日本の中高一貫校
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中高一貫校には、高校からも外部からの生徒募集を行う学校と、行わずに併設中学校の卒業生のみをそのまま入学させる、完全中高一貫校がある[注釈 2]。近年の傾向としては完全中高一貫校への移行が多い。完全中高一貫校は実質的には中等教育学校と形態はほぼ変わらないが、完全中高一貫校が中等教育学校へと移行する動きは見られない。その理由は、高等学校からの生徒募集を行わず、完全中高一貫教育を行う私立の中高一貫校が少なくないことが考えられる。私立の完全中高一貫校の場合、わざわざ中等教育学校に改める必要はないからである[3]
法制面での分類

1998年の学校教育法改正に伴い、中高一貫教育が制度化された。中高一貫校は法制上、以下に分類することができる[4]
中等教育学校詳細は「中等教育学校」を参照

中等教育6年間を一体のものとして教育を施す学校。その中で、中学校に相当する3年間を前期課程、高等学校に相当する3年間を後期課程と呼ぶ。前期課程を修了した者には中学校を卒業した者と同じ資格が与えられ、すなわち義務教育を修了した者として扱われる。なお前期課程を修了したあと、他の高等学校や高等専門学校など(以下総称して「他校」)を受験する道は閉ざされていない[注釈 3]。一方で、併設型・連携型中高一貫教育校とは異なり、後期課程開始時点で大規模に生徒の編入を募集することは通常ない。

6年間一貫教育が可能であるため、前期課程・後期課程間で学習指導要領に指定されている内容の一部入れ替えや先取り等が教育課程の特例として認められており、これに基づき教育内容の整理・精選が可能となる。

設置例

東京大学教育学部附属中等教育学校(国立、2000年-)

宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校(公立、1994年-)

桐蔭学園中等教育学校(私立、2001年-)

併設型中高一貫教育校

同一の設置者が中学校と高等学校を併設し、接続して中高一貫教育を行うもの。中学校の卒業者は無試験で接続の高等学校に進学することができる(いわゆる「内部進学」)[注釈 4]。これに加えて、外部からの高等学校入学希望者に対して入学試験を行うことも可能である。

基本的に、併設されている中学校の生徒はそのまま接続高校に進学するが、他校を受験する道は閉ざされていない[注釈 5]

中等教育学校と同様に、教育課程の特例が認められている。

統計では、国立・私立の従来からの中高一貫校はこの分類に当てはめられていない。

設置例

名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校(国立、1947年-)

岡山市立岡山後楽館中学校・高等学校(公立、1999年-)

長野市立長野中学校・高等学校(公立、2017年-)

横浜共立学園中学校・高等学校(私立、1871年-)

完全型中高一貫教育校

中学募集のみで高校募集を行わず、6年間完全中高一貫教育を行う学校。

基本的には高校募集を行わないのみで、実質的には中学校と高等学校は併設扱いである。また設置校数は、併設型に比べて少ない。

設置例

桜蔭中学校・高等学校

麻布中学校・高等学校

連携型中高一貫教育校

そもそも学校として一体となっている中等教育学校、設置者が同一である併設型中高一貫教育校とは異なり、異なる設置者間での設置が可能である。一つの高等学校に複数の中学校、あるいは複数の高等学校に一つの中学校が対応していることもある。

連携中学校から連携高等学校への選抜は、調査書および入学試験によらない簡便な方法で実施することが可能である。また、連携していない中学校からも一般の入試で受験することができる。連携中学校から他の高等学校や高等専門学校などへの進学も可能である。

中学校の教師が高等学校で授業を受け持ったり、高等学校の教師が中学校の授業に参加し、中学校の教育内容の理解を深めたりする。また、中学校と高等学校が合同で部活動を行ったり、芸術鑑賞会を合同で鑑賞したりして生徒同士が交流を深めている。

ただし、他の高等学校などに進学する者や連携中学校以外から入学してくる生徒がいるため、中等教育学校・併設型中高一貫教育校に比べ大幅なカリキュラムの変更ができないという欠点がある。

主に、地域と結びつきの強い高等学校とその地域の中学校が連携して取り組む。

設置例

横浜国立大学教育学部附属横浜中学校神奈川県立光陵高等学校

松阪市立飯南中学校・松阪市立飯高西中学校・松阪市立飯高東中学校→三重県立飯南高等学校

(学校法人緑丘学園)水戸英宏中学校→(学校法人田中学園水戸啓明高等学校水戸葵陵高等学校

中高一貫教育制度に基づかない中高一貫校

1998年以降に制度として導入された中等教育学校および併設型・連携型中高一貫教育校は、届出等の手続が必要になる代わりに教育課程の特例が認められている。一方、教育課程の特例は認められないものの、私立や国立の中学校・高等学校を中心に、それ以前から実質的な学校運営の一体化および中高一貫教育を独自に行っている学校は多い[5][6]。実際には先取り学習などのカリキュラムが実施されていることがほとんどである。

設置例

開成中学校・高等学校

灘中学校・高等学校

高等学校入学者の扱いにおける分類

中高一貫校は、高等学校時点からの入学者をどのように扱うかによって分類することもできる。この項目では、『平成12年度版 全国 注目の中高一貫校』(学習研究社、1999年8月発行)の「第1部 「中高一貫校」これだけは知っておきたい!」のうち「中高一貫校タイプ別分類(システム編)」(pp.30-33)で記載されている内容に基づいて記載する。
完全中高一貫校詳細は「中高一貫教育#高校募集」を参照

完全中高一貫型の学校では、高等学校での生徒募集を行わない。中等教育学校は原則としてこの形式を採用し、中学校と高等学校を併設する種の中高一貫校(制度上の併設型中高一貫教育校であるかは問わない)にもこの種の学校がみられる。ただし、高等学校での生徒募集数を欠員補充程度にしたり、若干名の帰国子女などの通学圏外からの転居者を受け入れる準完全一貫制の中高一貫校(準完全中高一貫校)もある。

近年、高等学校からの募集を廃止し、完全中高一貫校となる学校が増加している。

完全中高一貫校のメリットは、前掲の「1 完全一貫型」(p.30) に次のように記載されている。中高完全一貫校のメリットは学習指導だけでなく、情操教育やしつけ教育なども、6年間の長いスパンのもとに、効率的に行えることにある。特に学習指導の面では、中高6年間にわたる学校独自のカリキュラムを編成して、無駄のない学習指導を行っている。
併設型中高一貫校(別クラス型)

別クラス型の中高一貫制の学校では、高等学校から入学した生徒と中学校から入学した内部進学の生徒とは、3年間別クラスになる。

前掲の「2 別クラス型」(p.31) には、次のように記載されている。別クラス型一貫校とは、中学校を卒業した内部進学生(以下内進生)が高校に進学する際、高校から入学してくる外部進学生(以下外進生)とクラス編成を別にするもので、内進生は高校卒業まで外進生とは別のクラスで授業を受ける。つまり、中学から入学した生徒は、高校では持ち上がりクラスになり、6か年一貫のカリキュラムに従って学習する。内進生と外進生の学習進度の違いを考慮して生まれてきた合理的なシステムであるともいえる。
併設型中高一貫校(混合型)

混合型の中高一貫制の学校では、中学校から入学した内部進学の生徒と高等学校から入学した外部進学の生徒を混合する時期が、高等学校第1学年から、高等学校第2学年から、高等学校第3学年からの3つのパターンに分類される。

前掲の「3 混合型」(p.32) の「混合する時期に3パターン」には、次のように記載されている。中高一貫進学校のうち、60%以上の学校が、内進生と外進生を一緒にクラス編成をする混合型を採用している。混合する学年は、高1から、高2から、高3からの3タイプがある。

混合型で気になるのは、内進生と外進生の学習進度の違いをどうするかという問題であるが、高2からの混合型が最も多いのもその辺の事情をあらわしている。

高1から混合する場合でも、高1の数学は内進生と外進生は別クラス、高1の英語・数学・物理と国語の一部は別授業といったように進度差の大きい教科においては別授業を行う学校が少なくない。また、外進生に対して放課後補習や夏休みの補習などによって内進生の進度に追いつくようにしている学校もある。

高等学校で第3学年から中学校から入学した内部進学生と高等学校から入学した外部進学生を混合する場合、高校入学後最初の2年間は内進生と外進生は別クラスになるほか、高等学校第3学年の生徒は学年の途中で満18歳の誕生日を迎え国連子どもの権利条約第1条本文による子どもではなくなることから、高校3年からの外部混合については準別クラス型の併設型中高一貫校に分類されることもある。

例えば,中高一貫校に相当するドイツギムナジウム (Gymnasium) の上級段階(第11学年?第13学年)については、第11学年(日本の高等学校第2学年・中等教育学校第5学年)では学級単位で授業が行われるが、第12学年(日本の高等学校第3学年・中等教育学校第6学年)・第13学年(日本の大学教養部)では共通の授業集団としての学級が廃止され、生徒が選択した教科毎に授業集団が形成される[7]以外に、高等学校第3学年は旧制高等学校高等科若しくは大学予科の第1学年又は旧制専門学校高等師範学校若しくは女子高等師範学校の第1学年に相当する。


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