捕鯨問題
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「捕獲調査は商業捕鯨の隠れみの」という批判に対し、クジラ調査は専門の学者が調査計画に基づいて船を運航させて、若干の捕獲を行い、耳垢栓や卵巣などの標本を採取し、調査後の鯨体は完全に利用することが条約(ICRW第8条第2項)で定められているので調査の副産物として持ち帰り、市場に出し、販売で得られた代金は調査経費の一部に充当されており、鯨体を可能な限り利用することは資源を大切にするという意味であると述べている[30]

また、耳垢栓や生殖腺などの器官は鯨体の内部深くにあり、体内の汚染物質、胃内容物の調査を効果的に実施するためには致死的調査は不可欠である[30]。バイオプシーなど非致死的調査で得られる情報もあるが非効率で現実的でないことはIWC科学委員会でも認識されている[30]


世界自然保護基金は、日本は生態系調査を目的とする「調査捕鯨」(鯨類捕獲調査)に切り替えたが、捕殺した鯨の肉の一部を商業市場で販売しており、調査捕鯨は科学調査という大義名分を使った疑似商業捕鯨である[143]と述べた上で、日本は集積された情報を独立した審査のために公開することを拒否し、調査で集められたデータの殆どは殺さない方法で得ることが可能であり、日本の鯨調査計画が信頼にたる科学として最低限の基準を満たしていない[143]と批判している。

2014年国際司法裁判所は、日本の南極海での調査捕鯨は事実上の商業捕鯨であるとする判決を下した。
調査捕鯨による鯨肉の需要減少による過剰在庫の存在

消費量は近年は拡大傾向にありまた在庫量は一定の水準を保っている[144]。在庫に余りはないと水産庁は説明している[145]が、衆議院決算行政監視委員会の理事である自民党平将明衆院議員は調査捕鯨の必要性を訴えられ、調査したら鯨肉の在庫は余っており、役所に嘘をつかれたと非難している[146]。また、日本の調査捕鯨拡大に伴い鯨肉の在庫量が増加している[147]という報道があり、鯨肉の需要は現在は減っている。長引く商業捕鯨停止で卸業者が減少したために流通が滞っている[145]。2016年の消費量は2845t、入荷量は4089t、在庫量は2237t[148]
領海への接近及び侵入

オーストラリア及びニュージーランドがその領海に隣接する南極海の領域を管理しているという見方がまず客観的にも存在しており、そこが南極の調査捕鯨に対する不快感につながっているとされている[149]

ただし、1959年南極条約により領土主権は凍結されており、日本はオーストラリア南極領土の領有権を認めていない。「南極条約」、「南極における領有権主張の一覧」、および「オーストラリア南極領土」を参照

中国メディアによれば、日本の捕鯨に対してオーストラリアが「日本が権利もなくわが国が南極に持つ40%の領土に侵入した」と南極領土の問題を主張した [150]
反捕鯨運動「反捕鯨」を参照

日本政府水産庁は海外援助で発展途上国の票を買うことはしていないと公表している[151]。一方企業の動きを見ると、反捕鯨運動をうけて、イトーヨーカ堂西友などの大手チェーンを含む少なくとも3500のスーパーが日本国内におけるクジラやイルカ製品の販売を中止した[152]ヤフーアマゾンジャパンも鯨肉販売を中止した[153][154]

グリーンピースシーシェパードといった反捕鯨NGOの活動船と日本やノルウェーなどの捕鯨船とのトラブルがある。シーシェパード暴力的な示威活動はカナダデンマーク、日本、ワシントン州アメリカ先住民の部族であるマカー族に対して起こされている。

反捕鯨には日本人への人種差別が基調にあるという言説によれば、1978年6月のIWCロンドン総会で日本代表団は反捕鯨団体に赤い染料をかけられ、「殺人者!バーバリアン(野蛮人)!お前たちが殺した鯨の血だ!」と怒号がかけられ、そうした様子は「この野蛮人をみよ」としてBBCで放映された[8]。1979年の総会でもロンドンのトラファルガー広場で「日本死刑執行」と称して眼鏡をかけた人形を吊るし、で刺すデモンストレーションや、日の丸が焼かれるなどした[8]。こうした行動は同じ捕鯨国のノルウェーやソ連に対しては行われなかった[8]。しかしながら、捕鯨問題に詳しいC.W.ニコルは日の丸が焼かれた事件について、飽くまでも差別的な個人が煽っているのであり、人種全体がそうだという訳ではないのだと語っており、また、捕鯨問題は黄色人種と白人の対立ではない、反捕鯨主義者の一部と日本人の一部が人種問題に扇動しているとしている[155]

2010年1月のオーストラリア人1000人を対象にした世論調査では94%が捕鯨に反対している(「ニューズウィーク日本版』2014年4月15日号より)が、南極海の領域を管理しているという点からのテリトリー意識や観光資源としての利益保護という点もあるのだろうとされる。

2008年にはグリーンピース日本支部によるクジラ肉窃盗事件が発生した。平成17年には日本鯨類研究所がグリーンピースジャパンに対して暴力的な妨害について公開質問状を出した[156]

岸上伸啓は環境NGOグリーンピースは、反捕鯨を資金集めの手段としており「抗議ビジネス」であり、グリーンピースは支援者から注目を集め資金をえるために,クジラに関して誇張した情報を流して人々の不安心理を掻きたてメディアを操作し、欧米の政治家の中にはクリーンなイメージをアピールし,支持者を集める手段として反捕鯨を訴える者がおり、捕鯨問題が政治的に利用されているとの批判があるとしている[31]

また、この問題は、日本の経済が好調であった時期に欧米諸国の自然保護団体に同調した自動車産業団体や、農産物生産者等によって利用され、ジャパンバッシングに起因する反日運動の一つとして、過激な運動やパフォーマンスも行われた。

尚、川端裕人によると、ニュージーランドは日本に好印象を持っており、グリーンピース・ニュージーランドの反捕鯨キャンペーンのキャッチフレーズは「日本は好きだけど、捕鯨には胸が痛む!」であると指摘している[157]

上記の通り、山本太郎シーシェパードの抗議行動を拡大させたのは、日本がザトウクジラナガスクジラの南極海における捕鯨を宣言したことが原因の一つとして挙げている[90]
エコテロリストへの対抗運動

日本の統一戦線義勇軍は榎本正隆をオーストラリアへ派遣して、2008年から一年間オーストラリアで反シーシェパードの活動を行っていた。榎本によるとオーストラリア人の中には日本は捕鯨をした方がいいと言う人も沢山いて、大半のオーストラリア人は反シーシェパードである(あれは下品)と述べている[158]

主権回復を目指す会はシー・シェパードが協力した映画『ザ・コーヴ』を反日映画として、日本国内で公開禁止の抗議活動を強硬に行った。しかしながらこの抗議活動は製作に関与していない日本国内の映画配給会社や映画館の支配人の自宅での抗議であり、支配人の高齢の母親が攻撃されるに至って、家族を攻撃するのは右翼であれ左翼であれ許されざることであり、統一戦線義勇軍や一水会など他の右翼団体の反発を招いた[159]。前述の統一義勇軍の榎本曰く、外国の映画で日本人同士がぶつかっている奇妙な構図だと指摘している[160]

デンマークのフェロー諸島のゴンドウクジラ協会は捕鯨のPR活動を行っているが、これはシー・シェパードによる妨害活動に対抗する為に設立されたものである[161]


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