放射線障害
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

^ ガンマ線・X線のコンプトン効果によりはじき出された電子と周りの水分子との反応などによって生成された超酸化物やOH(ヒドロキシラジカル)のような活性種(水和ラジカル、Hラジカル、過酸化水素)が問題であり、これらがDNAと化学反応することで損傷を引き起こすとされる[5][6]
^ 低いエネルギーの放射線の場合、直接作用が発生する頻度は少ない。
^ 影響自体は鎖の切断以外にも
塩基の損傷(塩基:DNA情報を構成するA:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン)

塩基のポリヌクレオチドからの遊離(DNAはヌクレオチドとそれに結合するATGC塩基からなる)

架橋形成(DNA鎖間架橋、DNA鎖内架橋、DNA-蛋白間架橋)
がある[7]
^ DNAは遺伝子の媒体であるため、DNA鎖の損傷は、遺伝情報の損傷と同義である。
^ 以前は、放射線の影響はそのまま蓄積されるとされていた。
^ 線量率効果が顕著にみられるのは低LET放射線(エックス線やガンマ線)による生物効果であり、これは低線量率の場合は放射線による細胞の障害が照射中に回復するからと考えられている。一方、高LET放射線(中性子線、アルファ線など)では低LET放射線のような回復は生じず、線量率効果はみとめられない[10]。また、稀に高線量率より低線量率の方が効果が大きくなる場合もあり、これを逆線量率効果と呼ぶ[11]
^ ただし、線量率効果については現在でも十分に解明されていないため、放射線防護の立場からは、急性被曝の場合でも慢性被曝の場合でも、線量当量が同じならば放射線被曝によって受ける人体の影響は同じであると見なされる[12]
^ 閾線量の存在しない直線関係(linear no threshold:LNT)仮説。閾線量が存在しないという仮定のもとでは、ガン及び遺伝的影響はどんな低い線量の被曝の場合でも発生する可能性があることになる。それに対して閾線量が存在する確定的影響は、人々の被曝線量をその閾線量以下に抑えることで障害を完全に防止できる[14]
^ なお、まず、東京電力福島第一原発事故の影響で公衆が受ける被曝としては、確定的影響(急性の放射線障害)のしきい線量を超える被ばく線量は確認されていない。そのため、まず事故による放射線障害として確定的影響に分類されるものについては考慮する必要はない[18]
^ なお、その障害発生の仕方から確定的影響は確率的影響と独立ではない。確定的影響から回復したとしても、確率的影響のリスクは抱えることになる。
^ 影響の発生する最低の線量である閾線量は、人での生涯事例を元に放射線を受けた人々の1-5%に影響が出る線量として定められている[19]
^ 特徴として、身体的影響は被曝時の年齢に関係なく発生する可能性があるが、遺伝的影響は生殖能力をもっているかまたは今後持つ人々(子供)が被曝したときでないと発生しない。
^ 被曝後に速やかに生じ、因果関係も明確である早発性障害とは異なり、晩発性障害は、長期間経過したあとの発癌など(被曝と関係なくとも一定頻度で生じうる)であるため、その因果関係を示すには統計的、疫学的な取り扱いを要する。
^ 一つあるいは複数の細胞が、なんらかの要因により変化し、無制限に増殖能力を獲得したものをガン(cancer;癌)または悪性腫瘍(malignant neoplasm)と呼ぶ。そのメカニズムから白血病も含まれる。
^ 広島・長崎の原爆被害者を対象に放射線影響研究所で行われている寿命調査(LSS:Life Span Study)のデータがこの種の疫学調査で最大のものであり、ICRPもこのデータを基本に計算している[20][21]
^ 放射線誘発ガンについて以下のような特徴が判明している[22]

放射線誘発ガンには長い潜伏期間(latency)がある(白血病:2-40年、その他のガン:10年-生涯)

放射線被曝によってガンの発生率が増加する

ガンの発生率は線量の増加に比例して増加する

被曝時年齢が若いほど、生涯のガン発生率が高い

放射線被曝によるガンの誘発率は女性の方が高い

^ 長期的・慢性的に年 100mSv を被曝した結果ではない。放射線影響研究所の資料によれば原爆被曝者の受けた被爆線量は、爆発時における外部被曝のみで算定している[24][9](線量率効果と呼ばれる効果も紹介されている)。
^ ちなみに、日本人の生涯ガン死亡リスクは約20%である(2009年データより)[25]。放射線誘発ガンのリスクのモデルなど細かい考え方については草間(2005)[26]を参照。
^ 生涯ガン死亡リスクではなく、発ガンのリスクとしては野菜摂取量が非常に少ないことに起因するガンのリスクの増加(1.06倍)よりやや高い程度(1.08倍)である[27][28]
^ 細胞の放射線に対する感受性は、活発に分裂している細胞ほど高くなり、造血器などの細胞再生系が最も影響を受けやすくなる。
^ 眼の水晶体への閾値を超えた被曝は放射線白内障(水晶体混濁)を引き起こすとされる。放射線白内障(radiation-induced cataract)は、放射線被曝による水晶体上皮細胞(LEC)のプログラム細胞死と、これに引き続く線維化によって生じる。0.5?1.5Gyの被曝で水晶体混濁(opacity)が認められ、5Gy以上の被曝で、視力障害を伴う白内障(cataract)となる。混濁は後極後嚢下に現れる[29][30]
^ これら臓器に対する放射線障害を防ぐため法令においていくつかの臓器に対する等価線量限度が定められている。たとえば、電離放射線障害防止規則(第5条・第6条)[31]など。
^ 1Gy(グレイ)以上被曝すると、一部の人に悪心、嘔吐、全身倦怠などの二日酔いに似た放射線宿酔という症状が現れる。1.5Gy以上の被曝では、最も感受性の高い造血細胞が影響を受け、白血球血小板の供給が途絶える。これにより出血が増加すると共に免疫力が低下し、重症の場合は30-60日程度で死亡する。皮膚は上皮基底細胞の感受性が高く、3Gy以上で脱毛や一時的紅斑、7-8Gyで水泡形成、10Gy以上で潰瘍がみられる。5Gy以上被曝すると小腸内の幹細胞が死滅し、吸収細胞の供給が途絶する。このため、吸収力低下による下痢細菌感染が発生し、重症の場合は20日以内に死亡する。15Gy以上の非常に高い線量の被曝では、中枢神経に影響が現れ、意識障害、ショック症状を伴うようになる。中枢神経への影響の発現は早く、ほとんどの被曝者が5日以内に死亡する。
^ 身体的影響とは異なり、遺伝的影響は次世代以降に発現する可能性のある影響であり、ガンに比べてさらに長い期間に渡った十分にコントロールされた調査が必要となる。人でこのような調査を実施することは不可能に近いと言われる[33]
^ なお、長期的な研究体制については、原子力白書[34]を参照。
^ ただし、放射線防護上はガン同様に、閾線量の存在しない直線関係仮説(LNT仮説)が取られる[33]
^ これは時期特異性(stage difference)と呼ばれる。ただし、時期特異性は、成長・発育している胎児の特徴であるので、放射線に限らず様々な薬剤などの科学的要因、ウイルスなどの生物学的要因に暴露した場合も同様に適用される[38]
^ このため、妊娠中の女子については腹部の被曝および放射性物質の摂取による内部被曝についてより厳しい防護基準が適用されている。例えば、電離放射線障害防止規則第6条[39]
^ 受精から8週間までは、受精卵は活発に細胞分裂しながら胎児の体を構成するさまざまな臓器に分化していくので、この時期が放射線に対する感受性が高い。この時期に100ミリシーベルト以上の被曝をすると、奇形発生、精神発達遅延が確定的に生じることが知られている[40]
^ これらの時期は、胎児の神経系が急激に発達する時期であるので、被曝によって神経細胞がプログラム細胞死を来すことによって障害を来すものと考えられている。
次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:78 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef