政治
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民主政国家の場合は、署名運動請願討論デモ活動によって、国民が政治活動を行うことがあり[9]、国民による選挙によって選出された、職業として政治活動を行う者を「政治家」という[10]政治活動家とは区別される。
概要

政治のより具体的な構成について観察すると、政治はどのように社会に働きかけているのかという客観的な問題と、政治はどのように社会に働きかけるべきかという規範的な問題に大別することができる。しかし現実の政治ではこの二種類の問題は混合した形で現れるものであり、これは後述するように政治の本性が何であるかという議論で表現されている。客観的な観点に立てば、政治は社会に対して秩序を与えており、またその動態を制御するための制度が考案されている。領土国民主権の下で統治するという国家の制度や、国家を組織運営する立法府行政府そして司法府という政府組織、そして統治者を選出するための民主主義の原則に基づいた代議制など、数多くの政治的制度が存在する。さらに政治的作用は制度の体系だけではなく、経済文化の状況や、企業圧力団体などの主体に動態的に影響している。市民運動やマスコミの活動は政治的な相互作用を生み出している。

次に政治の規範的問題に移れば、多種多様な政治イデオロギーがこの問題に応答している。政治イデオロギーとは後述するようにさまざまな問題に対する政治的態度を指導する観念の体系であり、代表的なものに自由主義保守主義、社会主義などがある。また個別的な問題に対するフェミニズム環境保護主義があり、さらに宗教原理主義までをも含めればさらに政治的態度の種類は多様なものだと認められる。これらの思想や態度が主要な論点としている規範の問題は人間本性や社会の自然なあり方、そして自由平等、さらには幸福正義などの理念を踏まえた上での統治者の権力、被治者の権利などに及んでいる。こうした議論が現実の政治秩序を理論的に基礎付けており、憲法外交選挙基本的人権市場社会福祉義務教育国防などの在り方を示している。

本項目では読者の政治における全般的な理解を助けるために、政治学的な主題を広く扱っている。したがって、いくつかの重要な主題を取り上げ、その詳細についてはそれぞれの項目を参照されたい。そこで第1章では政治の根本的な概念を基礎付ける政治の本性や権力、道徳の原理について概説し、次に主要な政治イデオロギーとして自由主義、保守主義、そして社会主義を取り上げる。また政治体制の観点からは権威主義、全体主義、権威主義の特性などを検討し、政治の場として機能している国家や国際政治の在り方も素描する。そして政治過程を構成する政党や市民、団体などの政治的相互作用に着目し、統治機構についても立法府や行政府などを論じる。最後に政治の出力である政策領域について概括する。ここで詳細に取り上げることができない各国の政治情勢や政治史については各国の政治の諸項目を、政治を研究する政治学の方法や概念については政治学を参照されたい。
政治の原理
政治権力詳細は「権力」を参照

権力とは一般に他者に対してその意志に反してでも従わせることのできる能力と一般的な定義が与えられている。ドイツの社会学者マックス・ウェーバーは「抵抗に逆らってでも自己意思を貫徹するあらゆる機会」と捉えている。権力に対する認識については権力が生じる資源の実体性から把握する方法と、権力が生じる他者との関係性から把握する方法がある。フィレンツェの政治思想家ニッコロ・マキアヴェッリは政治権力は軍事力という暴力装置によって裏付けられなければならないと考えており、これは権力資源の実体性から権力を把握するものである。またアメリカの政治学者ロバート・ダールは『誰が統治するのか?』の中で権力を「他からの働きかけがなければBがしないであろうことを、AがBに行わせることが可能なとき、AはBに対して権力を持つ」という他者との関係において定式化している。そして権力は集団において意思決定することで行使されると考えた。この権力の本質をめぐる議論から分かるように、権力の概念とは論争的なものであり、権力は権威暴力などの概念との関係の観点からも議論される。

フランスの哲学者ミシェル・フーコーの『監獄の誕生』は権力の概念をめぐる議論で新しい観点を提示した。フーコーの権力理論によれば、近代の刑罰について研究することで知識と権力の密接な関係を「権力と知とは相互に直接含みあう」と指摘している。つまり権力は知識が協同することで初めて人間の行動を支配することが可能となるものであり、科学的な知識であっても権力と無関係に独自に存在するものではないと論じた。権力の概念に対する見解についていくつか概観したが、いずれも政治の根本的な構成要素として権力を位置づけている。なぜなら、政治においてそれぞれの主体は権力を活用することによって目的を達成することが可能となるためである。

権力の機能には他者の積極的な服従と消極的な服従の両方が含まれる。他者の積極的な服従を獲得する能力は厳密に言えば権力と区別して権威と呼ばれる。アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラムが実施したミルグラム実験が示すところによれば、教授の命令に対して多くの被験者は自己に責任が及ばないために、他者に対して継続的に電気ショック[要曖昧さ回避]で危害を加えることが確認できる。このような権威者に対する他者の服従は人間の心理だけでなく、合理性の観点からも理解することができる。イギリスの政治思想家トマス・ホッブズジョン・ロックの政治思想によれば、権威者がおらず各人が自分の判断で勝手に行動している自然状態において、各人は自己の生命と財産を守るという合理的な理由に基づいて政府組織を構築したと論じている。これは権威者に対して人々が服従することによって安定した秩序がもたらされると考えることができる。ウェーバーは『支配の社会学』において権力が受容される理由を心理的要因や合理的要因とは異なる観点から捉えており、正当性の概念で説明している。つまり人間が権力の働きである支配を受容するさまざまな理由は伝統的正当性、合法的正当性、そしてカリスマ的正当性の三種類に大別することが可能であると論じた。いずれかの正当性を備えているならば、それは支配される人々にとっては服従しうるものとなる。一方で権力は消極的な服従を強制的に獲得する機能も持つことに着目することができる。ドイツの政治思想家カール・マルクスや革命家ウラジミール・レーニンは権力を国家権力に限定して捉え、それが支配階級であるブルジョワジーによって運営されるプロレタリアートに対する暴力的な強制装置であると考えた。このマルクス主義的な権力理論によれば、国家に支配される国民は抑圧されていると考えられる。
政治道徳詳細は「正義」を参照

政治において正義とは適切な均衡が存在する状態を言う。この基本的な正義の概念を理解する上で古代ギリシアの哲学者プラトンの議論が参考になる。プラトンは『国家』において正義は個人においては理性、意志、情欲の三つが精神的に調和している状態であり、国家においては政治家の知恵と軍人の勇気、そして庶民の節制の精神が調和している状態を指すものと論じた。しかし均衡をどのように実現するかについてより具体的に考えるならば、分配の問題に取り組む必要がある。アリストテレスは『ニコマコス倫理学』で正義を道徳的に正当な利害の配分と捉え、もしこの配分が正当な均衡を失えば、それは不正な状態であるために是正しなければならないと論じた。

アリストテレスの正義の定式は現代に発展されている。哲学者ジョン・ロールズは『正義論』において共通善を自由と考え、恵まれない人々のために恵まれる人々の自由を制限することで、平等に自由に必要な基本財を分配する正義の理論を展開している。したがって恵まれない人々の基本的な自由を、恵まれた人々が負担することで社会の不正は是正されると論じた。この見解には反論がある。哲学者ロバート・ノージックは自己の自由を最大化するためにある程度の自由を制約しながら社会を形成するのであり、もし恵まれた人々の財産を他の人々のために制限するならば、それは不当な自由の侵害であると指摘した。これらの議論は社会において正義の基準が複合的に存在することを浮き彫りにしている。そこで哲学者マイケル・ウォルツァーは社会の多元性を踏まえた複合的平等を主張しており、またシュクラールが不正義によって被害を受けた人々の意見に注意することを提唱している。

正義論での諸々の立場は倫理学では徳倫理学功利主義、そして義務論に系統化することができる。徳倫理学はプラトンやアリストテレスに代表される立場であり、いかに善い状態になるのかを主眼に置いている。また功利主義はジェレミ・ベンサムジョン・スチュアート・ミルに代表される説であり、「最大多数の最大幸福」という言葉でしばしば要約されるように社会万人の利益になる行為を正当化する。そして義務論はイマヌエル・カントに代表される理論であり、理性を以って義務を確立し、それを実施することを正当化する。これらの道徳理論は政治理論や政治イデオロギー、公共政策を正当化している。
政治システム詳細は「政治システム」を参照

イーストンは『政治分析の基礎』において政治システム論を展開している。政治を一つのシステムとして捉え、環境からもたらされる入力を変換して社会に価値を権威的に配分し、出力するものというモデルを構築した。


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