条約に調印・署名した。

1859年(安政6年)、幕府は縦長の幟(正確には四半旗)から横長の旗に代えて日章旗を「御国総標」にするという触れ書きを出した。日章旗が事実上「国旗」としての地位を確立したのはこれが最初である。

1860年万延元年)、日米修好通商条約批准書交換のため、外国奉行新見豊前守正興を正使とする幕府使節団アメリカ合衆国に派遣され、アメリカ軍艦ポーハタン号と日章旗を掲げた咸臨丸に分乗して太平洋を横断した。使節団はサンフランシスコに到着後、更に陸路・海路を経由して首都ワシントンD.C.に到着し、当時のアメリカ合衆国大統領ジェームズ・ブキャナンに謁見して批准 書の交換 を終えた。その後、使節団一行はニューヨークを訪問するが、日章旗と星条旗が掲げられたブロードウェイパレードする模様が伝えられている[20]。これが国旗として日本国外で初めて掲げられた日章旗とされる。

こうして、「日本国惣船印」は国旗とほぼ同様な使い方をされることになり、次第に「国印」(1863年(文久3年))と呼び方が変わっていった[21]
賊軍の旗日の丸を掲げる幕府陸軍の部隊(1864年)

幕府海軍に続き、1862年(文久2年)に創設された幕府陸軍も軍旗に日の丸を採用したことが、2年後の第二次長州征伐頃の幕府陸軍を描いた1864年10月8日付の英週刊新聞『イラストレイテド・ロンドン・ニュース』の挿絵より窺える。以降も幕府陸軍は日の丸を軍旗として使用していた[22]


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