放射線
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粒子放射線と物質との相互作用

物質との相互作用を考える上で粒子放射線は電子からなる放射線[注釈 15]中性子線及び重荷電粒子放射線[注釈 16]の3つに分類される[6]
電子からなる放射線と物質との相互作用
電子からなる放射線が物質を通過中に起こす相互作用としては、電離励起制動放射散乱がある[注釈 17]なお、一定の条件の下に、電磁放射線や電子が大きい原子番号の物質に放射線が入射するとカスケードシャワー[注釈 18]と呼ばれる現象が発生する[8]
中性子と物質との相互作用
中性子は電荷を持っていないということが最大の特徴である。中性子線と物質との相互作用はただ原子核との衝突のみである[注釈 19][注釈 20]。さらに、衝突は散乱(弾性散乱、非弾性散乱)と吸収反応(中性子捕獲核分裂反応、中性子放出反応、荷電粒子放出反応など)に分類される[10]。「核分裂反応」および「中性子捕獲」も参照
重荷電粒子放射線と物質との相互作用
重荷電粒子放射線と物質との相互作用は主に電離励起である[注釈 21]。ほか重荷電粒子が低速であるとき原子核との弾性衝突、および相当高いエネルギーを持つとき制動放射が発生する[注釈 22][注釈 23]
放射線の線量概念

放射線の線量概念はその測定したいものに応じて様々存在している。詳細は各線量概念の項目参照。放射能の強度については、放射能#放射性崩壊の速さとしての放射能 (activity) とその単位を参照。

用語意味単位
吸収線量[注釈 24]放射線によって物質が得たエネルギーを表す尺度Gy(グレイ)[注釈 25]
等価線量人体の各臓器に対して定義される、放射線の影響を表す尺度Sv(シーベルト)[注釈 26]
実効線量個人の体全体に対して定義される、放射線の影響を表す尺度Sv(シーベルト)
照射線量照射された放射線の総量を表す尺度R(レントゲン)[注釈 27][注釈 28]

放射線の検出・測定「粒子検出器」も参照

放射線は肉眼にも見えず熱くもないので、検知するために特別な測定器具を用いる。測定したい線種と目的に応じて適切な器具を選ばなければならない[11]
放射線検出器に用いられる反応

放射線は物質と相互作用するが、そのうちの一部及びそれらから誘発される二次的な現象は放射線検出器の原理として利用されている[12][注釈 29]
電離 (ionize)
放射線と物質との相互作用によって原子は電離される。このとき放出された電子と陽イオンとでイオン対が生成されることになるが、これらを電気的に集めて入射した放射線(電離をもたらした放射線)を検出することができる。電離反応を利用した検出器としては、比例計数管ガイガー=ミュラー計数管半導体検出器電離箱霧箱泡箱、放電箱などがある。
励起 (electrical excitation)
放射線によって励起された原子や分子が、その後に発光することがある。発光する物質をシンチレータ (scintillator) と呼ぶ。この発光現象を利用して放射線を検出器の原理とするものをシンチレーション検出器と呼ぶ。
その他の現象を利用したもの

化学反応:放射線により誘発された化学反応や写真作用を検出器の原理としているものもある。フィルムバッジなど

放射線損傷 :放射線によって、物質の結晶に格子欠陥が生じたり、物質の材料科学的な物性値が変化したりすることを放射線損傷を受けたという。放射線損傷を利用した検出器としては固体飛跡検出器と呼ばれるものがある。

チェレンコフ放射:チェレンコフ検出器

用途に応じた測定方法
環境にある放射線の測定


数日から数ヶ月の積算線量の測定:
写真乳剤、ガラス線量計、熱ルミネッセンス線量計

原子力施設や放射線利用施設の中の作業環境における線量測定:サーベイメーター

個人線量の測定


個人の外部被曝線量を計測する:フィルムバッジ熱ルミネッセンス線量計

個人の内部被曝線量を計測する:ホールボディカウンター

放射線障害とその防護

人体が放射線にさらされることを被曝と言う。被曝は、放射線を身体に外部から浴びる外部被曝と、体内に放射性物質を取り込んだことによる被曝である内部被曝に分類される。詳細は「被曝」を参照

放射線は生物にとって有害であり[4]、浴びた放射線の線量に応じて何らかの障害、放射線障害が現れる。放射線障害は大まかに線量に応じて確率的影響 (stochastic effects) と確定的影響 (deterministic effects) に分類される[注釈 30]。詳細は「放射線障害」を参照

放射線障害の歴史は概ねレントゲンによる X線の発見(1895年(明治28年 ))から始まるが、放射線の防護については1940年(昭和15年)ごろの原爆開発から保健物理という名称で調査・研究されている。詳細は「保健物理学」を参照

国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告では、「事故などによる一般公衆の被曝量[注釈 31]は、年間 1 mSv(ミリシーベルト)を超えないように」とされた(1990年(平成2年)勧告による)[14]。(なお、放射線を扱う作業者については諸事情を考慮して)、5年間で 100 mSv を超えてはならないとされた[14]。2007年(平成19年)の勧告では、これに追加する形で、個人が直接利益を受ける状況では1から20 mSv 以下とし、事故発生時等の被曝低減対策が崩壊している状況下では20から 100 mSv 以下とした[15]

内部被曝防止は気密性の高い衣服、空気中の微粒子を取り除くフィルター、放射能汚染された水・食品の飲食を避けることによって防護される。詳細は「放射線防護服」を参照

外部被曝は中性子線の場合水やパラフィンなど水素を含むもの(重水素はより有効)、ガンマ線やX線など高エネルギーの光子は鉛など原子番号の大きい元素で防ぐのが有効である。

原子番号の大きさが重要であり重ければいい訳ではない[16]。100keVのX線の場合、の14倍も質量減衰係数が高い。ただ1MeV以上の高エネルギーガンマ線では原子番号が大きくても大して遮蔽能力は変わらない[17]

背後二次放射線にも気をつけなければならない。反射した二次放射線が再度患者や同席する人間の身体を貫くこともある。背後二次線についてはむしろ鉄の方が抑制できる[16]

このため鉛を鉄でサンドイッチする、表面を塗装するなどの工夫をすると鉛単体で用いるより良い。詳細は「質量減衰係数#X線とガンマ線」を参照

α線やβ線は放射線は紙やアルミ板など薄い、軽い物質でも容易に遮蔽できる。ただしガンマ線などの二次放射線が生じることもある事に注意。
放射線の利用

農業や工業の領域においては、放射線の性質(1.透過する性質、2.生物学的作用、3.化学的作用、4.電離・励起作用など)を上手に利用した様々な技術や製品などがある。以下、各性質ごとに利用例を示す[注釈 32]
1. 透過する性質
X線撮影非破壊検査


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