数学的帰納法
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以上のような論法の起源は、古代ギリシャの哲学者ミレトスのエウブリデス (en) が作ったとされるハゲ頭のパラドックス (Paradox of the Bald Man)[6]に帰せられる。これは砂山のパラドックスの起源としても知られる。

前述のジョークにはさまざまなバリエーションがあるが、いずれも「少量の増加程度では大差ない。よって数学的帰納法より沢山の増加でも差はない」という誤謬を利用している。
歴史

初期の例としては、プラトンによるパルメニデス(紀元前 370年)において暗黙に帰納法を使用した証明がみられる[7]。また数学的帰納法としての痕跡は、素数が無限個あることを示したユークリッドの証明や、バースカラ2世による "cyclic method(英語版)[8] に見ることができる。通常とは逆に、パラメータとなる自然数が減少していく逐次的な論法は、砂山のパラドックスにみられる。つまり、10,000粒の砂粒が砂山を形成し、そこから一粒の砂を取り除いても砂山が残るならば、一粒だけ残った砂(或いは全ての粒を取り去った後)でもなお砂山を形成するといえる。

等差数列について暗黙に数学的帰納法を用いた証明は、紀元 1000年ごろにアル=カラジ(英語版)による "al-Fakhri" に扱われている。アル=カラジは二項定理パスカルの三角形を示すのに数学的帰納法を用いた。

しかし、これらの古代の数学者たちは帰納法の仮定を明示することはしていない。別の似た例としては(Freudenthal が注意深く示したように、Vacca が著したものとは対立するが)、フランチェスコ・マウロリコ(英語版)が 1575年の著作 "Arithmeticorum libri duo" にて最初の n 個の奇数の和が n2 に等しいことを示す際にこの技術を用いている。明示された形での数学的帰納法の原理はパスカルがその著作 "Traite du triangle arithmetique" (1655)にて与えた。フランス人フェルマーは、帰納法と関連する、無限降下法による間接的な証明をうまく使っている。帰納法の仮定はヤコブ・ベルヌーイによっても使われ、以後多少よく知られるようになった。現代的な厳密さをもち体系的な数学的帰納法の原理の扱いは 19世紀に入ってジョージ・ブールオーガスタス・ド・モルガンチャールズ・サンダース・パースジュゼッペ・ペアノリヒャルト・デーデキントによって為された。
関連項目

構造的帰納法

帰納

演繹

自然数

整列集合

整礎関係

無限降下法

再帰

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 自然数の定義は 0 を含む流儀とそうでない流儀があるが、ここでは後者を採用した。0を含むとする場合には、P(1) が成り立つことを示す代わりにP(0) が成り立つことを示す。
^ リンク先のペアノの公理5.は数学的帰納法そのままの形をしているが、そうではなく、本稿で言うところの公理Vは原典に類似した次のような形式のものである:「集合 M {\displaystyle M} が (1) 1 ∈ M {\displaystyle 1\in M} 、および (2) すべての自然数 r {\displaystyle r} において、 r ∈ M ⇒ r + 1 ∈ M {\displaystyle r\in M\Rightarrow r+1\in M} 、を満たすならば N ⊆ M {\displaystyle \mathbb {N} \subseteq M} である。」
^ k = 1 のときは、k より真に小さい自然数は存在しないので、P(1) が真であることを意味する。
^ ここでは「髪の毛が少ない人」の意味で「ハゲ」という言葉を用いている。髪の毛の本数が0本である必要はない。

出典^ 「数学的帰納法」って何でしたっけ?「帰納法」と「演繹法」? - ニッセイ基礎研究所
^ “Mathematical Induction Provides A Tool For Proving Large Problems By Proceeding Through The Solution Of Smaller Increments”. Encyclopedia.com. 2020年9月8日閲覧。
^ Florian Cajori (1918). “Origin of the Name "Mathematical Induction"”. The American Mathematical Monthly (Taylor & Francis, Ltd) 25 (5). doi:10.2307/2972638. https://www.jstor.org/stable/2972638?seq=2#page_scan_tab_contents. 
^ Causey, Robert L., Logic, Sets, and Recursion (1994), pp. 223?224.
^ 例えば次の文献:草場公邦『数理と発想』創拓社、1978年
^ Hyde, Dominic, ⇒"Sorites Paradox", The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Fall 2005 Edition), Edward N. Zalta (ed.)
^ Acerbi, F. (2000). Plato: Parmenides 149a7-c3. A Proof by Complete Induction?, Archive for History of Exact Sciences 55: 57?76. doi:10.1007/s004070000020
^ Cajori, Florian (1918). Origin of the Name "Mathematical Induction". The American Mathematical Monthly 25 (5): 197?201. doi:10.2307/2972638. JSTOR 2972638.

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