新幹線
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詳細な路線一覧は「路線」節を参照
呼称

「新幹線」という呼称は、かつての鉄道省が東京と下関を結ぶ高速鉄道計画に対して、遅くとも1939年(昭和14年)の時点で用いていた用語である[13](ただし、この計画については当時の世相を踏まえて「弾丸列車」と呼ばれることの方が多かった)。さらに以前の大正期には「新しい幹線交通」を指す用語として「新幹線」の用語が用いられていたという[13]

法律上、最初に「新幹線鉄道」の語が現れるのは、昭和39年6月22日法律第111号「東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法」(現「新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法」)である。東海道新幹線は在来線である東海道本線の線増として建設されたために「東海道新幹線鉄道」とされた。

『新幹線』という名称は、東海旅客鉄道・東日本旅客鉄道・西日本旅客鉄道の3社名義にて、複数の分野で商標登録されている。例えば「鉄道による輸送」では第3066558号である。

日本国内の駅内の案内板等の英語表記では、路線を指す場合は「しんかんせん」のローマ字表記である Shinkansen を使用し、列車名(便名)を表す場合は、各駅に停車する列車も含め、かつて「ひかり」の種別として用いられていた「超特急」の直訳である Superexpress を愛称名の後ろに付けて「NOZOMI Superexpress」などと表現している。これは特急(特別急行列車、Limited express)と急行列車(Express)を異なる種別として認識し、さらに新幹線を(通常の)特急とも区別しようとする日本独特の表現とも考えられる[14]

日本国外において新幹線について言及する際は「Shinkansen」と表記される一方で、戦前からの計画名称である「弾丸列車」の直訳である「Bullet train」の表現を用いることがある。例えば、1975年(昭和50年)に日本で公開され、翌年アメリカで公開された映画『新幹線大爆破』の英題の1つも "The Bullet Train" であり、2022年公開の新幹線を舞台にしたブラッド・ピット主演の映画タイトルも「ブレット・トレイン」(Bullet Train) である)。
主要技術

新幹線鉄道は、その大部分の区間において200 km/hを超える速度で運行するため、在来線鉄道とは異なったさまざまな技術が用いられている。速度のみならず、乗り心地や安全面でも世界的に見ても非常に高い水準が確保されている。
路線・軌道設備標準軌 (1,435 mm)。東海道新幹線で最小の曲率半径500m
(品川 - 新横浜間・武蔵小杉駅付近)新幹線の高架橋
上越新幹線回送線・新潟市踏切は設置せず、立体交差と防護柵で安全運行を図る
(東海道新幹線・名古屋市緑区)プラットホームの安全柵
(東海道新幹線・東京駅

路線は、在来線と別ルートで新規に建設した線路設備を用いる。設備の構造については省令の「新幹線鉄道構造規則」に規定されている。在来線を改良したミニ新幹線と区別するため、「フル規格」とも呼ばれる。

軌間標準軌 (1,435 mm) を用いている。ただし標準軌が「新幹線」の法的な条件というわけではなく[15]、軌間に狭軌 (1,067 mm) を用いつつ高速走行を可能とした「新幹線」もありえる[15]、こうした方式の新幹線を新幹線鉄道規格新線(スーパー特急)し、この方式で建設に着手された路線もある(ただしいずれも建設途中で標準軌規格に変更されており、スーパー特急方式で開業した新幹線路線は存在しない)。

カーブにおける曲率半径を大きくし、できる限り直線を確保する。本線区間における最小曲率半径は東海道新幹線が2,500 m[16][17]山陽新幹線以降に建設された各線は4,000 m[16][17]となっている。ただし、用地や地形の関係から急曲線とならざるを得ない区間では、その区間の列車速度により曲率半径400 mまで許容されている。さらに推定脱線係数比が一定以上か、脱線防止ガードを設置することで200 m以上の曲率半径をとることもできる。東海道新幹線の東京 - 新横浜間や東北新幹線の東京 - 大宮間のような都心部区間は、曲率半径が400 mから2,000 m程度の急曲線が含まれている。

勾配は高速走行の妨げになることから最急勾配を15 までとするが、延長2.5 km以内に限り18 ‰・2.0 km以内に限り20 ‰とする。用地や地形の関係から規定以上の勾配を必要とする区間では特別認可の形で設置されており、東北新幹線東京 - 大宮間では25 ‰、北陸新幹線では30 ‰、九州新幹線鹿児島ルートでは35 ‰の勾配が含まれている。


事故防止のため以下の設計を行う。

自動車との衝突事故を防ぐため、踏切を一切設けない。

線路内に一般の人が立ち入れないようにする。前項も含めた対策として全線立体交差とする。また、列車の運行妨害等に対しては法律面でも「新幹線特例法」によって在来線より厳しい罰則を定めている。

通過列車との接触など人身事故を防ぐため、プラットホームに可動ゲート付きの安全柵(以下、ホームドア)を設ける(例:新横浜駅新神戸駅など)か、通過線と待避線を分ける(例:静岡駅福島駅など)。ただし、通過列車の通過速度が低い駅(例: 上野駅)には安全柵のみ設けられているか、安全柵が設けられていない場合もある。また、東海道新幹線・山陽新幹線の東京駅名古屋駅京都駅新大阪駅岡山駅広島駅小倉駅博多駅など、全列車が停車する駅には当初柵などは設けられてはいなかったが、後に安全柵ならびに一部の駅でホームドアが設けられた。また、東海道新幹線では、静岡駅や浜松駅など、通過線と待避線が分かれていながら安全柵が設置されている駅もある。九州新幹線鹿児島ルートでは全列車が停車する熊本駅鹿児島中央駅や通過列車が使用しない副本線のホームも含め、開業当初から全ての駅の全てのホームにホームドアが設置されている。東北新幹線の新青森駅でも全てのホームにホームドアが設置されている。

東北新幹線の盛岡駅以南では、ミニ新幹線で使われている在来線規格の車両とフル規格対応のホームとの間に隙間が生じるため、駅停車時にホーム側へ張り出すステップを車両に設置したり、ホームにドア付近以外での転落を防止するための安全柵を設けたりする対策がなされている。


乗り心地や安全性の向上、騒音対策などから、レール分岐器(ポイント)にもさまざまな工夫が施されている。

レールは、継ぎ目の数を減らしたロングレールを使用。東北新幹線いわて沼宮内駅 - 八戸駅間には、国内最長の延長約60.4 kmにわたる「スーパーロングレール」が用いられている。

分岐器(ポイント)は、通過時の振動が少ない弾性分岐器と、レール交差部の欠線部を埋めるノーズ可動クロッシングを使用。また、高崎駅北方にある上越新幹線北陸新幹線との分岐には、分岐側を160 km/hで通過できる国内最高水準かつ最長の分岐器が設置されている。


新幹線の駅間距離は、中距離・長距離輸送を主とすることから、原則として在来線より長く取られている(30 - 40 km程度)。

高速運転で駅間距離が長く、より迅速で的確に情報伝達を行うため、列車無線を開業当初から採用している。

信号システム

地上装置と車上装置からなる
自動列車制御装置 (ATC) と列車集中制御装置 (CTC) を備えている[18]。ATCは、地上装置に沿線の20-30kmの間隔に信号機器室を設けて、そこから信号ケーブルを介して軌道回路に信号電流を流し、車上装置にそれを受電器で受信して運転室内に運行指示(許容速度)が表示され[注 3][18]、その速度を超えれば自動的にブレーキが作用するもので[18]。自動ブレーキが作動するのは営業最高速度やカーブなどの速度制限を超えようとした時、先行列車に接近した時、駅に停車するために減速する時などである。駅停車時は15 - 75 km/h以下の低速時になると手動でブレーキ弁を操作して列車を停止位置目標に停止させるが、目標の少し先で停止するようなパターンが作成されるか(TASCではない)、または目標の先方50 mで強制的に非常ブレーキが掛かる区間になっており、過走を防止している。これは地上の信号機を車上から目視確認して運転することは(気象状況によっては)困難となる[18]ほどの高速運転を行うためである。また故障による影響を最小限とするため、同じ機能を持つシステムを3系統備えており、そのうち1系統が故障しても3者の多数決の原理で残った2系統で正常に作動し運転を続行できるようになっている[19]

CTCは、列車の位置と列車番号の表示や各駅の分岐器を運転指令所で一括管理と制御を行うもので、これですべての列車の運行状況を一括管理している。現在では列車運行管理システム (PTC) も導入されており、通常の分岐器操作や信号制御、駅自動放送から車両の管理整備、輸送障害時の復旧ダイヤの作成に至るまで、あらゆる業務がコンピュータによって高度にシステム化されている。

電源方式

単相
交流25,000 V電力を供給する。饋電(きでん)方式については、東海道新幹線開業当初はBT方式であったが、現在では他の新幹線と共にAT方式に統一された。電源周波数は以下の通り。

東海道新幹線では60 Hzに統一して給電している。静岡県富士川を境に50 Hz(東側)と60 Hz(西側)の電源周波数区分が異なるが、50/60 Hz を共用とした場合 約 2.7t の車体重量増加が見込まれ将来的な経済性なども考慮し[20]、当初から山陽方面への延長を構想していたため全線で60 Hzに統一し、車両側の特高圧機器の簡素化を図っている。なお、電源周波数区分50 Hzの地域では周波数変換所が設けられ、新幹線電源用に60Hzに変換している。

北陸新幹線軽井沢駅 - 佐久平駅上越妙高駅 - 糸魚川駅と糸魚川駅 - 黒部宇奈月温泉駅の計3か所に50/60 Hzの切り替えセクションが存在[21]し、車両側も50/60 Hzの双方に対応している。

上記以外の各新幹線は沿線地域と同じ電源周波数で、山陽・九州は60 Hz、東北・上越・北海道は50 Hz。


いずれの電気方式においても、変電所間での位相(北陸新幹線においては周波数)の相違を解決する必要があるが、高速を維持するため連続力行運転を行うことから、変電所の饋電区間の境界は、在来線のようにデッドセクション(アーク発生防止のため惰行で通過する)ではなく、地上切替方式を採用している。切替区間はエアーセクションで区分され、その前後の変電所の双方から饋電でき、最初は進入側の変電所から饋電し、列車が切替区間に入ったことを検知すると進出側の変電所からの饋電に切り替える。この間はおよそ0.5秒程度であり、乗客が切替を感知することはほとんどない。

送電側の系統障害を避ける必要から[注 4]、スコット結線変圧器や変形ウッドブリッジ結線変圧器、ルーフ・デルタ結線変圧器を用いて三相交流から90度位相の異なる2組の単相交流が作られ[20]、それぞれ上り線と下り線に給電されている[22][23]。変電所の設置間隔は約 20 km 毎である[20]

車両技術詳細は「新幹線車両」を参照東海道山陽新幹線歴代車両。
左から700系300系0系

新幹線では、動力を編成各車両に分散させる「動力分散方式」が採用されている。動力分散方式を採用することにより、電車方式と同様の、加減速性能の向上・軽量化・軌道への負荷軽減といった利点が追求されている。 また高速走行を行うため、列車編成内における電動車(動力車)の比率(MT比)が極力大きくされている。ブレーキは主電動機の発電抵抗を利用する電気ブレーキと、空気圧動作の摩擦による基礎ブレーキを併用するが、高速域からの減速には主に電気ブレーキが使用される。こうすることによって制輪子の磨耗を抑え、交換周期を延ばすことができる。

また、車両には気密構造が採用されている。高速運転時にトンネルに進入するなどの気圧変動による居住性の低下を防ぐためである。また、0系や100系など国鉄時代の東海道・山陽新幹線車両では車体の素材に普通鋼が使われていたためやや重かったが、東北・上越新幹線用の200系からは耐雪装備による重量増加を抑えるためアルミニウムが用いられて軽量化が図られた。国鉄民営化後に開発された新幹線車両はアルミニウム車体が一般化、さらにアルミ材の加工手法の発達により、製作費のコストダウンとさらなる軽量化の両立が図られた。この結果、国鉄時代に開発された初期新幹線車両より著しく軽量化されている。

一方で、JR発足以降積極的に行われた高速化に伴い、走行中のパンタグラフ架線の接触や風切り音による騒音の発生や、接触部の著しい消耗などが問題とされた。このため、0系では2両おきに付いていたパンタグラフが300系では8両毎に1つに減ったほか、500系では翼型と呼ばれるT字型の特殊な集電装置が設置されるなど改良され、騒音を抑えながら集電効率を向上させた。また、パンタグラフに流線型の突起物を取り付けるなどの改良も加えられた。その他、高速でのトンネルの突入時のトンネル内部の急激な気圧変化による騒音(トンネル微気圧波)の発生を抑えるための、走行時の空気の流動性やトンネル進入時の面積変化率を考えた先端車両の開発などが行われているため、初期の0系に比べ先頭車先端部が長く伸ばされるとともに、通常の電車とは著しく異なった形態(鋭い流線型やカモノハシのような形)を呈する傾向にある。
列車防護装置

高速走行を行うため、在来線と同じ信号炎管や軌道短絡器による列車防護(他の列車を停止させること)では他の列車が停止しきれない可能性が高まる。


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