支那
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仏典の漢訳には中国人僧だけでなく、シルクロード諸国やインド出身の僧も多数、参加していたため、「支那」の考案者が中国人とは限らない[4]

7世紀玄奘の時代には仏教関係の書物で中国を賞賛する意味合いで使われていたと考えられるが、18世紀頃にはすでに中国で「支那」という表現が一般に使われることはなくなっていた[5]
日本における使用の歴史1900年(明治33年)に中国大陸に設置された日本の郵便局で使用するために発行された、菊花紋章のある5銭普通切手(切手下側に赤文字で右から左に横書きで支那と印刷。支那の「支」の上からNの印が押されている)

日本において、「支那」の言葉が入ったのは、隋と同様に漢訳仏典を通じてであった。平安時代の高僧空海の詩文集「性霊集」に「支那」が用いられた例[6]が確認できる。京都東福寺蔵の重要文化財にも「支那禅刹図式」(南宋作)がある。鎌倉時代には虎関師錬の元亨釈書・王臣伝論に「彼の支那は葱嶺の東」と見える。室町時代の僧万里集九の「山谷先生を祭る文」にも見える[7]江戸時代初期の卍元師蛮『本朝高僧伝』巻一「釈福亮伝」には「支那に入って嘉祥師に謁し」とある。更に江戸時代初期には世界の中にこの地域を位置づける場合に「支那」の呼称が用いられた例を見ることが出来る。江戸初期『西洋紀聞』はキリスト教が禁止されていた日本に布教目的で潜入して捕らえられたイタリア人ジョヴァンニ・バッティスタ・シドッチに対して新井白石が行った尋問の記録であるが、シドッチの日本上陸(1708年宝永5年))および翌年の尋問を1725年享保10年)頃までに完成させたものであり、その中ではアジアアメリカヨーロッパなどと並べて「支那」の記述が発見できる[8]。江戸中期の富永仲基『出定後語』や[注釈 2]、江戸中期の僧大玄の『淨土頌義鈔探玄鈔』[9]や、僧覚深『摩多羅私考』や[注釈 3]佐藤信淵1823年文政6年)に著した『混同秘策』でも「支那」が用いられている。

江戸後期には「支那」と同じく梵語から取った「China」などの訳語としても定着した。幕末の洋学者佐藤元萇は六大陸と対比して支那を論じる[注釈 4]。幕末の英語辞書『増訂華英通語』の万延元年の福澤諭吉凡例では英語と中国語との対比で「支那」が使われている[10]。特に明治期以降、歴代の王朝名(例:漢、唐、清)とは別に、地域的呼称、通時代・王朝的汎称としての、この地域の名称を定めることが必要であるという考え方が一般的となり、従来「漢」「唐」などで称していたものを「支那」と言い換えることが行われた(例:「漢文学」→「支那文学」)。日本では、伝統的に黄河流域の国家に対し「唐、漢、唐土」の文字を用いて「とう、から、もろこし」等と読んできた[要検証ノート][要出典]。江戸時代以前に大陸を「中国」と呼んだ事例は見られない(幕末、「満洲夷」が自分自身を「中国」と呼んでいると紹介されることはあった[注釈 5])。

明治政府と国交を結んでからは、国号を「清国」、その国民を「清国人」と呼称した。学術分野では、伝統的には「漢」の文字を用いて「漢学」「漢文」等の呼称が用いられてきたが、明治中葉より、漢人の国家やその文化に対して「支那」が用いられるようになった。ただし、「漢人」「漢民族」の定義は不確定であり、学術的に確定しているわけではなかった。[要検証ノート][要出典]

大日本帝国(日本)は1876年(明治9年)以降、清に大日本帝国の郵便網を整備し郵便局(在中国郵便局)を設置した。これは欧米列強と同様に、清で近代的郵便制度が未整備であった為であるが、19世紀末に清国政府による大清郵政が創業してからも存続していた。当初は大日本帝国と同様に日本切手を現地通貨で販売していたが、価値の低い清国通貨で購入した切手を日本列島に送る投機が行われるようになった。そのため1900年(明治33年)以降は大日本帝国で使えなくするため加刷切手に切り替えた。この時の加刷切手に地域名として「支那」を用いている。これは欧米列強が中国で発行した切手が、国号の"Ch'ing"ではなく"China"(英米)を用いたのと同様であった。この切手もまた、大日本帝国では支那は国家名ではなく、地域名として用いられていたことを表している。[独自研究?][要出典]

当初「支那」は同様に歴然として辱めた意がなかった。中華民国成立以前の大日本帝国公文書においても、いくつか支那の使用例は存在する[3]。[要検証ノート]しかし佐藤三郎は、この時期の中国人がアヘン戦争の敗北や改革の遅れなどにより「惰弱・因循姑息・驕慢不遜・無能・不潔」といった印象を持たれており、同時期に普及した「支那」の語がそれに結びつけられるようになったと指摘し、実藤恵秀日清戦争後には、日本人の「支那」という言葉には軽蔑が交じっていたと指摘している[11]


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