捕鯨問題
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国際捕鯨取締条約8条ではIWCメンバー国は自国が適当と考える条件で科学調査を目的として鯨を捕獲できるとしており、商業捕鯨モラトリアムや南大洋鯨類サンクチュアリー(保護区)に拘束されずに、捕獲調査を行うことができると条約で認められている[30]。むしろ、モラトリアムはもう必要がなく、南大洋の永久保護区(サンクチュアリー)は資源量と無関係に設定されているため、条約に反している[30]

1994年、日本をのぞいてIWC全会一致で南極海は永久保護区(サンクチュアリー)に指定された[134]
調査捕鯨

調査捕鯨の仕事は大別すると、鯨体を捕獲する捕獲調査と個体数を数える目視調査がある。鯨の推定頭数の算出や生態調査も目的としている[135]。平行してバイオプシー調査も行っており、こちらでは確保不能なシロナガスクジラなどの種のサンプルも集めている[136]

調査捕鯨が開始された理由は、1982年のモラトリアム導入に際し反捕鯨国側は「現在使われている科学的データには不確実性がある」ことを根拠にして安全な資源管理ができないと主張したためであった[30]

日本捕鯨協会によれば日本の南極海鯨類捕獲調査捕鯨ではクロミンククジラザトウクジラなど各種クジラが増加していること、鯨種や成長段階による棲み分けの状態、回遊範囲が非常に広範囲であること、1980年代後半から現在までクロミンククジラの資源量推定値に大きな増減はみられず、個体数は安定していることも明らかになり[137]、多様な調査結果が得られている[30]

北西太平洋鯨類捕獲調査においては、日本周辺のクジラは豊富であること[注釈 14]。DNA分析で太平洋側と日本海側の鯨は別の系群にあること、などがわかった[30]IUCNレッドリストで「絶滅危機」に分類されているイワシクジラ調査捕鯨[138]では、北西太平洋イワシクジラの生息数を2004年6月までは28,000頭[139]、2004年9月からは67,600頭[140]、2009年5月からは28,500頭と考えており[141]、年間100頭程度の捕獲はイワシクジラの安定的な生息には影響を与えないとしている。

調査捕鯨に関して日本は1987年から2006年までの間に、査読制度のある学術誌に91編の論文を発表し、IWCの科学小委員会に182編の科学論文を提出するなどしており、2006年12月のIWC科学小委員会では、日本の研究について「海洋生態系における鯨類の役割のいくつかの側面を解明することを可能にし、その関連で科学小委員会の作業や南極の海洋生物資源の保存に関する条約(CCAMLR)など他の関連する機関の作業に重要な貢献をなす可能性を有する」と結論づけ、1997年のIWC科学小委員会においても、日本の調査が「南半球産ミンククジラの管理を改善する可能性がある」と評価されている[142]。「捕獲調査は商業捕鯨の隠れみの」という批判に対し、クジラ調査は専門の学者が調査計画に基づいて船を運航させて、若干の捕獲を行い、耳垢栓や卵巣などの標本を採取し、調査後の鯨体は完全に利用することが条約(ICRW第8条第2項)で定められているので調査の副産物として持ち帰り、市場に出し、販売で得られた代金は調査経費の一部に充当されており、鯨体を可能な限り利用することは資源を大切にするという意味であると述べている[30]

また、耳垢栓や生殖腺などの器官は鯨体の内部深くにあり、体内の汚染物質、胃内容物の調査を効果的に実施するためには致死的調査は不可欠である[30]。バイオプシーなど非致死的調査で得られる情報もあるが非効率で現実的でないことはIWC科学委員会でも認識されている[30]


世界自然保護基金は、日本は生態系調査を目的とする「調査捕鯨」(鯨類捕獲調査)に切り替えたが、捕殺した鯨の肉の一部を商業市場で販売しており、調査捕鯨は科学調査という大義名分を使った疑似商業捕鯨である[143]と述べた上で、日本は集積された情報を独立した審査のために公開することを拒否し、調査で集められたデータの殆どは殺さない方法で得ることが可能であり、日本の鯨調査計画が信頼にたる科学として最低限の基準を満たしていない[143]と批判している。

2014年国際司法裁判所は、日本の南極海での調査捕鯨は事実上の商業捕鯨であるとする判決を下した。
調査捕鯨による鯨肉の需要減少による過剰在庫の存在

消費量は近年は拡大傾向にありまた在庫量は一定の水準を保っている[144]。在庫に余りはないと水産庁は説明している[145]が、衆議院決算行政監視委員会の理事である自民党平将明衆院議員は調査捕鯨の必要性を訴えられ、調査したら鯨肉の在庫は余っており、役所に嘘をつかれたと非難している[146]。また、日本の調査捕鯨拡大に伴い鯨肉の在庫量が増加している[147]という報道があり、鯨肉の需要は現在は減っている。長引く商業捕鯨停止で卸業者が減少したために流通が滞っている[145]。2016年の消費量は2845t、入荷量は4089t、在庫量は2237t[148]
領海への接近及び侵入

オーストラリア及びニュージーランドがその領海に隣接する南極海の領域を管理しているという見方がまず客観的にも存在しており、そこが南極の調査捕鯨に対する不快感につながっているとされている[149]

ただし、1959年南極条約により領土主権は凍結されており、日本はオーストラリア南極領土の領有権を認めていない。「南極条約」、「南極における領有権主張の一覧」、および「オーストラリア南極領土」を参照

中国メディアによれば、日本の捕鯨に対してオーストラリアが「日本が権利もなくわが国が南極に持つ40%の領土に侵入した」と南極領土の問題を主張した [150]
反捕鯨運動「反捕鯨」を参照

日本政府水産庁は海外援助で発展途上国の票を買うことはしていないと公表している[151]。一方企業の動きを見ると、反捕鯨運動をうけて、イトーヨーカ堂西友などの大手チェーンを含む少なくとも3500のスーパーが日本国内におけるクジラやイルカ製品の販売を中止した[152]ヤフーアマゾンジャパンも鯨肉販売を中止した[153][154]

グリーンピースシーシェパードといった反捕鯨NGOの活動船と日本やノルウェーなどの捕鯨船とのトラブルがある。シーシェパード暴力的な示威活動はカナダデンマーク、日本、ワシントン州アメリカ先住民の部族であるマカー族に対して起こされている。

反捕鯨には日本人への人種差別が基調にあるという言説によれば、1978年6月のIWCロンドン総会で日本代表団は反捕鯨団体に赤い染料をかけられ、「殺人者!バーバリアン(野蛮人)!お前たちが殺した鯨の血だ!」と怒号がかけられ、そうした様子は「この野蛮人をみよ」としてBBCで放映された[8]。1979年の総会でもロンドンのトラファルガー広場で「日本死刑執行」と称して眼鏡をかけた人形を吊るし、で刺すデモンストレーションや、日の丸が焼かれるなどした[8]。こうした行動は同じ捕鯨国のノルウェーやソ連に対しては行われなかった[8]。しかしながら、捕鯨問題に詳しいC.W.ニコルは日の丸が焼かれた事件について、飽くまでも差別的な個人が煽っているのであり、人種全体がそうだという訳ではないのだと語っており、また、捕鯨問題は黄色人種と白人の対立ではない、反捕鯨主義者の一部と日本人の一部が人種問題に扇動しているとしている[155]


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