日本の中高一貫校
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一方、教育課程の特例は認められないものの、私立や国立の中学校・高等学校を中心に、それ以前から実質的な学校運営の一体化および中高一貫教育を独自に行っている学校は多い[5][6]。実際には先取り学習などのカリキュラムが実施されていることがほとんどである。

設置例

開成中学校・高等学校

灘中学校・高等学校

高等学校入学者の扱いにおける分類

中高一貫校は、高等学校時点からの入学者をどのように扱うかによって分類することもできる。この項目では、『平成12年度版 全国 注目の中高一貫校』(学習研究社、1999年8月発行)の「第1部 「中高一貫校」これだけは知っておきたい!」のうち「中高一貫校タイプ別分類(システム編)」(pp.30-33)で記載されている内容に基づいて記載する。
完全中高一貫校詳細は「中高一貫教育#高校募集」を参照

完全中高一貫型の学校では、高等学校での生徒募集を行わない。中等教育学校は原則としてこの形式を採用し、中学校と高等学校を併設する種の中高一貫校(制度上の併設型中高一貫教育校であるかは問わない)にもこの種の学校がみられる。ただし、高等学校での生徒募集数を欠員補充程度にしたり、若干名の帰国子女などの通学圏外からの転居者を受け入れる準完全一貫制の中高一貫校(準完全中高一貫校)もある。

近年、高等学校からの募集を廃止し、完全中高一貫校となる学校が増加している。

完全中高一貫校のメリットは、前掲の「1 完全一貫型」(p.30) に次のように記載されている。中高完全一貫校のメリットは学習指導だけでなく、情操教育やしつけ教育なども、6年間の長いスパンのもとに、効率的に行えることにある。特に学習指導の面では、中高6年間にわたる学校独自のカリキュラムを編成して、無駄のない学習指導を行っている。
併設型中高一貫校(別クラス型)

別クラス型の中高一貫制の学校では、高等学校から入学した生徒と中学校から入学した内部進学の生徒とは、3年間別クラスになる。

前掲の「2 別クラス型」(p.31) には、次のように記載されている。別クラス型一貫校とは、中学校を卒業した内部進学生(以下内進生)が高校に進学する際、高校から入学してくる外部進学生(以下外進生)とクラス編成を別にするもので、内進生は高校卒業まで外進生とは別のクラスで授業を受ける。つまり、中学から入学した生徒は、高校では持ち上がりクラスになり、6か年一貫のカリキュラムに従って学習する。内進生と外進生の学習進度の違いを考慮して生まれてきた合理的なシステムであるともいえる。
併設型中高一貫校(混合型)

混合型の中高一貫制の学校では、中学校から入学した内部進学の生徒と高等学校から入学した外部進学の生徒を混合する時期が、高等学校第1学年から、高等学校第2学年から、高等学校第3学年からの3つのパターンに分類される。

前掲の「3 混合型」(p.32) の「混合する時期に3パターン」には、次のように記載されている。中高一貫進学校のうち、60%以上の学校が、内進生と外進生を一緒にクラス編成をする混合型を採用している。混合する学年は、高1から、高2から、高3からの3タイプがある。

混合型で気になるのは、内進生と外進生の学習進度の違いをどうするかという問題であるが、高2からの混合型が最も多いのもその辺の事情をあらわしている。

高1から混合する場合でも、高1の数学は内進生と外進生は別クラス、高1の英語・数学・物理と国語の一部は別授業といったように進度差の大きい教科においては別授業を行う学校が少なくない。また、外進生に対して放課後補習や夏休みの補習などによって内進生の進度に追いつくようにしている学校もある。

高等学校で第3学年から中学校から入学した内部進学生と高等学校から入学した外部進学生を混合する場合、高校入学後最初の2年間は内進生と外進生は別クラスになるほか、高等学校第3学年の生徒は学年の途中で満18歳の誕生日を迎え国連子どもの権利条約第1条本文による子どもではなくなることから、高校3年からの外部混合については準別クラス型の併設型中高一貫校に分類されることもある。

例えば,中高一貫校に相当するドイツギムナジウム (Gymnasium) の上級段階(第11学年?第13学年)については、第11学年(日本の高等学校第2学年・中等教育学校第5学年)では学級単位で授業が行われるが、第12学年(日本の高等学校第3学年・中等教育学校第6学年)・第13学年(日本の大学教養部)では共通の授業集団としての学級が廃止され、生徒が選択した教科毎に授業集団が形成される[7]以外に、高等学校第3学年は旧制高等学校高等科若しくは大学予科の第1学年又は旧制専門学校高等師範学校若しくは女子高等師範学校の第1学年に相当する。[8]
教育区分

中高一貫校の6年間を3つ以上の教育区分を設定している。一般的には、中学校の第1学年および第2学年を前期、中学校第3学年および高等学校第1学年を中期、高等学校の第2学年及び第3学年を後期に区分している2-2-2制(6年間を2年ごとに基礎・充実・発展の3つに区分)を採用している[9]。この教育区分を寸胴型とも呼ばれる。これ以外に中学校の第1学年および第2学年を前期、中学校第3学年ならびに高等学校の第1学年および第2学年を中期、高等学校第3学年を後期に区分する2-3-1制を採用し、中学校段階の学習内容を中学校第2学年で修了し、高等学校段階の学習内容を中学校第3学年から始めて高等学校第2学年までに終えて、高等学校第3学年では大学受験にシフト化する中高一貫校もあるほか[10]名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校では、中学校第1学年を入門基礎期、中学校の第2学年および第3学年を個性探求期、高等学校の第1学年および第2学年を専門基礎期、高等学校第3学年を個性伸張期に区分する1-2-2-1制を採用している[11]

中高一貫の発達区分では、中学校第1学年の前期(特に第1学期)は様子見期、中学校第1学年の後期(特に第3学期)および中学校第2学年は混乱期(自分くずし・選別)、中学校第3学年は模索期1(居場所作り)、高等学校第1学年は模索期2(グループ化)、高等学校第2学年は模索期3(グループ強化・居場所構え)、年度中に満18歳の誕生日を迎える高等学校第3学年は大人化(気の合う仲間と他者との交流)と位置付けられる[12]。中高一貫校では、教育課程以外に、学校行事・進路指導でもこの発達区分に合わせて設計される。

日本の中高一貫校の最終学年(高等学校第3学年・中等教育学校第6学年)では、大学受験対策演習の授業が専ら提供され、外国の中等学校の最終学年のように、大学教養部旧制高等学校高等科)レベルの高度な一般教養教育を行っている中高一貫校は少ない[注釈 6]
問題点「中高一貫教育#中高一貫教育のメリット・デメリット」および「格差社会#教育による階層化」も参照

近年首都圏を中心に私立の中高一貫校への進学熱が過熱しており、ある程度の家計の豊かさを象徴するものとして入学試験問題の難易度は上昇[13]している。中高一貫校には以下の問題点が指摘されている。
「選ばれた生徒だけの特別の学校」とする問題

いくら一貫校を受験エリート校にしないため、学力試験による選抜を認めないといっても、広域募集・広域選抜を行う限り、公立一貫校が「選ばれた生徒だけの特別の学校」になるのは構造的に必然である[14]。普通の小学生が遠くの学校を自主的に選ぶということは一般的にはありえず、親の関心・選択が優先することになり、一貫校は教育熱心な恵まれた家庭の子供ばかりになる可能性が高い[15]。また一貫校は特別の期待のもとに設立されるので、予算面や施設面、運営面や教員配置の側面で一般の中学や高校よりも優遇される[14]。一方で、国立・私立が学力試験を行い、公立だけが学力試験禁止であるのはおかしいという反論もある。しかし実質、公立においても適性検査として国語・算数・理科・社会の学力検査を実質行っているという指摘もある。
中等教育の複線化

小学生は、中学入学段階で広域募集・広域選抜を行う公立中高一貫校か、区域内の生徒を無選抜で受け入れる3年制中学校のどちらかを選ばなければならないことになる[16]。かくして、一貫校に通う生徒と非一貫校に通う生徒、中学受験を経て入った一貫校の生徒と無試験で入った地元の中学校の生徒というように、中学生に実質的にも象徴的にも地位の分化が起きることになる[17]。一貫校のほうが高い評価を得るであろうから、この地位の分化は水平的ではなく、垂直的・序列的なものになるのは必至である[17]。一貫校がある程度多くなると確実に中等教育に新たな歪みを持ち込み、3年制公立中学の教育を今よりはるかに難しいものにする[17]
学校選択の不公平

公立中学校の選択の自由は原則的に認められていないが、公立中高一貫校には選択の自由がある[18]。そのため一貫校の入学者と3年制の公立中学校の入学者の間で不公平が生じることになる[18]
中学受験の弊害

公立中高一貫校のメリットとして、高校入試がないのでゆとりのある教育が実現できることが挙げられているが、実際には高校入試が小学校の段階に移るだけである[19]。選択肢としての各学校の違いは単なる好み(個性)の違いとして表れるのではなく、優劣・序列の差となって表れるから、受験競争の弊害が確実に小学校の教育に影を落とすことになる[20]


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