摂食障害
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特定不能の摂食障害 (英: Eating disorder not otherwise specified)

吐き障害 (英: Purging disorder)

むちゃ食い障害 (英: Binge eating disorder): 過食をするが不適切な代償行為は行わない。摂食後に自己嫌悪、罪悪感、抑うつなどを呈する[17]

睡眠関連摂食障害

夜間摂食症候群 (英: Night eating syndrome)


選択的摂食障害

2013年に発表したDSM-5では、特定不能の摂食障害の一部にまとめられていた「むちゃ食い障害」が、新たに独立した病型となっている。神経性無食欲症では、診断基準の必須項目から無月経という条件がなくなり、神経性大食症の下位病型分類が無くなっている[18]
ICD-10

F50 摂食障害

F50.0
神経性無食欲症

F50.1 非定型神経性無食欲症

F50.2 神経性大食症

F50.3 非定型神経性大食症

F50.4 他の心理的障害と関連した過食

F50.5 他の心理的障害と関連した嘔吐

F50.8 他の摂食障害

F50.9 摂食障害、特定不能のもの[19]

疫学

摂食障害が日本で増加し始めたのは1970年代からであり、現代における有病率はアメリカやヨーロッパの先進国と同水準である[20]。有病率は女性が約9割と圧倒的に多く、男性は全体の5 - 10%程度である。工業先進国に極端に多く、発展途上国、旧共産諸国などにはほとんど見られない。日本では2 - 3%と言われているが、心療内科や精神科での治療に抵抗がある者が多く、未治療者も含めるとそれを大幅に上まわるとされる。2002年に行われた、中学・高校・大学生を対象とした大規模なある実態調査では、女子学生の50人に1人が拒食症、25人に1人が過食症、10人に1人がその予備軍であった。この10年間に拒食症は2倍、過食症は3倍に増加している[21]

思春期・青年期女性の有病率は拒食症が約0.1 - 0.2%、過食症が約1 - 3%であるとみられている。発症後は慢性に経過するか寛解と再発を繰り返すことが多い[22]。一般に中流以上の家庭、両親・または片方の親が高学歴など社会的地位の高い家庭の女子に多く見られる[23]。家庭は社会的には機能していても内情は不全のケースも多い。アメリカでは、摂食障害を持つ女性が100万人 - 500万人、男性が約100万人いると推定される。また年に5万人が摂食障害によって命を失っているという[24]。女子大生の4 - 5%が摂食障害だとされている。
病理学

これまでの研究により、摂食障害の患者にはある程度共通する家族特徴が見いだされている。子供時代は親の手のかからないよい子として過ごしており、経済的にも恵まれた、表面上は整った家庭に育っているなどである。しかしその背後には見えない病理が介在している。摂食障害は拒食と過食が主な症状であるが、相互に排他的な疾患ではないため、背景にある精神病理を把握することが求められる。
生成

病理的な親は自分の延長物として子どもを利用する。常に上を目指すよう励まし、人より優れることを期待する。期待に沿う限りにおいて子を甘やかし、賞賛するが、出来ないときには失望し、怒りを表出する。自身の自己愛によって子を振り回すのである。こうした期待の内実は親自身の欲望であり、子どもを自分の道具、所有物、飾るモノとして扱っているにすぎない。親の自己愛の照射を受けて養育された子どもは、期待に添う限りは賞賛され、愛されるが、一方では自分は無条件には愛されない(すなわち、本当には愛されない)という二重構造の中で生きる事となる[25]

そうした子どもは物を介して甘やかされていても、信頼と受容の関係という甘えを体験していない。輝く子どもであることを無意識に要求され続け、しかし際限のない親の欲望を満たすことができず、常に自己が無力化される機構が働いている。無力化される体験を浴び続けることで形成されるのは、深刻な欠損を抱えた空虚な自己である。自己不信を中核とした自己意識は常に悪性の抑うつを生み出し続ける。自分は無力で価値のない、無意味な存在であるという極度に価値下げされた自己像を抱える子どもは、自己不信が生みだす深刻な抑うつを防衛するために、鏡像で映したような、等価の価値のある自分を発展させて自己をバランスしようとする。甘えと愛を断念して手に入れたのは病理的自尊心であり、背後には茫漠たる自己不信が横たわっている[25][注 1]

内的価値は自分の存在が周囲から許され愛されており、無条件に自分という存在には価値があるという感覚があるときに成立する。自己の内的なものに自信がない彼らは、周囲の人からどう思われるかに敏感であり、常に他人と自分を比較しながら生きざるを得なくなる。輝く自分を実現するには、他人を蹴落してでも上位にならなければならない。外的価値は結果を出すことでしか得られず、必然的に対人関係は勝ち負けの世界となる。優越している自分は他者を見下す対象にし、転落した無能な自分は見下される対象になり、対等の人間関係を築くことが困難になる[25]

拒食症患者は例外なく「平凡恐怖」を抱えている[26]。自分の内的なものに自信がない彼らが社会で生きていくためには、誰もが目で見てわかるような外的価値を獲得するしかない。学歴、職業、地位、才能、ブランド、そして贅肉のないスリムな体型はその最たるものである。自分を信じることができない彼らは、他人を信じることができない[27]。自分を愛せないことは、他者を愛することを不能にする。それでもなんとか自分を愛するために、自己不信を克服しようとダイエットに依存するようになる。早期に自立を期待され、甘えを封印してきた彼らは、子ども時代を積み残したまま次の発達段階へと進んでいく。
拒食

神経性無食欲症が爆発的に増加したのは、1960年代から1970年代にかけてと言われる。1966年にはイギリス出身のモデルであるレズリー・ホーンビーがデビューし、ツイッギー(小枝)という愛称で親しまれた。「妖精」と謳われた華奢な体型の彼女は、ロンドンで行われた人気アンケートで年々順位を上げ、1976年には首位に立っている。社会の価値観はそれまでのグラマラスな女性像に代わり、スリムな女性を理想像として迎えた[28]。やせていることは克己心、禁欲、美しさ、高い精神性などの隠喩が込められており、今や「やせることは女性にとって価値があること」になった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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