教員
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また、教員免許状の失効事由である懲戒免職処分等について、その具体的な理由の主な類型(児童生徒等に対するわいせつ行為等)が判別できるよう、省令(教育職員免許法施行規則)の改正を行い、令和3年4月に施行された[4]
文部科学省による教員への処分と対応

児童生徒等を守り育てる立場にある教員が、児童生徒等に対してわいせつ行為を行うことは、決してあってはならないことであり、文部科学省では、このような悪質で重大な問題について厳正かつ実効性のある対応を検討・実行することとなった。児童生徒等に対してわいせつ行為に及んだ教員の厳正な処分については、これまでも、原則として懲戒免職とするよう各教育委員会に対して指導していたが、令和2年9月時点で、全ての都道府県・指定都市教育委員会の懲戒処分基準において、その旨の規定が整備された[5]

また、そのほかにも教員によるわいせつ行為の防止のために必要となる取組について、例えば
児童生徒とSNS等による私的なやりとりをしてはならないことの明確化

執務環境の見直しによる密室状態の回避等の予防的な取組等の強化

採用希望者の経歴等を十分に確認し、適切な採用判断を行うこと

などについても通知に明記し、各教育委員会に対応を順次求めていく方針を示している[6]
教員から児童生徒への性的加害問題

2019年度までの5年間に猥褻・セクハラ行為で懲戒処分を受けた公立小中高校などの教員が千人を超え、このうち約半数が自校の教え子に加害行為をしていた[7]。過度な服装調査も猥褻やセクハラの場面となることもある。なお、文部科学省は猥褻教員の免許再取得を3年から5年に延長する方針の教育職員免許法(教免法)改正の動きがあり2020年現在批判が集まっている[8]
沖縄県の公立中学校で、部活動の副顧問をしていた男性教諭からスカート内に手を入れられるなどの猥褻行為を受けた女子生徒が、高校進学後の12月に自殺した事件も起こっており[9]、猥褻行為が明らかにあったのは学校や教育委員会の調査ではなく遺族の調査によることも明らかになっている[10]。なお県教委は14年にこの加害教諭がわいせつ行為で懲戒免職したがこの免許の失効情報を官報に掲載していなかった、これが明らかになり文科省は問題視している[11]。2019年1月には大分県の高校で教諭の男性(33)が教え子の高校生に手を出し、不倫関係である交際を苦にした女子高校生は自殺を図り意識不明の重体となった事件があった[12]。小学校3年生の担任が複数の受け持ち女児を呼び出し日々下着の中に手を入れるなどの猥褻行為を行い懲戒処分で失職となった教員が、その後障害のある子どもたちの支援施設に就労している実態もある[13]。2021年1月には大阪府の私立中学校の修学旅行引率教諭が男子生徒に薬物入り飲料を飲ませて猥褻行為をし、逮捕されている[14][15]。小児への性犯罪は再犯罪率も高く、9歳の特別支援学級女児を裸にして撮影した教員は以前に別の中学で猥褻行為をした後小学校で復職し犯行に及んだことが分かっている[16]。シッターによるわいせつ被害事件では、2020年8月まで6回逮捕された加害者はNPOキャンプのボランティアスタッフ、児童福祉設の職員などの場でも犯罪を繰り返していた[17]。栃木県の公立中学校で2年生の担任をしていた教員はわいせつ関連で2か月間で4度も逮捕された事件[18]もあり明らかに適切に欠く人材もいる。しかしながら文科省は2020年12月、児童生徒に対するわいせつ行為で懲戒免職とされた教員が、再び免許状を取得できるまでの期間を延長する法改正案を断念したことを発表した。内閣法制局が、個人の権利制限につながるためとの見解を示したことが影響している。今後は対策として、懲戒免職になった教員の情報を官報に掲載する際、わいせつ行為が理由であることを明記する規定を設ける予定としている[19]。しかし2020年12月現在、懲戒免職などで教員免許を失効した教員について、教員免許法で官報に氏名の掲載が義務づけられているにもかかわらず多数の都道府県で未掲載が相次いでいることが判明している[20]。2020年12月には兵庫県教育委員会が15年前に18歳だった教え子にわいせつ行為をしたことで県立高校の50代の男性教諭を懲戒免職処分にした[21]。2021年1月には、28年前教え子に性的行為をした男性教諭を懲戒免職となり逃げ得が赦されない状況となってきている[22]。不法行為に基づく損害賠償請求権に関する除斥期間は2020年4月施行の改正民法で、消滅時効にかかかるため民事訴訟では被害者が敗訴することがあるが、地方公務員法と国家公務員法では懲戒処分の時効の規定がないことから信用失墜行為に該当した場合には相当期間経過しても処分対象となっている[23]
ところで、学習塾で生徒が講師から盗撮された事件では犯人は千葉県の迷惑防止条例違反で逮捕されたが、県により条例が異なっているため他県では犯罪として取り締まれない状態があり問題視されている。スマホの普及もあり盗撮の検挙件数は10年前の2倍超に達していることから、「盗撮罪」としての刑法改正が望まれている[24]。陸上競技や水着での協議で中高生を含む女性選手を狙った赤外線での盗撮や性的な意図による撮影により性的画像が拡散し被害にさらされている問題もある[25]同性間での事件もありスーパー銭湯の脱衣場で男性客らを盗撮したとして逮捕された中学教諭が、自校の男子生徒の着替えの様子を盗撮し児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で起訴された事件もある[26]。山梨県警の男性警視や山口県警の男性巡査長、千葉県の男性職員、川崎市教育委員会の市立小学校の男性総括教諭など社会的地位がある者が相次いで更衣室や電車内、職場などの盗撮容疑で逮捕や処分されているが、[27][28][29][30]その背景には刑法の犯罪者として前科がつかないことで抑止力が働かないこと、被害者となる女性への人権軽視の可能性がある。本人の承諾がなくとも一度インターネットに掲載され拡散された画像や動画は完全に回収することはできず、性的画像を提供したり撮影されたことから取り返しがつかない被害を長期に被る危険性も現代に生きる子どもには不可欠な知識となっている。なお、スマートフォンについては文部科学省が2020年6月、原則禁止としてきた中学生によるスマートフォンや携帯電話の学校への持ち込みを、条件付きで認めると決めた[31]。しかし、奈良県では2020年2月、同市立中学校で、2年生の複数の男子生徒が女子生徒のスカートの中や着替えの様子を隠しカメラなどで盗撮し、無料通信アプリ「LINE」で動画や画像を共有し売買されていたため警察に通報された事件があることも明らかにされている[32]。盗撮行為が行われた場合、生徒指導及び施設管理者としての学校長の責務を問われることは必至であり、今後その取扱いが課題となる。
教員多忙化

平成26年(2014年)のOECD国際教員指導環境調査(TALIS)、平成29年(2017年)の文部科学調査で日本における小中学校教諭の勤務時間が突出して長時間となっていることが明らかになり、教職員の働き方と学校業務の在り方を検討した中央教育審議会の答申が学校における働き方改革として、平成31年(2019年)1月に取りまとめられ、これを受け、文部科学省は、学校における働き方改革の取組を進め、各自治体でも教職員の勤務時間短縮と学校業務改革についての実施計画が策定されている。教師に精神障害が多発しているが、長時間労働も一因と考えられるとの意見がある[33]。関連して、給特法とは関係なく労働基準法が適用となるはずの私立学校の教員も、その多くで残業代が払われていないとの指摘もある[34]。2020年12月、公立学校教員の勤務時間を年単位で調整する「変形労働時間制」の導入を柱とした改正教職員給与特別措置法(給特法)が成立した。自治体の判断により2021年度から、変形労働時間制を活用した「休日まとめ取り」が可能となったが[35]、2020年4月からの新型コロナウイルス感染症対策として全国で小中学校の休校が相次ぎ、その代償として学習指導要領のカリキュラムを履行するため、夏休みを返上を表明している自治体も出ていると報道されている[36]

教育多忙の要因は、平成26年11月の文部科学省調査では「国や教育委員会からの調査等への対応」を筆頭に、「研修会や教育研究のレポート作成」、「児童・生徒・保護者アンケートの実施・集計」、「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」に多くの時間が費やされ、多忙感を増大させているとの結果となっている[37]。教職員の残業に関する訴訟では、残業に対する認識の違いについて教員の訴えと学校とで食い違いを見せた。アレルギー除去食への注力や校長指示で給食残菜をなくすことに神経を注ぐ必要があったこと、給食や掃除の時間には事務ができないとする教員に対し、給食の時間でも事務はできるなどとする学校との対立姿勢が浮き彫りになされた[38]
「教師のバトン」プロジェクト「教師のバトン」も参照

2021年の3月26日、文部科学省の「『#教師のバトン』プロジェクト」が開始された[39]。このプロジェクトは、教員を目指す若者がこれまでになく減っている中で、現場から教員の魅力を発信してもらい、教員の仕事の魅力を知ってもらおうと企画されたものであった[39][40]。学校の「働き方改革」の好事例などについて、Twitterなどで「#教師のバトン」のハッシュタグをつけて教員に投稿してもらうという予定だった[39]

しかし、プロジェクトが始まると、長時間労働、休憩が取れない忙しさ、部活動の負担など、教員の窮状を訴える声が多く投稿された[41]。文部科学省には、現場の訴えに耳を傾けて改革を後押しするよう求める意見が出た[42]。30日には萩生田光一文科相が記者会見で「学校の厳しい勤務環境が明らかになった」と言及する事態となった[43][44]。また同時に「願わくば、学校の先生ですから、もう少し品の良い書き方をしてほしい」と苦言を呈した[42]が、これに反発する投稿も見られた[45]。さらに、プロジェクトを所管する文部科学省の総合教育政策局の局長は4月8日に急遽「メディア向け説明会」を開き、「社会から注目いただいていると前向きにとらえ、厳しい訴えを率直に受け止める」と述べた[40]


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