放射線
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電磁放射線 (electromagnetic radiation)

主な電磁放射線:ガンマ線(γ線)X線電磁放射線は波長が非常に短い電磁波である[注釈 9]。公衆被曝で問題となるのは、この波長が極めて短いことで高い透過性をもった電磁放射線である[注釈 10][注釈 11]
粒子放射線 (particle radiation)

主な粒子放射線:アルファ線(α線)ベータ線(β線)電子線[注釈 12]陽子線中性子線重粒子線など粒子放射線は質量を持った粒子の運動によって生じるものである。その物理的実体としては、原子を構成している素粒子や原子核そのものであったりする[注釈 13][注釈 14]
各放射線と物質との相互作用電離放射線と物質との相互作用を表した図 (記号の意味は、―;粒子線、?;電磁波、○;電離作用)。上からアルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線と物質との相互作用を表している。 荷電粒子線(ここではアルファ線、ベータ線)が物質に衝突すると電離が起こるが貫通力は小さい。アルファ線は放出したほうの核も運動エネルギーを持ち、反跳・リコイルなどと呼ばれる。ベータ線が電離させた電子もまた電離作用を有するがこれをデルタ線 (放射線)という。更にベータ線は減速に伴って制動放射が起こる。一方、X線・ガンマ線や中性子線は電荷を持たないため、直接は電離作用をせず、間接的な電離作用も荷電粒子線に比べ小さいが、貫通力は大きい。中性子は水素などの軽元素と衝突すると反跳陽子(図中の赤丸)を生じ、この陽子が電離作用を持つ。非弾性散乱では衝突しただけでガンマ線を発生させる。また中性子捕獲が起きた場合にもガンマ線が放出される。

放射線は物質にエネルギーを与えるが、放射線の種類によってエネルギーを与える相互作用の仕組みは異なる。電磁放射線か粒子放射線か、粒子放射線の場合、電荷の有無や質量の大きさによってもエネルギーを与える機構は異なる。

放射線の検出には主に電離・励起現象が利用されるが、その他の放射線を原因として発生する二次的な現象を利用しているものもある。放射線検出に用いられる反応については「#放射線検出器に用いられる反応」を参照
電磁放射線と物質との相互作用

電磁放射線(ガンマ線、X 線)と物質との相互作用としては光電効果コンプトン散乱電子対生成レイリー(コヒーレント)散乱光核反応の5つである。とりわけ最初の3つの相互作用が特に重要である[5]。「光電効果」、「コンプトン散乱」、および「電子対生成」も参照
粒子放射線と物質との相互作用

物質との相互作用を考える上で粒子放射線は電子からなる放射線[注釈 15]中性子線及び重荷電粒子放射線[注釈 16]の3つに分類される[6]
電子からなる放射線と物質との相互作用
電子からなる放射線が物質を通過中に起こす相互作用としては、電離励起制動放射散乱がある[注釈 17]なお、一定の条件の下に、電磁放射線や電子が大きい原子番号の物質に放射線が入射するとカスケードシャワー[注釈 18]と呼ばれる現象が発生する[8]
中性子と物質との相互作用
中性子は電荷を持っていないということが最大の特徴である。中性子線と物質との相互作用はただ原子核との衝突のみである[注釈 19][注釈 20]。さらに、衝突は散乱(弾性散乱、非弾性散乱)と吸収反応(中性子捕獲核分裂反応、中性子放出反応、荷電粒子放出反応など)に分類される[10]。「核分裂反応」および「中性子捕獲」も参照
重荷電粒子放射線と物質との相互作用
重荷電粒子放射線と物質との相互作用は主に電離励起である[注釈 21]。ほか重荷電粒子が低速であるとき原子核との弾性衝突、および相当高いエネルギーを持つとき制動放射が発生する[注釈 22][注釈 23]
放射線の線量概念

放射線の線量概念はその測定したいものに応じて様々存在している。詳細は各線量概念の項目参照。放射能の強度については、放射能#放射性崩壊の速さとしての放射能 (activity) とその単位を参照。

用語意味単位
吸収線量[注釈 24]放射線によって物質が得たエネルギーを表す尺度Gy(グレイ)[注釈 25]
等価線量人体の各臓器に対して定義される、放射線の影響を表す尺度Sv(シーベルト)[注釈 26]
実効線量個人の体全体に対して定義される、放射線の影響を表す尺度Sv(シーベルト)
照射線量照射された放射線の総量を表す尺度R(レントゲン)[注釈 27][注釈 28]

放射線の検出・測定「粒子検出器」も参照

放射線は肉眼にも見えず熱くもないので、検知するために特別な測定器具を用いる。測定したい線種と目的に応じて適切な器具を選ばなければならない[11]
放射線検出器に用いられる反応

放射線は物質と相互作用するが、そのうちの一部及びそれらから誘発される二次的な現象は放射線検出器の原理として利用されている[12][注釈 29]
電離 (ionize)
放射線と物質との相互作用によって原子は電離される。このとき放出された電子と陽イオンとでイオン対が生成されることになるが、これらを電気的に集めて入射した放射線(電離をもたらした放射線)を検出することができる。電離反応を利用した検出器としては、比例計数管ガイガー=ミュラー計数管半導体検出器電離箱霧箱泡箱、放電箱などがある。
励起 (electrical excitation)
放射線によって励起された原子や分子が、その後に発光することがある。発光する物質をシンチレータ (scintillator) と呼ぶ。この発光現象を利用して放射線を検出器の原理とするものをシンチレーション検出器と呼ぶ。
その他の現象を利用したもの

化学反応:放射線により誘発された化学反応や写真作用を検出器の原理としているものもある。フィルムバッジなど

放射線損傷 :放射線によって、物質の結晶に格子欠陥が生じたり、物質の材料科学的な物性値が変化したりすることを放射線損傷を受けたという。放射線損傷を利用した検出器としては固体飛跡検出器と呼ばれるものがある。

チェレンコフ放射:チェレンコフ検出器

用途に応じた測定方法
環境にある放射線の測定


数日から数ヶ月の積算線量の測定:
写真乳剤、ガラス線量計、熱ルミネッセンス線量計

原子力施設や放射線利用施設の中の作業環境における線量測定:サーベイメーター

個人線量の測定


個人の外部被曝線量を計測する:フィルムバッジ熱ルミネッセンス線量計

個人の内部被曝線量を計測する:ホールボディカウンター

放射線障害とその防護

人体が放射線にさらされることを被曝と言う。被曝は、放射線を身体に外部から浴びる外部被曝と、体内に放射性物質を取り込んだことによる被曝である内部被曝に分類される。


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