放射性廃棄物
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高レベル放射性廃棄物:使用済み核燃料の再処理における溶解に使った硝酸を主とする廃液及びその固化体をいう。TRU廃棄物:MOX燃料加工や使用済み核燃料再処理の運転・保守の結果発生する超ウラン元素(TRU)で汚染された廃棄物をいう[31]。研究所等廃棄物:発電所ではなく、大学や研究機関の研究開発活動において核燃料物質で汚染された廃棄物をいう。

このうち、人の健康に重大な影響を及ぼすおそれがある高レベル放射性廃棄物と極めて長寿命核種からなるTRU廃棄物は、深い地層への地層処分(第一種廃棄物埋設)が計画されている。ほか、発電所廃棄物については、それらの物性により三段階の地表近くの処分がされることとなっている[32]
第二種廃棄物埋設:低レベル放射性廃棄物の処分方法

低レベル放射性廃棄物の処分(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二種廃棄物埋設)には余裕深度処分、浅地中ピット処分、浅地中トレンチ処分の三つの処分方法がある[33]。トレンチ処分を除く処分はいずれも遮断型処分ではあるが、人工構造物(人工バリア)による完全な放射能の遮断を管理期間中継続させることは困難である。放射能の漏洩による影響を最小限にするために場所(地質・地層、水脈など)および地中深度などが考慮され処分基準となっている。
余裕深度処分

一般的であるとされる土地利用(住居などの建設)や地下利用(地上の構造物を支持する基盤の設置、地下鉄、上下水道、共同溝や地下室としての利用など)に対して十分に余裕を持った深度(地下50?100メートル程度)に、コンクリートでトンネル型やサイロ型の人工構築物を作り、廃棄物を埋設する方法を ⇒余裕深度処分と呼ぶ。 ⇒シュラウド[34]、チャンネルボックス[35]、使用済み制御棒など主に原子炉の廃止措置に伴って発生する放射能レベルが比較的高いものが対象となる[36]。管理期間は数百年。処分・管理方法等については調査中である。

日本原燃六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにて次の三号施設として調査中。
浅地中ピット処分

浅い地中(地下約10メートル)にコンクリートピットなどの人工構築物を設置し廃棄物を搬入後、その構築物ごと埋設する方法を ⇒浅地中ピット処分と呼ぶ。濃縮廃液や使用済みイオン交換樹脂、可燃物を焼却した焼却灰などをセメントなどでドラム缶に固形化したものなど、主に原子力発電所から排出される放射能レベルの比較的低いものが対象となる[37]。埋設後の管理期間は300?400年が一つの目安とされている。

日本原燃六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで一号・二号施設が1992年より稼働している。
浅地中トレンチ処分

浅い地中に素掘りの溝、つまりトレンチ(trench)を掘り、そこにそのまま(人工構築物は設けない)廃棄物を定置することにより埋設処分を行う方法(いわゆる単純な埋め立て)を ⇒浅地中トレンチ処分と呼ぶ。コンクリートや金属など、化学的、物理的に安定な性質の廃棄物のうち[38]放射能レベルの極めて低い極低レベル放射性廃棄物が対象である[39]。50年程度の管理期間を経たのち、一般的な土地利用が可能になる[40]

動力試験炉(JPDR)の解体に伴って発生した廃棄物を処分するために、日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター原子力科学研究所・廃棄物埋設施設にて1995年より試験的に実施されている。
第一種廃棄物埋設:高レベル放射性廃棄物等の処分方法

核燃料廃棄物の内、高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物は地層処分(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、昭和三十二年法律第百六十六号)されることとなっている。特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づき原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施主体となって処分する。詳細は「地層処分」、「高レベル放射性廃棄物」、および「TRU廃棄物」を参照

なお、高レベル放射性廃棄物の処分については様々な方法が検討された[41]海洋投棄(かつて各国で実施されたが1993年に全面禁止)、地上施設による長期保管(未実施、ただし一時的な中間貯蔵施設は除く)、氷床処分(禁止)、宇宙処分(大気圏外にロケットで打ち上げ太陽系の引力圏外に放出する、もしくは太陽の重力に引き寄せさせる方法。かつて米が検討したがコストと不確実性から不採用)、地中直接注入(米、ソが実施)[42]などが検討され、このうち海洋投棄と地中直接注入処分は実施された[43]。21世紀初頭においては地中埋設処分が各国で採用されている。
RI廃棄物の処理・処分(研究施設等廃棄物の処理・処分)

原子力施設や核兵器関連施設以外にも、原子力の研究施設や大学、医療分野や民間産業分野、農業分野などでも放射性物質を使用する場合があるので、放射性廃棄物は発生する。

RI廃棄物に含まれる代表的な放射性核種は、研究RI廃棄物としては 3H、14C、32P、35S などであり、医療RI廃棄物としては、99mTc、125I、201Tl などである。RI廃棄物(研究RI廃棄物および医療RI廃棄物)の大部分はRI協会が集荷し貯蔵している[44]。RI廃棄物等の処分については、2008年に処分実施主体が日本原子力研究開発機構に決まり、法律も改正されることとなった[45]
放射性物質汚染対処特措法に規定される特定廃棄物等の処理・処分

東京電力福島第一原子力発電所の事故により大気中に放出された放射性物質による環境の汚染が生じることとなった。これによる人の健康または生活環境に及ぼす影響を速やかに低減するため、平成23年8月30日にいわゆる放射性物質汚染対処特措法が公布された(平成24年1月1日に全面施行)[46]

この特措法に基づき、環境大臣が指定を行う、事故由来放射性物質による汚染状態が8,000 Bq/kg を超える廃棄物は指定廃棄物と呼ばれる。その処理にあたっての環境への影響については、1都15県のごみ焼却施設についてデータを収集・分析したりなどした上で、国立環境研究所[47]によって確認されている[48]
原子炉のメンテナンスについて

政治評論家の竹田恒泰は、自ら主宰する動画チャンネルにおいて、「1年に一度原子炉を停止して人力で原子炉の中を清掃する。横浜寿町の路上生活者を日給5万円で寝汗が出る危険な状態まで働かせている」と述べている[49]
脚注[脚注の使い方]^ 長崎・中山(2011) p.4
^ 原子力発電所および核燃料製造施設、核兵器関連施設などから排出される
^ 病院の検査部門から出るガンマ線源の廃棄などで排出される。
^ 放射性廃棄物を含め、放射性物質はある程度の時間(半減期)が経過すると放射能が弱くなり、やがては大部分が安定した物質に変化する性質を持つ。半減期と単位時間当たりの放射線量は反比例し、半減期の長い物質は単位時間当たりの放射線量は少ない。半減期は放射性核種により異なる。
放射性物質の中には、半減期が極めて長いものも存在する。放射性物質の量は半減期を経過すると元の半分になるが、残った放射性物質がさらに半分(つまり元の1/4)になるのにも、同じだけの期間が掛かる。たとえば、半減期が約12年であるトリチウムの場合、24年後に崩壊が終わり消失するわけではない。12年後に元の量の50%、24年後に25%、36年後に12.5%…と量が減り限りなくゼロに近づくのみで、同時にトリチウムが崩壊してできる安定同位体、ヘリウム3が生成されていく。ウラン等の原子番号の大きい物質は、崩壊後の物質も放射性物質(娘核種)になるため、含まれる全ての放射性元素が崩壊を終え、鉛などの安定同位体に落ち着くまでは、非常に長い期間を要するものもある。


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