基準 (6) のみが適用されて登録されるのは、例外的なケースである。原爆ドーム(日本)、ゴレ島(セネガル)、アウシュヴィッツ強制収容所(ポーランド)など、いわゆる負の世界遺産だと考えられる遺産は、基準(6)のみの適用が見られる[7]。このほか、リラ修道院(ブルガリア)、独立記念館(アメリカ合衆国)、ランス・オ・メドー国定史跡(カナダ)、ヘッド-スマッシュト-イン・バッファロー・ジャンプ(カナダ)なども、(6) のみが適用されている。
原爆ドーム
リラ修道院
独立記念館
ヘッド-スマッシュト-イン・バッファロー・ジャンプ
登録に当たっては複数の基準が適用されることが多く、なかには4項目、5項目が適用されるケースもあるが、6項目全てが適用された物件は莫高窟(中国)、泰山(中国)[注釈 3]、ヴェネツィアとその潟(イタリア)の3件のみである(2015年の第39回世界遺産委員会終了時点)。 「世界遺産リストの代表性、均衡性、信用性のためのグローバル・ストラテジー」(1994年)では、文化遺産の偏りを是正するため、文化的景観、産業遺産、20世紀以降の現代建築などを登録していくことの必要性が確認された。 文化的景観は1992年の「世界遺産条約履行のための作業指針」で盛り込まれた概念である。人の文化的な営みと自然が有機的に結びついた景観であり、ICOMOSの勧告書でも公式に分類されている。上に挙げた例だと基準(4)のみで登録されたビニャーレス渓谷、基準(5)のみで登録されたクルシュー砂州やマドリウ=ペラフィタ=クラロ渓谷などが該当する。この基準を含む物件としては、ほかにもアマルフィ海岸(イタリア)、スタリー・グラード(クロアチア)、スクルの文化的景観(ナイジェリア)、バタマリバ人の土地、クタマク(トーゴ)、バムとその文化的景観(イラン)、テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観(メキシコ)など多数が該当する[8]。 産業遺産はその名のとおり産業の営みを伝える何らかの遺跡である。その定義は一様ではないが、2011年登録分までについてはICOMOSが公式に分類したリストを公表している。文化的景観などとも一部重複するが、石見銀山遺跡とその文化的景観(日本)、シューシュタルの歴史的水利施設(イラン)、インドの山岳鉄道群(インド)、ダーウェント峡谷の工場群(イギリス)、ビスカヤ橋(スペイン)、ラ・ショー=ド=フォンとル・ロックル(スイス)、リドー運河(カナダ)、ハンバーストーンとサンタ・ラウラの硝石工場群(チリ)などがそれに含まれる[9]。 優れた建築家による建造物や都市計画も世界遺産の登録対象となっている。完成から30年前後で登録されたブラジリア(ブラジル)やシドニー・オペラハウス(オーストラリア)などは、その顕著な例である。ほかにも、リートフェルト設計のシュレーダー邸(オランダ)、ストックレー邸(ベルギー)、ブルノのトゥーゲントハット邸(チェコ)などの個人の邸宅、ベルリンのモダニズム集合住宅群(ドイツ)のような集合住宅、カラカスの大学都市(ベネズエラ)、メキシコ国立自治大学の大学都市の中央キャンパス(メキシコ)のような教育関連施設などが、登録されている[10]。日本では、2016年にル・コルビュジエの設計した国立西洋美術館が登録されている[11][12]。
グローバル・ストラテジー
文化的景観詳細は「文化的景観」を参照
スタリー・グラード平原
バムとその文化的景観
クタマク
テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観
産業遺産詳細は「産業遺産」を参照
石見銀山遺跡とその文化的景観
シューシュタルの歴史的水利施設
ラ・ショー=ド=フォンとル・ロックル
リドー運河
現代建築