1979年(昭和54年)10月、第1次大平内閣(大平正芳首相)は、「元号法に定める元号の選定」について、具体的な要領を定めた(昭和54年10月23日閣議報告)[8]。
これによれば、元号は「候補名の考案」「候補名の整理」「原案の選定」「新元号の決定」の各段階を践んで決定される。最初に、候補名の考案は内閣総理大臣が選んだ若干名の有識者に委嘱され、各考案者は2 - 5の候補名を、その意味・典拠等の説明を付して提出する。総理府総務長官(後に内閣官房長官)は、提出された候補名について検討・整理し、結果を内閣総理大臣に報告する。このとき、次の事項に留意するものと定められている。
国民の理想としてふさわしいようなよい意味を持つものであること。
漢字2字であること(3文字以上は不可。ただし、奈良時代の天平21年/天平感宝元年(749年)から神護景雲4年/宝亀元年(770年)にかけては、漢字4文字の元号が使用されている)。
書きやすいこと。
読みやすいこと。
これまでに元号又はおくり名として用いられたものでないこと(過去の元号の再使用は不可)。
俗用されているものでないこと(人名・地名・商品名・企業名等は不可)。
整理された候補名について、総理府総務長官、内閣官房長官、内閣法制局長官らによる会議において精査し、新元号の原案として数個の案を選定する。全閣僚会議において、新元号の原案について協議する。内閣総理大臣は、新元号の原案について衆議院議長・副議長と参議院議長・副議長に連絡し、意見を聴取する。そして、新元号は、閣議において、改元の政令の決定という形で決められる。 日本の元号は伝統的に「2文字」であるが、元号に用いることのできる文字数は明確に制限されていない[注 3]。この例外は聖武天皇・孝謙天皇の時代の約4半世紀、天平感宝、天平勝宝、天平宝字、天平神護、神護景雲の5つ(4文字)のみである。「元号一覧 (日本)」を参照 日本において、元号は1979年制定の「元号法」(昭和54年法律第43号)によってその存在が定義されており、法的根拠があるが、その使用に関しては基本的に各々の自由で、私文書などで使用しなくても罰則などはない。一方で、西暦には元号法のような法律による何かしらの規定は存在しない(法令以外では日本産業規格[注 4] に見られるような公的な定義例がある)。なお、元号法制定にかかる国会審議で「元号法は、その使用を国民に義務付けるものではない」との政府答弁があり[注 5]、法制定後、多くの役所で国民に元号の使用を強制しないよう注意を喚起する通達が出されている。 また、元号法は「元号は政令で定める事」「元号は皇位の継承があった場合に限り改める事(一世一元の制)」を定めているにすぎず、公文書などにおいて元号の使用を規定するものではない。しかしながら、日本国民や在日外国人が記入して役所に提出する書類の多くは、年月日の年を元号で記入する書式になっている[9]。ただし元号で書く前提のスペースに西暦で記入することは可能であり、市民団体「西暦表記を求める会」は、「私は西暦で記入します」と書いた意思表示用のカードを作成・配布している[9]。 日本共産党は、元号の使用は慣習としては反対しないが、強制すべきではないという見解を示している[10]。同様に、キリスト教原理主義者団体などは「元号の使用を強制し西暦の使用を禁止するのは、天皇を支持するか否かを調べる現代の踏み絵である」と主張している[11]。 公用文作成の要領において年号を用いる際、元号か西暦のどちらを用いるべきかの旨は明文化されていないが、国(日本国政府)、地方公共団体などの発行する公文書(住民票、運転免許証、その他資格証など)ではほとんど元号が用いられる。一方、ウェブサイトでは、本文で元号を使用していても最終更新日やファイル名などは(管理上の都合で)西暦を使用していることもある。また、官公庁の中長期計画の名称など、キャッチフレーズとして年を印象付けさせる場合は、補助的に西暦が用いられることもある[12][13]。国において、例外的に西暦が使用されている具体例には以下のものがある。
元号の字数
元号使用の現状「和暦」も参照
2002年(平成14年)制定の気象測器検定規則(平成14年3月26日国土交通省令第25号)に定められた気象機器の検定証印の年表示[注 6]など、西暦を使用するよう規定した法令も少数ながら存在する。
旅券(パスポート)は日本国外でも用いられるため、名義人の生年が西暦で記載されている。
個人番号カード(通称「マイナンバーカード」)やかつて発行されていた住民基本台帳カードは、有効期限が西暦で表記されている。個人番号カードの生年月日は日本国籍者については元号で、日本以外の国籍を有する者については西暦で表記されている[15]。また法務大臣が外国人に交付する在留カードや特別永住者証明書でも、券面の年号(生年)で例外的に西暦で記載されている[16][17]。
都道府県公安委員会が発行する運転免許証は所持者の生年月日、交付年月日、各3種類(自動二輪車・小型特殊自動車・原動機付自転車、その他、第二種)の免許取得年月日については元号のみで表記されているが、有効期限年月日については2019年(平成31年)3月末頃から順次、有効期限の西暦の後に括弧書きで元号を表記している[18]。
有効期限が「2024年(平成36年)」と西暦と元号が併記された運転免許証。
改元政令が施行される前に発行された免許証なのでその時点での元号が用いられている[19]。
特許庁が発行する公開特許公報等の工業所有権公報は、「平成22年1月1日(2010年(平成22年)1月1日)」の形で元号表記と西暦表記の日付を併記している[20]。また、特許の出願番号等も「特許2000-123456」のように「西暦年 + 6桁の通番」の形式とされている[21]。これは、日本以外での利用を考慮したためで、世界知的所有権機関が定める標準に準じて行われている[22]。
2018年3月30日の改正により、計量法に基づく計量法施行規則(平成5年通商産業省令第69号)第15条に規定する修理年、並びに食品店等の質量計、燃料油メーター、タクシーメーター等が対象である特定計量器検定検査規則(1993年通商産業省令第70号)第28条の3に定める検定証印などの有効期間満了年、検査の年、形式承認の年、修理の年、適合証印の年について、西暦で表示することとされた(アポストロフィ+2桁の西暦年(例:'17)としても良い)。ただし2018年12月31日までは経過措置として従前の元号表示も可としている[23][24]。