文化財
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重要文化的景観選定の第1号は滋賀県近江八幡市の「近江八幡の水郷」で、2006年(平成18年)1月26日に官報告示された。
伝統的建造物群詳細は「伝統的建造物群保存地区」を参照

伝統的建造物群は、周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群と定義されている。宿場町城下町などの町並み、集落がこれに該当する。重要文化財等とは異なり、まず市町村が都市計画または条例により、歴史的な集落や町並みの保存を図ることを目的として伝統的建造物群保存地区を定め(第143条第1項)、それらの伝統的建造物群保存地区の中から特に価値が高いものを文部科学大臣が重要伝統的建造物群保存地区として選定することができる(第144条第1項)。
埋蔵文化財詳細は「埋蔵文化財」を参照

埋蔵文化財は、他の文化財とは異なり土地に埋蔵されている状態にある文化財である。埋蔵文化財の発掘調査を行う場合は事前に文化庁長官へ届け出なければならない(第92条第1項)。埋蔵文化財を包蔵する土地は遺跡地図等により周知が図られている(第95条)。こうした周知の埋蔵文化財包蔵地において土木工事を行う場合も同様に文化庁長官へ届け出なければならない(第93条第1項)。地中から発見された埋蔵物が文化財と認められるときは、警察署長は都道府県教育委員会へ物件を提出し、都道府県教育委員会は物件が文化財であるかどうかを鑑査する(第102条)。
選定保存技術詳細は「選定保存技術」を参照

文化財の保存のために欠くことのできない材料製作、修理、修復などの伝統的な技術は、文化財には該当しないが、文化財保護法による保護の対象となっている。文部科学大臣は、選定保存技術を選定し(第147条第1項)、その技術の保持者または保持団体を認定する(第147条第2項)。
文化財の保存と活用

文化財の所有者は、個人、法人美術館博物館宗教法人財団法人株式会社など)、地方公共団体都道府県市区町村)、など多岐にわたる。文化財の所有者および関係者は、文化財を公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。文化財のうち、社寺など施設・場所の多くが見学を受け入れているほか、芸術作品なども常設または企画展で公開されることがある。文化財を撮影して写真集を含む書籍や展示会図録として出版したり、テレビ番組や映像ソフトで見せたりすることは20世紀から行なわれているが、21世紀には高精細画像でデジタル画像化して保存・公開することも行なわれている[1]

重要文化財の場合を例にとれば、重要文化財の所有者は、文部科学省令及び文化庁長官の指示に従って当該重要文化財を管理しなければならず(第31条)、所有者が判明しない場合又は所有者若しくは管理責任者による管理が著しく困難叉は不適当であると明らかに認められる場合には、文化庁長官は地方公共団体などを管理団体に指定し、所有者に代わって管理にあたらせることができる(第31条の2)。

重要文化財の現状変更には文化庁長官の許可が必要である(第43条)。重要文化財の輸出は原則として禁止されている(第44条)。また、文化庁長官は重要文化財の公開を勧告することができる(第51条)。一方で、重要文化財の管理又は修理につき多額の経費を要する場合は、所有者又は管理団体には補助金が交付される(第35条)。有形文化財のうち、登録有形文化財に関する規定は、重要文化財に関するものに比べてゆるやかなものとなっており、例えば現状変更は届出制となっている(第64条第1項)。

文化財の保存や修復・修理もには高度な技術と費用が必要で、学界を含めた官民の連携が重要である。文化庁と宮内庁読売新聞グループは2018年11月29日、皇室所有分を含む文化財の保存、修理、公開を一体で進める「紡ぐプロジェクト」を始めると発表した[1]
文化財愛護シンボルマーク

文化庁が、文化財愛護運動の推進およびその象徴として、1966年(昭和41年)5月に制定した「文化財愛護シンボルマーク」は、3段に重ねた組物(斗?)をイメージしたものである[2]
文化財の亡失と捜索・防犯

文化財は損壊したり、所在不明になったりすることも多い。日本では国宝・重文の美術工芸品1万524件のうち142件が所在不明(2021年時点)のほか、都道府県指定文化財も合計150件程度が所在不明である[3]。所在不明になり理由としては所有者の転居や死亡、法人解散、売買、盗難などのほか、第二次世界大戦直後の連合国軍占領下の日本で接収を経て海外に持ち出された例もある[3]。文化庁は所在不明文化財の一覧サイトを開設[4]するなどして捜索している。盗難は特に仏像で深刻であり、仏教寺院やその所在自治体では仏像の精密な写真撮影、3Dプリンターで製作した「お身代わり」の安置といった対策を講じている[3]。少子高齢化や地方の過疎化などにより、住職がいない寺が盗難に遭いやすくなったり、文化財や史料としての価値が判断される前に古文書などが廃棄されたりするリスクが増している[3]
地方公共団体の条例における文化財

文化財保護法第182条第2項は次のとおり規定している。地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財、重要無形文化財、重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる。

この規定に基づき、地方公共団体(都道府県、区市町村)の多くがそれぞれ「文化財保護条例」等の名称の条例を制定し、国指定等の文化財以外の重要な文化財について、教育委員会が指定等を行い保護を図っている。ただし、地方公共団体指定等の文化財が国の指定等を受けた場合は、当該地方公共団体による指定等は解除される。地方公共団体の制度はおおむね国の制度に準じたものであるが、それぞれの実情に応じて個々の特色を持った制度が定められている。以下に東京都山梨県岐阜県神奈川県横浜市石川県金沢市、神戸市の条例の挙げる。
東京都文化財保護条例(抄)


有形文化財のうち重要なものを東京都指定有形文化財に指定することができる。

無形文化財のうち重要なものを東京都指定無形文化財に指定することができる。

有形の民俗文化財のうち重要なものを東京都指定有形民俗文化財に、無形の民俗文化財のうち重要なものを東京都指定無形民俗文化財に指定することができる。

記念物のうち重要なものを、東京都指定史跡、東京都指定旧跡、東京都指定名勝又は東京都指定天然記念物に指定することができる。

山梨県文化財保護条例(抄)


有形文化財のうち重要なものを山梨県指定有形文化財に指定することができる。

無形文化財のうち重要なものを山梨県指定無形文化財に指定することができる。

有形の民俗文化財のうち重要なものを山梨県指定有形民俗文化財に、無形の民俗文化財のうち重要なものを山梨県指定無形民俗文化財に指定することができる。

記念物のうち重要なものを山梨県指定史跡、山梨県指定名勝又は山梨県指定天然記念物に指定することができる。

文化的景観のうち重要なものを山梨県選定文化的景観として選定することができる。

伝統的建造物群保存地区で価値が特に高いものを山梨県選定伝統的建造物群保存地区として選定することができる。

岐阜県文化財保護条例(抄)


有形文化財のうち特に価値の高いものを岐阜県重要文化財に指定することができる。

無形文化財のうち特に価値の高いものを岐阜県重要無形文化財に指定することができる。

民俗文化財のうち特に価値の高いものを岐阜県重要有形民俗文化財又は岐阜県重要無形民俗文化財に指定することができる。

記念物のうち特に価値の高いものを岐阜県史跡、岐阜県名勝又は岐阜県天然記念物に指定することができる。

横浜市文化財保護条例(抄)[5]


文化財のうち、地域住民が守ってきたもの及び地域を知る上で必要な文化財を横浜市地域文化財として登録することができる。

金沢市における伝統環境の保存および美しい景観の形成に関する条例(抄)


伝統環境を保存育成するために必要な土地の区域(以下「伝統環境保存区域」という。)または近代的都市景観を創出するために必要な土地の区域(以下「近代的都市景観創出区域」という。)を指定することができる。

都市景観の形成のため、建築物等および木竹を保存対象物として指定することができる。

神戸市文化財の保護及び文化財等を取り巻く文化環境の保全に関する条例(抄)


文化財のうち必要なものを神戸市登録文化財として登録することができる。

文化財のうち必要なものを神戸市地域文化財として認定することができる。

文化環境を保存するため必要な区域を文化環境保存区域として指定することができる。

文化環境保存区域内に存する有形文化財のうち重要なものを神戸市歴史的建造物その他の有形の文化的所産に選定することができる。

文化財学科を持つ日本の大学

京都橘大学 文学部 歴史遺産学科

金沢学院大学 美術文化学部 文化財学科

大阪大谷大学 文学部 文化財学科

鶴見大学 文学部 文化財学科

奈良大学 文学部 文化財学科(日本初)

別府大学 文学部 史学・文化財学科(2009年4月に改組)


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