揚陸艦
[Wikipedia|▼Menu]
また機雷敷設艦をAPとして改装する際にも斜路が設けられたが、こちらは舟艇というより水陸両用車のためのものと位置付けられた[18][注 2]

一方、イギリスが発明したLSDは、浮ドックに航洋性の自航装置を取り付けるという発想であった[19]。艦内に舟艇を搭載するという点では陸軍特殊船と同様だが、単なる格納庫ではなくウェルドックとしており、舟艇に人員・装備を搭載した状態で漲水することにより、極めて効率的で迅速な出撃が可能となる[16][19]。ただし舟艇の発進のためドック内の水深は最低2メートル程度は必要で、船体を沈める必要から、擱座着岸機能で使うものよりも更に大容量のバラストタンクやポンプが必要となり[16]、バラスト水は旧式のLPDでも6,000トン、大型のLHA・LHDでは12,000トンに達する[12]。一方、運用する舟艇をLCACに限る場合はドックの底面を海面と同じ高さにするだけでよく、漲水の必要がないためにバラストタンクやポンプの能力が低くてよいほか、ドック内の自由水が艦の安定性に悪影響を及ぼすこともないという利点がある[16]
航空運用機能イオー・ジマ」艦上のUH-34Dヘリコプターに搭乗する海兵隊員。

水陸両用作戦は陸空海の統合作戦として行うことが望ましく、日本の陸軍特殊船では飛行甲板の装着が求められたほか[20]、アメリカ海兵隊も兵員輸送艦(AP)への飛行甲板の装着を要望し[21]、海軍はLSTの一部に飛行甲板を設置して連絡機観測機の運用を試みた[22]

そしてヘリコプターが発達すると、舟艇と比べて搭載量が小さいというデメリットの一方、地形海況に制約されないうえに高速で長距離を移動できるという大きなメリットから、水陸両用作戦においてヘリボーン戦術は欠かせないものとなり、揚陸艦における航空運用機能の存在感は急激に増大した[10]。このため、擱座着岸機能や舟艇運用機能を重視した艦でも、ヘリコプター甲板は備えている艦が多く、格納庫を備えている艦も増えている[23]

特にLPH・LHA・LHDのように航空運用機能を重視した艦では、航空母艦と同様の全通飛行甲板が採用される[12][23]。一方で、カタパルトアレスティング・ギアのように航空母艦特有の特殊装置は設置されない[23]垂直/短距離離着陸機の運用のためにスキージャンプが設置される場合もあるが、これは揚陸そのものというよりは空母の補完的な運用を考慮したものとされる[23]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 揚陸艦としての性格を強調するため、1969年にはAPAは揚陸輸送艦(LPA)、AKAは貨物揚陸艦(LKA)へと類別変更された[8]
^ このため、艦種はAPではなく車両揚陸艦(LSV)に変更された[18]

出典^ a b 大内 2012, pp. 13?19.
^ 大内 2012, pp. 45?50.
^ a b 多田 2014.
^ a b c 大内 2012, pp. 97?105.
^ 大内 2012, pp. 106?117.
^ 阿部 2007, pp. 137?143.
^ a b 大内 2012, pp. 139?141.
^ a b Friedman 2002, p. 15.


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:48 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef