文化遺産として登録されるためには、登録基準に照らして「顕著な普遍的価値」を有することを世界遺産委員会で認められることが必要となる。委員会での審議に先立ち、ICOMOSが調査を行い、登録にふさわしいかどうかの勧告を行う[5]。
文化遺産としての登録基準は以下のとおりである。
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
これらの基準はひとつだけの基準が適用されることよりも、複数の基準が適用されることが多い。以下、基準ごとにその基準で登録された物件の例示を行う。 基準(1)のみが適用されて登録された物件には、タージ・マハル(インド)、シドニー・オペラハウス(オーストラリア)、プレアヴィヒア寺院(カンボジア)がある。この基準は、「アントニ・ガウディの作品群」や「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群 (ブリュッセル)」のような創造的才能を発揮した個人に帰する物件にしばしば適用されるのはもちろんだが、ティヤの石碑群(エチオピア)のように制作者も制作年代も定かではない物件であっても、適用されることがある。 基準(2)のみが適用された物件には、コローメンスコエの主昇天教会(ロシア)、シュパイアー大聖堂(ドイツ)、ホレズ修道院(ルーマニア)、ゲガルド修道院とアザト川上流域(アルメニア)、スウェルの鉱山都市(チリ)、王立展示館とカールトン庭園(オーストラリア)などがある。交易上の要衝など、文化交流に寄与した文化遺産にも適用される基準である[6]。そうした例としては、シルクロード:長安-天山回廊の交易路網(中国、カザフスタン、キルギス)などがある。 基準(3)のみが適用された物件には、ブリッゲン(ノルウェー)、アルタの岩絵(ノルウェー)、ミュスタイアのザンクト・ヨハン修道院(スイス)、ベルン旧市街(スイス)、ブトリント(アルメニア)、ヘラクレスの塔(スペイン)、ベニ・ハンマードの城塞(アルジェリア)、メサ・ヴェルデ国立公園(アメリカ合衆国)などがある。この基準は考古遺跡や人類化石遺跡などにも適用される[6]。考古遺跡で適用されている例としてはナスカとフマナ平原の地上絵(ペルー)、モヘンジョダロ(パキスタン)、メンフィスとその墓地遺跡-ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯(エジプト)など、人類化石遺跡で適用されている例としては南アフリカの人類化石遺跡群(南アフリカ共和国)、人類の進化を示すカルメル山の遺跡群:ナハル・メアロット(ワディ・エル=ムガーラ)の洞窟群(イスラエル)などがある。 基準(4)のみが適用された物件には、ルーゴのローマ城壁(スペイン)、レヴォチャ歴史地区、スピシュスキー城及びその関連する文化財(スロバキア)、フォントネーのシトー会修道院(フランス)、ラ・ショー=ド=フォンとル・ロックル(スイス)、クロンボー城(デンマーク)、ペタヤヴェシの古い教会(フィンランド)、バハラ城塞(オマーン)、アブ・メナ(エジプト)、ビニャーレス渓谷(キューバ)、グアラニーのイエズス会伝道所群(ブラジル・アルゼンチン)などがある。
基準(1)
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
タージ・マハル
プレアヴィヒア寺院
アントニ・ガウディの作品群
ティヤ
基準(2)
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
コローメンスコエの主昇天教会
シュパイアー大聖堂
ゲガルド修道院とアザト川上流域
スウェルの鉱山都市
基準(3)
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
ブリッゲン
ベルン旧市街
ヘラクレスの塔
南アフリカの人類化石遺跡群
基準(4)
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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