口腔、咽頭、腸管の常在菌であることから、放線菌症と呼ばれる慢性の化膿性肉芽疾患を発症することがある[12]。
ヒトでの好発部位は頸部、顔面、副鼻腔[13]で全体の半数を占めるとされる[14]が、舌[14]、肺[15]、腹部(腸管[16])では急性虫垂炎、消化性潰瘍、腸憩室穿孔に併発することもある[17][18]。しかし、抗生物質の乱用から発症頻度は減少し、典型的な臨床症状を呈さない症例が増加していると指摘されている[19]。
ヒトに対し病原性を及ぼす嫌気性放線菌は少なくとも Actiomyces (以下A.と略す)israelii, A. naeslundii, A. viscosus, A. odontolyticus, Arachnia propionica (→ Pseudopropionibacterium propionicum に再分類されている)の5種類とされる。特に病原菌として問題となるのものは アクチノマイセス属の A. israelii である。A. israelii は自然界からは分離されず、健康人の口腔、う蝕を生じている歯(う蝕)、歯垢、扁桃窩等に常在細菌叢として生息している。放線菌活性化の要因として、免疫力低下、他の菌による感染症、抜歯、顎骨骨折、外傷[20]などがあげられる[12]、誤嚥された魚骨片が原因となる事も有る[17]。
確定診断は培養により細菌学的な証明によって行われるが、嫌気性で有るため検出が難しく、且つ既に別の疾患や外科手術で抗生物質を使用している場合は検出が困難な場合があるが、病理組織学的検査(顕微鏡検査)により確定が可能である[12]。
治療は、ペニシリン系抗生物質が多く使用されるが、セファロスポリンなどのセフェム系抗生物質、マクロライド系抗生物質、カルバペネム系抗生物質[21]、ニューキノロン系抗生物質も使用される[12]。