政党制
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二党制と多党制の間よりも穏健な多党制と分極的多党制の間に決定的な分割線があるとした[1]

アーレンド・レイプハルトは有効議会政党数を使用して「2党制、2.5党制、優位政党のある多党制、優位政党のない多党制」に分類した。

社会的・経済的要因、歴史的・文化的要因、選挙制度などの技術的要因は各国の政党制を決定する。小選挙区制や一回投票制は二党制を生む傾向があり、比例代表制二回投票制は多党制を生む傾向がある[1]
デュヴェルジェ

類型と分析において影響力があったのはモーリス・デュヴェルジェの検証だった。デュヴェルジェは一党制、二党制、多党制に三分し、その中で二党制を推奨した。政治対立は二者の対立になるものであり、中間的な立場は不自然であるため、二党の対立が良いと考えた。また、小選挙区制が二党制を生み、比例代表制が多党制を生むという「デュヴェルジェの法則」を提唱した[2]

この三分法では、一党制は独裁を、多党制は混乱をもたらすとされた。二党制のアメリカイギリスが最も優れているとされた。

1970年代以後の修正では、多党制は必ずしも混乱をもたらさないことが示された。
サルトーリ

1970年代にサルトーリは数とイデオロギーを基準にした類型を提唱し、政治学者に広く受け入れられた。サルトーリはまず非競合的なものと競合的なものに分類し、次に数とイデオロギーによって分類した[3]

競合的かつ非効率的な民主主義として一党優位政党制と分極的多党制を指摘した[4]。一党優位政党制に入れられたのはジャワハルラール・ネルーインディラ・ガンディーの時代におけるインドなどである。分極的多党制に入れられたのはサルトーリの母国であるイタリアヴァイマル共和政ドイツフランス第三共和政フランスフランス第四共和政のフランスなどである。これらの政党制における特徴は、イデオロギーの差異が大きいことである。

競合的かつ効率的な民主主義として二大政党制と穏健な多党制を指摘した[4]。二大政党制に入れられたのはアメリカ、イギリスなどである。穏健な多党制に入れられたのはベネルクス三国などである。これらの政党制における特徴は、イデオロギーの差異が小さいことである。

サルトーリの念頭にあったのは、デュベルジェに対する批判ではなく、その拡張である。デュベルジェは二党制が効率的な民主主義であると結論づけたものの、サルトーリは穏健な多党制も効率的な民主主義であると結論づけた。

様々な修正を受けながらも、この分析は最も大きな影響力を持つものとして政治学者の間で広く受け入れられている[5]

無党制

一党独裁制

一党制

ヘゲモニー政党制


複数政党制

一党優位政党制

一大政党制


二大ブロック制

二大政党制


穏健な多党制

三大政党制

北欧五党制


分極的多党制

原子化政党制 - 無数に政党が存在するものの、他党に影響力のある政党が一つも存在せず、すべての政党がめぼしい実績や大衆からの支持を持たない。また、この政党制では、政党自体が大衆政党のように高度な組織化がされておらず(すべての政党が名望家政党ミニ政党に等しい)、なおかつ選挙政局によって離合集散を繰り返す流動的・便宜的な組織である。


レイプハルト

反論したのはレイプハルトである。レイプハルトは政治制を取り扱ったものの、政党制が理論の核とも言える重要性を持つ。

レイプハルトは有効議会政党数を手がかりに、2党制、2.5党制、優位政党のある多党制、優位政党のない多党制とに分類した。その上で2党制と2.5党制とを多数決型民主主義またはウェストミンスター・システム・モデルとし、優位政党のある多党制と優位政党のない多党制とを合意形成型民主主義またはコンセンサス・システム・モデルとした[6]。サルトーリによる分析との関連性は以下の通りである。

多数決型民主主義

二大ブロック制


合意形成型民主主義

一党優位政党制

穏健な多党制

分極的多党制

原子化政党制

そして、レイプハルトは多くの面において多数決型民主主義より合意形成型民主主義が優れているという分析を36か国の検証により提唱した。マイノリティの代表性における度合いでは高いことに加えて、経済的業績では両者に有意な差がないことを主張している。サルトーリはレイプハルトに「全く付いてゆけない」と再反論している。
議論

無党制は政党活動が禁止されているか、事実上存在しない間接民主主義である。前者は1986年から2005年までのウガンダであり[注釈 1]、後者はミクロネシアである[注釈 2]。全議員が無所属という形となる。

一党独裁制、一党制、ヘゲモニー政党制は独裁政治である。一党独裁制はナチス・ドイツなどである。一党制はソビエトなどである。ヘゲモニー政党制は東ドイツなどである。

複数政党制はロシアなどである。

一大政党制はラジーヴ・ガンディーの時代におけるインドなどである[7][8]

三大政党制は西ドイツなどである[9]

北欧五党制はスカンディナヴィア三国などである。有効議会政党数は五党という形となる[10]

原子化政党制はマレーシア[注釈 3]などである。混乱期や政治体制の移行期、いわゆる「上からの民主化」が成された国家などに多くみられるとされる。マレーシアの他に、クライアンテリズム[注釈 4](恩顧主義)の影響力が強く政党の組織力[注釈 5]が弱いフィリピン、王権の強い立憲君主制のタイなどが原子化政党制に近いとされるが、相違点もある。

サルトーリはフランス第五共和政における二回投票制が優れた選挙制度であるという結論を著述している。

フランス第五共和政のフランスは二大政党制と穏健な多党制の中間的な政党制となる二大ブロック制または二ブロック的多党制である[11]。二つの政党群が選挙によって競い合い、勝者となる政党群におけるリーダー格である政党の党首が首班指名を受けるのがサルトーリの想定である。

しかし、近年のフランスでは第三勢力の国民連合が台頭してきているほか、イギリスやカナダでも伝統的なトーリー党ホイッグ党レイバー党が併存している状況となっているため、想定外の事態になっていると言えなくもない[12]1993年以降のイタリアにおける状況の方が想定に近いものの、小選挙区制と比例代表制が混在している選挙制度には批判もある。なお、サルトーリは母国のイタリアで選挙制度改革による分極的多党制の解消と二大政党制の実現を目指している。

日本政治家も政党制のあり方に対する支持・不支持を表明している。国民民主党は二大政党制を推奨しており[13]社会民主党は穏健な多党制を推奨している[14]

冷戦の終了とグローバル化情報化の進展は影響を与えつつある[15]
日本
憲法制定前および明治憲法下


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