2010年の国立水俣病総合研究センターによる太地町の健康影響調査で、全国の他地域と比べて平均で4倍超の水銀濃度を毛髪から検出され、うち43人(調査人員の3.8%)の対象者は毛髪水銀濃度の下限値を上回った[注釈 11]が、日本人の平均の70倍の水銀が蓄積している事例[84]がみられ、これは水俣病患者のレベルに達している[85]。濃度が比較的高い182人はメチル水銀中毒と思われるような健康への影響は認められなかった[注釈 12] が、非常に心配な状況と見る向きもある[86]。太地町は水銀の影響を受けやすい子供の調査を実施すると発表した[87]。
食の安全の観点から、鯨肉が有害物質によって汚染されており、捕獲自体も止めるべきで、沿岸域の鯨肉、特に栄養段階が高次であるハクジラ類の鯨肉については安全性に問題があると言う主張がある[要出典]。人間・自然由来の海洋の化学物質が生態系ピラミッドの上位者であるクジラ類・イルカ類の体内に濃縮されること、特に、年齢を重ねるごとに脂溶性の物質が脂肪細胞に蓄積される。その主たるものは水銀および有機塩素系化合物(PCB等)である。生態系ピラミッドの上位である他のマグロやカジキなどの大型魚類についても同様の指摘があるが、哺乳類のクジラ類の寿命は長く、前述の通り年齢を重ねるごとに蓄積される汚染物質が多くなる為、その値はクジラ類ほど高くはない。と言う主張がある[要出典]。
なお、小型鯨類に含有される水銀に関する取材を行ってきたメディア[88]に太地町の関係者から圧力とも捉えられる態度を取られたこともあったとされている[89]。 日本捕鯨協会によると、日本においてはクジラはただ単に食料としてではなく骨や皮まで全て廃棄することなく利用されていた[30]。しかし、これに異論を唱える学者もおり、日本列島における古式捕鯨の主目的は鯨油であり、保存技術も存在せず販売価格も鯨油よりも大きく劣る鯨肉の優先度は低く、とくに美味とみなされた部位をのぞいて廃棄される事も多かったともされており、内臓や鯨骨は利用されること自体がほとんどなかった[3][4]。 また、捕鯨と他の漁業における社会的な扱いの格差が顕著であったり、「えびす信仰」などの影響でクジラを神聖視したり捕鯨自体をタブーとする風潮が多くの漁村に存在したため[90]、組織的な古式捕鯨は東日本では限定された地域でしか行われなかった[91][92]。捕鯨に反感を持つ漁業関係者も少なくなく、大量の血や油で他の海産物やそれらの生息地(磯)が悪影響を被ったり悪臭を発生させたり一帯の景観を損なうなどの点から、捕鯨を禁止する地域も存在したり捕鯨に反対する請願が行われる事例もあった[93]。また、他の漁業技術の発達に伴って捕鯨の優先度も相対的に低下が見られ、捕獲数の減少に伴って捕鯨の他地域への拡大を目論む者との間で軋轢が生じて暴動が発生するなどの事例も「東洋捕鯨鮫事業所焼討事件」をふくめ散見されたとされる[3][4][93][94]。漁業者以外にも、三浦浄心や仏教関係者など当時から捕鯨に反対しクジラへの影響を憂慮する者も存在した[95]。 一方で、日本において捕鯨をナショナリズムの振興や国威掲揚
文化としての捕鯨
ナンシー・シューメイカーは、かつて鯨肉食を普及させようと試みたが失敗した米国政府は捕鯨規制には鯨肉を食す国の視点を取り入れずに規制しようとしたため、商業か生業か、文明か野蛮かという二分法の枠組みで扱われた。石油開発によって鯨油は産業資源でなくなったため、アメリカはクジラの捕獲を禁止してもアメリカ人は失うものは何もなく、すなわち鯨肉はアメリカの文化的な好みに合致する味にはならなかったため、国際合意に負の影響を与えていると指摘している[31]。