日本における衛星放送
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なお1990年代前半からスターTV(現:STAR)など海外の衛星を利用して日本向けに番組配信を行う動きがあったが、これも郵政省が無線通信の傍受・窃用にあたるとしてケーブルテレビ等への配信が認められなかった(これについては1994年の放送法改正により外国の通信衛星を利用した不特定多数向けの音声・映像配信サービスを「「放送」に該当すると確認されたサービス」と定義し、確認されたチャンネルについては受信・再送信が解禁された)。

BSは、より広範囲への放送を行う目的で設計されているため、衛星に搭載されているトランスポンダ電波空中線電力が、当初から高く(100W程度)設定されていた。一方CSは、前述の様に特定の受信者向けの放送を想定しており[注釈 2]、トランスポンダの出力はBSより低く(当初は30W程度)設定されていた。またBSは円偏波なのに対して、CSは受信アンテナが簡素になる直線偏波(N-SAT-110およびその予備衛星はBSと同じく円偏波)のため受信側の設備もBSとCSでは異なっていた[注釈 3]

その後の放送法の改定などの影響もあり、現在の日本においてはBS放送、CS放送ともに実質的な違いは少ない。提供されているサービス面ではCS放送のほうがチャンネル数が多く、各分野に特化した番組(いわゆる専門チャンネル)が多数放送されている。

ケーブルテレビ局がおこなう放送サービスにおいては、BS放送が提供している放送番組とCS放送が提供している放送番組では次のような違いがある。BSもCSも衛星から送信される放送とケーブルを介しての放送とは同時送信(サーバ型放送による再送信以外は同時送信となる)であるが、BS放送では「再送信」という解釈になり、放送の内容を改変することは一切禁止されている。一方、CS放送の場合は放送法の中での解釈としてはCATV業者による「自主放送」という扱いとなり、CATV業者の都合や事情などにより一部の番組やCMの差替え・送信中止、複数チャンネルの組み合わせによるパートタイム編成(複数チャンネル間で放送番組を選択して組みあわせて1つのチャンネルとして提供する)などが可能になっている。番組中にCATV業者が地震速報テロップなどを挿入することも可能である。
衛星の種類

衛星の名称とトランスポンダの利用割り当て状況(2010年9月現在)[6]は以下の通り(それぞれの利用内容についての詳細は後述の各当該節を参照のこと)。
放送衛星(BS)「放送衛星システム」を参照

BSAT-3b(東経110度):BSデジタル放送(BS-1, 3, 13, 15ch ※1)

BSAT-3c(東経110度)※2:BSデジタル放送(BS-5, 7, 9, 11, 17, 19, 21, 23ch ※1)BSAT-3c/JCSAT-110RのBS機能。

BSAT-3a(東経110度):予備衛星。

※1:表記のBSch番号(物理チャンネル)については後述の#物理チャンネル(BSデジタル放送)を参照。
通信衛星(CS)「スカパーJSAT」を参照

N-SAT-110(東経110度)※3:スカパー!(CS1/CS2ネットワーク)、i-HITSCATV向け番組配給通信)、放送以外のサービス(通信サービスなど)

JCSAT-110R(東経110度)※2:BSAT-3c/JCSAT-110RのCS機能。N-SAT-110の予備衛星。

JCSAT-2A(東経154度):SPACE DiVA

JCSAT-3A(東経128度):スカパー!プレミアムサービス(パーフェクTV!サービス)、放送以外のサービス(通信サービスなど)

JCSAT-4B(東経124度):スカパー!プレミアムサービス(スカイサービス)、放送以外のサービス(通信サービスなど)

JCSAT-RA:予備衛星。原則として東経126度で待機し、経度±2度にあるスカパー!使用衛星付近の軌道へ遷移しやすくしている。

SUPERBIRD-C2(東経144度):SOUND PLANET、その他の放送サービス、i-HITS、放送以外のサービス(通信サービスなど)

※2:正式名称はBSAT-3c/JCSAT-110R。普段はBSAT-3cとしてBS機能のみを使用し、JCSAT-110RとしてのCS機能は使用せず。
※3:SUPERBIRD-D/JCSAT-110の別称を持つ。
アナログによる衛星放送
BS放送

使用衛星:東経110度(BSAT-3a)(BSAT-1a)(BSAT-1b)(BS-3N)

1984年5月12日、NHKによる世界初の一般視聴者向けの営業放送へ向けた試験放送を開始。当初は「ゆり2号a」を使い、BS-11(衛星第1放送)、BS-15(衛星第2放送)での試験放送を予定したが、衛星のトラブル・故障が発生したため急遽BS-15を「衛星第1放送」として1chのみでの放送開始。その後補完衛星として打ち上げられた「ゆり2号b」の打ち上げ成功により1986年12月25日よりBS-11で「衛星第2放送」を開始。本来の2チャンネル体制での試験放送が行われた。1987年7月4日までは原則第1放送は総合テレビ(2チャンネル分割前は総合・教育混合)、第2放送は教育テレビの同時・または時差再配信で山間部や離島等の難視聴地域対策が主な目的であったが、1987年7月5日以後、第1放送は完全自主編成、第2放送は地上波の難視聴対策放送を継続した。BSアナログ放送終了後に表示されたテレビジョン画面

1989年6月1日にNHKがKuバンド(14/12GHz帯)放送衛星「ゆり2号a」および「ゆり2号b」を用いて本放送を開始した。当初、第2放送は地上波の再送信のみで衛星受信料は徴収していなかったが、本放送への移行に当たり、第1放送はニュース・スポーツを中心に終日独自編成、第2放送は映画・演劇・ドラマなどのエンターテインメントを軸とした独自の総合編成と、地上波の難視聴対策の放送を並列して行うことになった。BS-3N以前、地球や月の食のために放送休止があった(詳しくは後述を参照)。以後、日本の直接衛星放送はデジタル方式を含めもっぱらKuバンドを用いて行われている。ごく普通のNTSC映像と副搬送波をDQPSK変調したデジタル音声データをFM変調して送出されていた。更に高精細度テレビジョン放送であるハイビジョンの実験放送・試験放送をMUSE圧縮を利用して開始したが、これは2007年9月30日で終了している。

1991年4月1日には日本衛星放送(現:WOWOW)が民間で初の衛星放送を開始、またWOWOWと同じチャンネルのPCM音声のみを使用してラジオ放送を行う衛星デジタル音楽放送St.GIGA2003年ワイヤービーが合併、同年にWINJに営業譲渡、2007年に委託放送事業者認定取消処分)も同時開局している。NHK、WOWOWともに有料であるが、NHKがノンスクランブル方式だった(受信契約義務こそ発生するが、契約しなくても視聴できた)のに対して、WOWOWは一部の番組や日時を除いてスクランブル放送方式としていた。

BSアナログ放送は地上波アナログ放送とともに2011年7月24日に終了した[7][8](ただし、岩手県宮城県福島県は、同年に発生した東日本大震災に被災したことの関係により、2012年3月31日に延期して終了した)。なお、アナログ終了後のBS-5chはWOWOWが、デジタルハイビジョン放送拡張のために使用する。
日食による放送休止

太陽の光で発電される放送衛星が、春分点秋分点を挟んだ各1ヵ月半には、地球またはの陰に入る(衛星から見て地球や月による日食)現象のため、深夜放送を休止していた時期が1997年春まであった(ただし、放送に支障がない限り、休止中の時間帯でも災害報道は放送を続けていた)。

月による日食の放送休止は、日中の時間帯にあった(10分程度。深夜の休止時は0:30から4時間)が、1997年に運用開始したBSAT-1a以降の放送衛星は大容量のバッテリーを搭載し、太陽光発電される電力二次電池へ蓄えることができるようになったため、地球や月による日食でも放送できるようになり[9]、放送休止は年数回のメンテナンス(機器保守)時期程度となった。

2000年のBSデジタル放送開始以降、NHKではBSアナログ放送での放送休止は2006年の放送設備更新時、2007年と2011年に数回、そして2010年11月1日未明にあっただけである。2008年、2009年はアナログ・デジタルとも放送休止は1度もなかった(送出を2系統化しているためメンテナンスがあっても完全無休で放送。なお、WOWOWは不定期でメンテナンスのための放送休止あり)。

これとは別に、春分と秋分を挟んだ各時期の昼間、もしくは午前の時間帯に最長で15分程度、映像・音声に乱れが生じる太陽雑音という現象も発生する(主に通信衛星で起きやすいが、衛星の種類により異なる)。
チャンネル

チャンネルは1・3・5・7・9・11・13・15と計8チャンネルあったが、実際放送で使用されたのは以下の通りだった。

BS-5ch
WOWOW[注釈 4]

BS-5ch独立音声(2005年3月31日終了。衛星デジタル音楽放送(St.GIGA)→ワイヤービー(Club COSMO)→World Independent Networks Japan(WINJ))


BS-9ch MUSEアナログハイビジョン(2007年9月30日終了)

ハイビジョン実験放送→ハイビジョン試験放送→ハイビジョン実用化試験放送→デジタル開始と同時に「NHKハイビジョン」になる。


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