が成り立つから、Z が単項イデアル整域であることがわかる。ここから導かれる、任意の整数が単元を掛ける違いを除いて素数の積として一意に表されるという重要な事実は算術の基本定理と呼ばれ、Z が一意分解環であることを示す。 Z {\displaystyle \mathbf {Z} } における通常の大小関係 … < − 3 < − 2 < − 1 < 0 < 1 < 2 < 3 < … {\displaystyle \ldots <-3<-2<-1<0<1<2<3<\ldots } は、上にも下にも有界でない全順序関係
順序構造
a < b {\displaystyle a<b} かつ c < d {\displaystyle c<d} ならば a + c < b + d {\displaystyle a+c<b+d} ,
a < b {\displaystyle a<b} かつ 0 < c {\displaystyle 0<c} ならば a c < b c {\displaystyle ac<bc}
が成り立つという意味で Z {\displaystyle \mathbf {Z} } の環構造と両立し、 Z {\displaystyle \mathbf {Z} } は順序環となる。0 より大きな元は「正」、0 より小さな元は「負」である。正の整数全体 N {\displaystyle \mathbf {N} } は、任意の整数 x {\displaystyle x} に対し x {\displaystyle x} または − x {\displaystyle -x} が N {\displaystyle \mathbf {N} } に属するという意味で Z {\displaystyle \mathbf {Z} } の賦値環である。
厳密な構成格子点と整数との対応
自然数の全体 N は減法について閉じていないが、上ではそれを補完するものとして負整数を導入し、整数の全体 Z を構成した。それと本質的には変わらないが、よく知られる方法[3]としてここでは、減法を陽に持ち出さずに、自然数の加法と乗法のみから同値関係や商集合といった道具を使って、整数が厳密に構成できることを記しておく。なお、以下の構成では、自然数には 0 を含まないとする[note 2]。
まず、直積集合 N2 = N × N = {(a, b) 。a, b は自然数} を考える[note 3]。N2 に同値関係 ∼ を(a, b) ∼ (c, d) ⇔ a + d = b + c
と定義することができる。ここで、N2 を同値関係 ∼ で類別した集合(商集合)N2/∼ を考える。これは、互いに同値なもの全体の集合(同値類)を元とするような集合であり、直観的には互いに同値であるようなものを同一視する操作である。(a, b) ∈ N2 の属する同値類を [a, b] ∈ N2/R と表すことにする。つまり、[a, b] は[a, b] = {(c, d) ∈ N2 。(a, b) ∼ (c, d)}
となる集合である。同値類を [a, b] のように表すとき、(a, b) をこの同値類の代表元と呼ぶ。代表元は同値なものでありさえすれば、他のものに取り替えることができる[note 3]。商集合 N2/∼ に加法 + と乗法 × を[a, b] + [c, d] = [a + c, b + d][a, b] × [c, d] = [ac + bd, ad + bc]
と定義すると、これらは代表元の取り方によらずに、同値類同士の演算としてうまく定義されていることが確かめられる[note 3]。
このとき、[a, b] + [m, m] = [a + m, b + m] = [a, b] であるから、R = {(m, m) 。m ∈ N} は N2/∼ の加法に関する単位元である。
また、自然数 m に対して [m + 1, 1] を対応させる写像は単射で、[m + 1, 1] + [n + 1, 1] = [m + n + 2, 2] = [(m + n) + 1, 1],[m + 1, 1] × [n + 1, 1] = [(m + 1)(n + 1) + 1, (m + 1) + (n + 1)] = [mn + 1, 1]
を満たす(準同型)から、 N は N2/∼ に演算まで込めて埋め込める[note 4]。
記号の濫用ではあるが、自然数 m を埋め込んだ先と同一視して m = [m + 1, 1] と書くことにし、これを(正の)整数 m と呼ぶ[note 5]。
同様の埋め込みは、自然数 m に対して [1, m + 1] を対応させることでも得られるが、和と積は[1, m + 1] + [1, n + 1] = [1, (m + n) + 1],[1, m + 1] × [1, n + 1] = [1 + (m + 1)(n + 1), (m + 1) + (n + 1)] = [mn + 1, 1]
となる。自然数 m に対し、新たな記号 −m を [1, m + 1] を表すものとして導入し、これを負整数 −m と呼ぶ[note 6]。
負整数同士の積が正整数になっていることが確認できる。
このとき、m + (−m) = [m + 1, 1] + [1, m + 1] = [m + 2, m + 2] = R だから、負整数 −m = [1, m + 1] は N2/∼ においてはちょうど、正整数 m = [m + 1, 1] の加法に関する逆元になっている[note 7]。
R をあらためて 0 と書くことにして、N2/∼ = {m, 0, −m 。m ∈ N} を整数全体の集合と呼び、改めて Z と書くことにしよう。
このようにして整数の全体 Z が厳密に定義されたが、なお定義に従えば Z において結合法則や分配法則などの環の公理が満たされることが証明できる。
一般化
二次の整数
ガウス整数
アイゼンシュタイン整数
コンピュータにおける整数表現詳細は「整数型」を参照
コンピュータの内部では電気的な信号の有無を 1 と 0 に割り当て、2進法を用いて整数を表現するのが基本である。通常は、2 バイト(16 ビット)または 4 バイト(32 ビット)の範囲で表現できる範囲の数を扱う。負の値を扱う場合は、2の補数表現などが用いられる。通常は有限の範囲の整数しか扱うことができないが、処理速度を犠牲にして無限の整数を扱う方法もある。
事務処理など金額などの大きな桁や 10 進小数を正確に扱う必要がある場合、二進化十進表現を用いる。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 接頭辞「有理(的)」(rational) はそもそも「整数比」であるという意味なので、この呼称は自己循環的にもみえる。