新聞社
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日本でも、夕刊フジ日刊ゲンダイのような夕刊スポーツ紙はタブロイド判を採用しているところもある[19]。このほか、この2つの中間に位置するベルリナー判(315mm×470mm)を採用する新聞社も多い。
その他

一般的な新聞は新聞社によって商業的に有料で販売されるが、広告収入を元にした無料の新聞フリーペーパーも数多く発行されている[20]学生新聞のように、小さなコミュニティ内で発行される無料紙もある。また『ビッグイシュー』のような、貧困者に支援や雇用を与えるためのストリート新聞も1990年代以降多数発行されるようになった。

また、毎日新聞社の発行する『点字毎日』は、点字で発行される週刊新聞である[21]
歴史

1480年ごろ、ヨーロッパ中央部の神聖ローマ帝国などのドイツ語圏地域で発行が始められたとする不定期刊の「Neue Zeitung」(新しい知らせ)が徐々に定期刊行となり[22]1605年、世界初の週刊新聞「Relation」が、帝国内のアルザス地方にあるシュトラースブルク(現在のフランスストラスブール)でヨハン・カロルス(英語版)によって創刊された[23]。なお、シュトラースブルクで1609年に刊行された「Relation」紙が後世に保存されている[22]。1650年、やはり帝国内のライプツィヒで世界初の日刊紙『ライプツィガー・ツァイトゥイング(ドイツ語版)』[注 1](週6日)が創刊された[24]。17世紀半ばには、ニュース本が定期的に出版されるようになった。特にイギリスでは清教徒革命名誉革命を通じてニュース出版が発展し、日刊新聞や地方週刊新聞も出版されるようになった。18世紀には、いろいろな新聞を読み放題のコーヒー・ハウスが登場した。裕福な商工業者であるブルジョワジーが新聞をもとに政治議論を行い、貴族のサロンと同じように論壇を形成した。

こうして新聞が一般化した18世紀に入ると、アメリカ独立戦争フランス革命などの市民革命が起きるようになるが、この過程で新聞は世論の形成に大きな役割を果たし、樹立された新政府においては自由権の一部として法的に言論の自由が認められるようになった[25]

欧米では、19世紀の産業革命による都市人口の増加や社会変化に伴い、新聞の大衆化が進んだ[26]。アメリカでは1830年代に『ザ・サン』をはじめとするペニー・プレスと呼ばれる安価な新聞が普及した[27]。1868年にはイギリスの『タイムズ』が巻取紙を用いる輪転機を採用[28]。日曜新聞のような大衆新聞が成長し、印刷機の発達やロール紙の採用、広告の掲載などにより労働者階級に低価格で販売できるようになった[29]1884年にはオットマー・マーゲンターラーライノタイプと呼ばれる鋳植機を発明し、これによって印刷工が1行ごとにまるごと活字を鋳造できるようになったことで新聞の印刷スピードおよびコストが改善され、より安価に新聞が発行できるようになった[30]。1880年にはアメリカで世界初となる写真版を含む新聞が発行された[28]。19世紀末になると、アメリカではジョーゼフ・ピューリツァー率いる『ニューヨーク・ワールド』紙のように扇情主義を重視する娯楽としての新聞[31]と、『ニューヨーク・タイムズ』紙のように(客観性は別として[32])情報を伝えることに特化した新聞の二つの流れが現れた[33]

つまり現代の新聞の出現は産業革命以降のヨーロッパからであり、産業を支えるうえで大きな存在となった。これはのちにマスマーケティングの手法の一環としても用いられるようになり、企業の広告活動にも一役買うようになった。

日本には江戸時代には瓦版が存在し、大事件などの際に木版で摺られ発行されていた。現存する最古の瓦版は大坂の陣1614年 - 1615年)を記事にしたものである。幕末になると新聞と名付けられたものがいくつか発行されるようになり、1862年に最初の新聞『官板バタビヤ新聞』、1870年には日本初の日刊紙である『横浜毎日新聞』が創刊された[34]。「日本の新聞」も参照

以後、新聞は世界各地に普及し重要なマスメディアのひとつとなってきたが、1990年代後半のインターネットの登場にともなって先進諸国では部数減が進行し、大きな質的転換を迫られることとなった。
語源

「新聞」という言葉は古来の日本語にはない。この語の初出は、北宋時代に編纂された唐王朝の歴史書『新唐書』だとされている。『新唐書』の「芸文志」には唐代に書かれた書物の一覧があるが、その中に「尉遅枢に、『南楚新聞』三卷あり」とある。ここでいう「新聞」とは今の日本語でいう「風聞」つまり「news」という意味であった。この定義での「新聞」は、代にも書かれていた。例えば、乾隆帝が編纂させた『四庫全書総目提要』では、清の魏裔介の「資麈新聞」という書物を紹介している。これは現在の週刊誌のように雑説をいろいろな本から寄せ集めたもので、怪奇現象や陰陽道の話、李自成の乱や琉球王国の話などが書かれているが、虚偽の内容、現代でいういわゆる飛ばし記事が多く、『四庫全書総目提要』の編者は「編集方針がメチャクチャで間違いが百出している」と批判している。

清朝末期に欧米人が中国で「newspaper」を発刊し、現地の中国人たちもこれを真似て新聞を発刊した際、古来の「新聞」という言葉を当てて「新聞紙」と呼んだ。中国語では、21世紀現在も「新聞」をnewsの意味で使い[35]、テレビのニュース番組などのタイトルにも使用される。なお、中国語におけるnewspaperは「報紙」である。一方、朝鮮語では「新聞」のハングル表記である「??」が「newspaper」を意味する。

日本語には明治時代に英語の「news」に相当する訳語として、この中国語が取り入れられ、「news」を「新聞」、「newspaper」を「新聞紙」と呼ぶようになった。夏目漱石の小説の中でもnewspaperは新聞紙であり、昭和初期に書かれたものの中にも、newspaperを新聞紙と呼んでいるものがある。新聞紙条例新聞紙法などの「新聞紙」は「newspaper」の意味である。

その後「新聞紙」を「新聞」と略すようになった。それに伴い「新聞紙」を「newspaper」の意味で使うことは減り、紙自体を指すようになった[35]。一方、「日刊紙」「全国紙」「各紙」など、「新聞」の意味で「紙」という漢字が使われることもある。

現代英語では「newspaper」を「paper」と略すことがある(「today's paper」=「今日の新聞」など)。

新聞社の社名や紙名には公民の権利を守るという意味合いから、古代ローマの公職である護民官に由来する「トリビューン」(『シカゴ・トリビューン』など)[36]帝国郵便神聖ローマ帝国)が自前の新聞を発行していたことに由来する「ポスト」(『ワシントン・ポスト』など)[37]、社会を映すという意味で「ミラー」(『デイリー・ミラー』など)といった言葉が選ばれている[38]
制作過程輪転印刷機による印刷の様子

新聞の制作過程は、おおむね下記のようになっている。
企画・構想

取材・撮影

記事執筆

原稿チェック

校閲 - レイアウト後の場合がある。

レイアウト - 見出し制作・価値判断も行われる。

編集・割付・組版

校正

フィルム・刷版制作

印刷

梱包・発送

新聞の製作は、まず記者が取材を行い記事を書くところから始まる。その日に起こった事件を速報しニュースとする場合は直接取材・撮影を行うが、特集記事や調査報道などの場合はまず企画を立て、それに基づいて調査や取材を行う。政府や企業からはプレスリリース記者会見が行われ新聞に情報が提供されるが、このほかに独自の取材も行われる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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