捕鯨問題
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セミクジラは約7800頭[30]

ゴンドウクジラは78万頭[30]

であり、シロナガスクジラやセミクジラは絶滅の危険性が高い。また、クロミンククジラについては増加に度々引き合いに出される76万頭という生息数は下方修正されており、増加の停止が確認されている(後述)。なお種としての生息数が豊富であっても、世界中に生息する種類では生息域によっては系群単位で危機にある場合もあり、そういった事実を鑑みた上で資源管理は地域ごとにおこなわなければならない[70]

捕鯨に対して、数をコントロールしやすい「家畜」と違い鯨類の捕獲はその減少をコントロールできなくなるという懸念もグリーンピースが主張している[71]
海洋資源の過剰搾取

国連食糧農業機関の2008年報告によれば、海洋水産資源の利用は19%が過剰漁獲、8%が枯渇、1%が枯渇から回復しつつあるとされ、52%が満限利用の状態にあり、20%が適度な利用又は低・未利用の状態とされている[72]。FAO水産委員会の「漁獲能力に関する国際行動計画」に即し水産資源を持続的に利用していくためには、各国による水産資源管理の一層の強化が求められている[72]

自然保護の観点からは、「人間による捕鯨を含む漁業によって海洋生態系が撹乱されている」という海洋資源の過剰搾取問題がある。捕鯨は、海洋生態系ピラミッドの頂点に立っていた鯨類をバイオマス換算で半分以下まで減らし、その結果海洋生態系はダメージを受けている可能性がある(鯨類の餌としての水産資源消費も鯨類のバイオマス総量に比例して激減していると推測され、鯨類の死体を経由しての生態系ループもまた激減している)。これまでの人類による海洋の過剰搾取を見直す必要がある。この問題は鯨類だけではなく、マグロミナミマグロやタイセイヨウマグロを含む)など特定魚種の集中的漁獲について同様の問題を抱えている。[要出典]

また、化学物質汚染などにより海洋生態系の状況の悪化も指摘されており、海洋の利用は抑制に転じるべきであると言う主張がある[要出典]。
人道的捕殺

日本が電気銛からライフルを中心に切り替える旨を表明し、これを評価する国が多かったため、イギリスなども提案を撤回した[73]

致死時間の長さの一因について日本鯨類研究所は「年齢測定のために耳垢栓を無傷で入手する必要があり、致命傷を与えうる部位のうち頭部を避けて捕鯨砲を打ち込んでいたため」と説明。その後独自に開発した効率の高い爆発銛の使用により陸上野生動物のケースに劣らない即死率と平均致死時間を達成している、と反論している[74]。 日本鯨類研究所によれば、2005-2006年の調査捕鯨において平均致死時間(銛命中から致死判定まで)は104秒、即死率は57.8%である(抗議団体の妨害を受けていない場合)[75]ノルウェーが発表した2000年のデータでは、平均致死時間が136秒、即死率が78%である[76]

日本の沿岸でのイルカ漁についても致死時間が長いとの批判がされたため、フェロー諸島で使用されている技術の導入が図られている。この方法によれば、脳への血流を即時に停止させ、即死に導くことができる。ただし、スジイルカなど一部の種については、水際で激しく動くために適用が困難で、さらなる改善研究が行われている[77]

最新の食肉用家畜の屠殺においては、専用の道具(主に屠殺銃)および炭酸ガス麻酔法を用いた安楽死が多いのに対し、鯨は専用施設内での殺処理が行えず、致命傷でなければ死ぬまで時間がかかり、動物福祉の観点[31]から非人道的であるとされる。乗組員の安全性(「大背美流れ」など)や人道的視点などからの致死時間短縮は比較的古くからの課題であり、鯨を感電死させる電気銛などの研究が戦前からあった。日本でも1950年代に電気銛の試験が行われ、鯨の即死が確認されたものの、有効射程の短さなど運用上の困難から主力にはならなかった。
食の安全からみた鯨肉

元々食性の生物段階が低いヒゲクジラ類では汚染の程度は低く、南極海産のヒゲクジラについては汚染はほとんどないことも判明している。南極海のミンククジラにも汚染物質がほとんどないことが南極海鯨類捕獲調査で判明している[30]。特に南極海のクロミンククジラの脂皮や筋肉中に蓄積されたPCBやDDTなど人工有機塩素化合物や水銀はごく微量で、北半球の個体と比べると10分の1以下の値である[30]

2003年厚生労働省調査ではマッコウクジラゴンドウクジラハンドウイルカなどのハクジラ類全般について、1970年代に定められた遠洋沖合魚介類に関する暫定的規制値を上回る高濃度のメチル水銀PCB類が検出された。他方でヒゲクジラ類については、北西太平洋産のミンククジラやニタリクジラに関しては、ミンククジラの脂皮からは暫定規制値を超えるPCB類が認められたものの、メチル水銀は暫定規制値を超えるサンプルは無かった。流通量の過半数を占めていた南極海産のミンククジラ肉については、水銀・PCBともに汚染はほとんどないことが確認された[注釈 10]。メチル水銀やPCB類が人体に摂取された場合の健康に生じる影響に関してはフェロー諸島での調査で妊娠中の母親体内の水銀濃度が高度となった場合に胎児の発育に一定の影響を与えることが確認された。それ以外の場合については、影響は科学的には確認されなかった。以上を踏まえて、日本の厚生労働省は、妊婦を対象とした魚介類の摂食ガイドラインを設定し、マグロやキンメダイと並び、ハクジラ類も摂取量の目安が定められた[78]。ただし、これはあくまで妊婦のみを対象としたもので、幼児や授乳婦などを対象とするものではない。また、ミンククジラなどのヒゲクジラ類は汚染が軽度であるとして、沿岸域のものも含めて制限の対象外である。

2010年国立水俣病総合研究センターによる太地町の健康影響調査で、全国の他地域と比べて平均で4倍超の水銀濃度を毛髪から検出され、うち43人(調査人員の3.8%)の対象者は毛髪水銀濃度の下限値を上回った[注釈 11]が、日本人の平均の70倍の水銀が蓄積している事例[79]がみられ、これは水俣病患者のレベルに達している[80]。濃度が比較的高い182人はメチル水銀中毒と思われるような健康への影響は認められなかった[注釈 12] が、非常に心配な状況と見る向きもある[81]。太地町は水銀の影響を受けやすい子供の調査を実施すると発表した[82]

食の安全の観点から、鯨肉が有害物質によって汚染されており、捕獲自体も止めるべきで、沿岸域の鯨肉、特に栄養段階が高次であるハクジラ類の鯨肉については安全性に問題があると言う主張がある[要出典]。人間・自然由来の海洋の化学物質が生態系ピラミッドの上位者であるクジラ類・イルカ類の体内に濃縮されること、特に、年齢を重ねるごとに脂溶性の物質が脂肪細胞に蓄積される。その主たるものは水銀および有機塩素系化合物(PCB等)である。生態系ピラミッドの上位である他のマグロやカジキなどの大型魚類についても同様の指摘があるが、哺乳類のクジラ類の寿命は長く、前述の通り年齢を重ねるごとに蓄積される汚染物質が多くなる為、その値はクジラ類ほど高くはない。と言う主張がある[要出典]。
文化としての捕鯨

日本捕鯨協会によると、日本においてはクジラはただ単に食料としてではなく骨や皮まで全て廃棄することなく利用されていた[30]。しかし、これに異論を唱える学者もおり、日本列島における古式捕鯨の主目的は鯨油であり、保存技術も存在せず販売価格も鯨油よりも大きく劣る鯨肉の優先度は低く、とくに美味とみなされた部位をのぞいて廃棄される事も多かったともされており、内臓や鯨骨は利用されること自体がほとんどなかった[3][4]

また、捕鯨と他の漁業における社会的な扱いの格差が顕著であったり、「えびす信仰」などの影響でクジラを神聖視したり捕鯨自体をタブーとする風潮が多くの漁村に存在したため[83]、組織的な古式捕鯨は東日本では限定された地域でしか行われなかった[84][85]。捕鯨に反感を持つ漁業関係者も少なくなく、大量の血や油で他の海産物やそれらの生息地(磯)が悪影響を被ったり悪臭を発生させたり一帯の景観を損なうなどの点から、捕鯨を禁止する地域も存在したり捕鯨に反対する請願が行われる事例もあった[86]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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