接吻
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ただし、性行為としてのキスは、昔からあった。文献に残る以前の太古の時代からキスはあったと推定されるようだが、はっきりと文献に現れる最も古い例として、『日本紀略』のなかで、昌泰元年(898年)に行われた鷹狩りの打ち上げの宴会の際に、酔った平好風が遊女の「懐を探り、その口を吮う」挙に出たと、紀長谷雄は記録している[2]。その40年後には、紀貫之が『土佐日記』の承平5年(935年)の段に「ただ押鮎の口をのみぞ吸ふ。この吸ふ人々の口を、押鮎もし思ふやうあらむや。(意訳:押鮎に心があったら、人々のキスをどう思うだろうか)」という一節を記している[2]

室町時代にはキスは「口吸い(くちすい)」と呼ばれていた。動詞としては「口吸う」という言葉があった。他に「口口」や、江戸後期には口2つで「呂」などと呼ばれた例もあるが、「口吸う」がもっとも古く、平安時代に遡る。郭言葉では「おさしみ」とも言い、これはそれが2人で刺身を食べる様に似ているからといわれる。九州地方では「あまくち」と言われた伝承があり、『ズーフ・ハルマ』の該当項目に訳語として挙げられている。

長らく日本では珍しい行為として扱われ、映画『また逢う日まで』(1950年)では間接キスにもかかわらず大きな話題になったほか、1949年に手塚治虫が子供漫画初のキスシーンを描いたときには抗議が殺到した[3]。時代が下るとともに、テレビ映画音楽などといった大衆文化、ならびに文学芸術の分野における取り扱いが増えていくとともに、特に恋人の関係にある者同士での「キス」がとりたてて珍しいものではなくなっていった。

20世紀末の日本では、周囲の目を気にすることなく、路上で行う若者も目立つようになっているとする論もあった[4]
若い世代におけるキス観と状況

日本性教育学会では1975年から「青少年の性行動全国調査」を実施しており、統計開始の1975年から第6回の2005年までは、キス経験率の低年齢化が増加の一途を辿っていた。しかし、2000年代後半からの草食系の増加を一例とする若者の性行動不活発化の煽りを受け[5]、その傾向は2005年には頭打ちとなる。最新の2011年第7回調査では、2005年調査と比較して男子6ポイント、女子9ポイントの減少となり1993年時点の水準に低下している[5]。第4回青少年の性行動調査によると、キスした経験は男性で14歳、女性で16歳で50%を越え、キスの経験が男女ともに18歳で50%を越える[6]
言語上の諸表現

現代にあっては[いつ?]、を用いて行う「ディープ・キス(フレンチキス)」の語も広く知られるようになり、「生まれて初めて他者と交わすキス」を表す「ファースト・キス」という言葉が生まれた。

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}また唇同士の接触(接吻)のみならず、唇を何らかのものに接触させるという行為を一般的に指す「チュウ(ちゅう、チュー)」という、擬音を元にした俗語も生まれ、若者を中心に幅広く用いられるようになった[要出典]。なお、接吻の擬態語としては江戸時代に既に「ちうちう」という表現を見ることができる[要出典]。
動物のキス

この節の加筆が望まれています。 (2015年2月)

キスをするのは、人間だけではない。チンパンジーボノボもキスをする[7]

母猫にキスをする子猫(サバンナ猫(英語版))

キスをするプレーリードッグ

歴史

カイロエジプト考古学博物館には、古代エジプト第18王朝アクエンアテン王(在位:紀元前1350年頃 - )が娘に接吻する石像が残っている。また、世界遺産セラ・ダ・カピバラ国立公園にある壁画には、性別ははっきりしないもののヒトとヒトがキスをしているように見える壁画があり、先史時代から人類にはキスという概念が存在したことになる。
キスマーク



口紅を塗った唇によるキスマーク

吸引性皮下出血(キスマーク)


キスと皮下出血

首にキスをして強く吸ったりするとそこに内出血が起きることがあるが、それを医学的には『吸引性皮下出血』という医学用語で呼ぶ。日常用語ではキスマークとも呼ばれる。「この人、首にキスマークがあるということは、さては昨日誰かといちゃついていたな?」などと推察されることになる[注 3]
事件

2005年カナダの15歳の少女が、同級生のボーイフレンドの少年とのキスが原因で死亡する事故があった。これは、少女がピーナッツアレルギーであるのを知らずに、少年がその日の朝にトーストピーナッツバターを塗って食べ、そのままキスをしたことが原因だと判明している。

2007年4月19日イスラエル人の女性がキスで舌を絡ませ、男性の舌を噛み切るという事件があった。山田風太郎の『八犬伝』にも、“舌切り雀”という名で娼婦の殺人術として登場する。

毒見
中世ヨーロッパでは、貴族の食器、枕やベッドなどの身の回りの品へキスをして毒がないかチェックした[8]
同名作品詳細は「接吻 (曖昧さ回避)#作品」および「くちづけ (曖昧さ回避)」を参照
脚注[脚注の使い方]
注釈
^ kissはかつてカタカナでは「キッス」と表記されることが多かった。
^ 。上述のように、フランスでは、(他の欧州圏と違って)男女間でも日常的に非常に頻繁に(挨拶として)キスがなされるが、その大多数を占めるキスはライト・キスであり、ディープ・キスはむしろ稀なので、イギリス人は自分の気に入らない点だけに焦点を当てて、恣意的なレッテルを張っていることになる。ただし、欧州各国の国民は、こうした恣意的な揶揄を互いに繰り返してきた長い歴史がある。
^ なお、結婚している人物が、その配偶者にとっては自分でつけた記憶がまったく無いのにもかかわらず首にキスマークをつけていたりすると、不倫(浮気)が行われたことを示す一種の証拠となってしまい、深刻な事態を生む。

出典
^complex fraction:COLUMN(「フレンチキス」の定義)
^ a b 東野治之『史料学探訪』 岩波書店 2015年 ISBN 978-4-00-061020-9 pp.199-205.
^ 虫ん坊 2010年5月号(98):TezukaOsamu.net(JP)
^ 澤口俊之新潮45』2001年1月、92頁“近頃の若者たちで目立つのは、周りの目を気にしない行動だ。ひと目を気にしないで路上でキスする、...” :引用は以下による。後藤和智 (2005年8月8日). “ ⇒俗流若者論ケースファイル48・澤口俊之”. 新・後藤和智事務所 ?若者報道から見た日本?. 2023年1月5日閲覧。
^ a b第7回「青少年の性行動全国調査」 (2011 年)の概要
^第4回青少年の性行動調査 - 日本性教育協会
^ AFP BB NEWS『類人猿にも「人間に似た感情」、仲間をハグで慰める 米研究』 2013年10月16日
^ Halley, Catherine (2018年5月30日). “Hidden Poisons of the Royal Court” (英語). JSTOR Daily. 2023年12月19日閲覧。


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