政府の長
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議院内閣制における政府の長

議院内閣制においては、政府は以下のように機能する。

政府の長――通常は多数派の政党または連立政党の指導者であり、政権を組織し、議会に対して責任を負う。

以下のような仕組みで政府は議会に対して完全に責任を負う。

議会が
不信任決議をすることができること。

政府が議会を解散させることができること。

財政措置および予算(すなわち国庫からの支出)を統制することまたは否決することができること。二院制においては、多くの場合はいわゆる下院(英国庶民院など)が統制および監視の役割の多くを果たすが、国によっては、オーストラリアイタリアのように、政府は憲法上または慣習上、議会の両院に対して責任を負う。

これらの要件のすべてが、政府の長の役割に直接に影響を及ぼす。その結果、政府の長はしばしば、議会において日常的な役割を果たすこととなる。他方で、半大統領制においては、議会の機能においてそれほどの役割を果たすことはない。
選任

多くの国においては、政府の長は、下院における政党支持の力を基礎として、国家元首により政権を組織するよう委任を受ける。国によっては、議会によって直接に選出される。多くの議院内閣制においては、大臣が議員であることが求められるが、制度によっては、議員であることが禁止される(すなわち、大臣就任とともに辞任しなければならない)こともある。
退任

政府の長がその権限を喪失する典型的な方法は、議院内閣制においては以下のとおりである。

以下の事態の後の辞職。

総選挙における敗北。

内閣不信任決議の可決。

自党の幹部会での党首選挙における敗北。新党首にその地位を譲ることとなる。

重要議案に関する議会での敗北。例えば、予算の否決、不信任決議。(この場合、政府の長は、国家元首に対して議会の解散を求め、選挙による支持回復を試みることができる。)


罷免―憲法によっては国家元首(または、イギリス連邦諸国のように、国家元首から委任を受けた代理人)が政府の長を罷免することができる。もっとも、かかる権限の行使は論議を招く。例えば、1975年には、オーストラリア憲法危機において、オーストラリア総督のサー・ジョン・カーゴフ・ホイットラム首相を罷免した。

死亡―この場合、典型的には、政府の長の次官が、新たな政府の長が選任されるまでの間、政府の長を代行する。

同輩中の首席か内閣の支配者か

憲法によって政府の長に認められた権限の範囲および射程は異なる。古い憲法によっては(例えば、オーストラリアの1900年の条文やベルギーの1830年の条文)、首相職について全く言及しないものの、その職がやがて正式な憲法上の地位を伴わないまま事実上現実化した。憲法によっては首相をprimus inter pares(同輩中の首席)とし、フィンランドやベルギーにおいては依然として現にそのような実務である。しかしながら、その他の国々おいては、首相を内閣制度における中心的で支配的な立場とする。例えば、アイルランド首相は、議会の解散をいつ求めるかを単独で決定することができる。他方で、他の国々においてはこれは内閣の決定事項であり、首相はその一員として提案に対し票を投じるに過ぎない。英国の憲法においては、首相の役割は、しばしば各人の個人的魅力や個性の強さを基礎として発達した。例えば、クレメント・アトリーに対するウィンストン・チャーチルや、ジョン・メージャーに対するマーガレット・サッチャーの例がある。

多くの国々において個人的な指導力の強化に伴い首相自身が「準大統領的」なものへの変化したと主張される。その理由の一部は、議会にではなく指導者とその命令に焦点を当てたマスコミの政治報道と、首相への権限集中のためである。そのような主張は最近の2人の英国首相に対してなされた。マーガレット・サッチャートニー・ブレアである。また、同様の主張は、カナダピエール・トルドー首相や西ドイツ(後に統一ドイツ首相ヘルムート・コールに対しても、その在任中においてなされた。
官邸詳細は「官邸」を参照

政府の長は国家元首同様に専用の官邸を持つことが多い。以下は政府の長の官邸の例である。

ダウニング街10番ロンドン) - イギリスの首相(別邸としてチェッカーズを持つ)

サセックスドライブ24番地オタワ) - カナダの首相

キージ宮ローマ) - イタリア閣僚評議会議長(公式行事においてはヴィラ・ドリア・パンフィーリも用いる)

内閣総理大臣官邸東京) - 日本内閣総理大臣

中南海北京) - 中国国務院総理

青瓦台ソウル) - 韓国大統領

ザ・ロッジキャンベラ)、キリビリ・ハウス(シドニー) - オーストラリアの首相

マティニョンパリ) - フランスの首相

ランベルモン(ブリュッセル) - ベルギーの連邦首相(移転計画があったが世論の反対を受けて破棄された)

モンクロア宮(マドリード) - スペインの閣僚評議会議長

プレミアハウス(ウェリントン) - ニュージーランドの首相

サーゲシュカ宮(ストックホルム) - スウェーデンの首相

バルハウスプラッツ2番ウィーン) - オーストリアの連邦首相(バルハウスプラッツ1番には連邦大統領官邸のホーフブルク宮殿がある)

スリ・ペルダナ(プトラジャヤ) - マレーシアの首相

官邸の名称は政権を指すメトニミーとして使われる。例えば「ダウニング街10番」はイギリスの政権を指して用いられる。

似たようなものとして、国レベルよりも下位の連邦を構成する政府(少なくとも国際法上は国家元首を有しないことが多い)の長も官邸を持つことがある。これはその地域、州などの独立の希望を示す表現として用いられることがある。例えばベルギーでは、北部にあるオランダ語系のフランデレン地域(フラマン語共同体地域)の首相を指すものとして、ブリュッセルにある「エレラ」が、ワロン共同体首相についてもナミュールの「エリゼット」(小型のエリゼ宮殿の意)がそれぞれ用いられる。

もっとも、政府の長の官邸は通常、国家元首(儀礼上のものも含む)の官邸(宮殿と呼ばれることもある)よりも低い扱いを受ける。ただし、政府の長と国家元首の役割が統合されている場合は別である。例えば、アメリカ合衆国大統領官邸であるワシントンD.C.ペンシルベニア通り1600番のホワイトハウスがある。

また、国家元首の形式的な代理人(総督など)にも宮殿のような官邸が与えられることがある。
脚注[脚注の使い方]^ キューバ共和国憲法(2002年)

参考文献

Jean Blondel; Ferdinand Muller-Rommel (英語). Cabinets in Western Europe. Palgrave Macmillan.
ISBN 978-0333462089 

関連項目

行政

議院内閣制

国家元首

外部リンク

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