捕鯨問題
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但し留保を付していないザトウクジラと北太平洋に生息するイワシクジラについては、公海上での標本捕獲・持込について、当該持込がされる国の科学当局(日本では水産庁)が、標本[注釈 8]の持込が当該標本に係る種の存続を脅かすこととならないこと、標本が主として商業目的のために使用されるものではないと認める必要がある[注釈 9]。なお、経済的な利益獲得のための活動のみならず、非商業的側面が際立っていると明らかにはいえない利用方法についても「商業目的」と解釈するものとされている[39]。以上から鑑み、日本によるザトウクジラと太平洋イワシクジラ捕獲はワシントン条約の諸規定を侵害する違法行為にあたるとの見解が元ワシントン条約事務局長で国際法学者のピーター・サンド教授により提起されている[40][41][42]。これに対して日本鯨類研究所は、商業目的であるか否かについての判断は締約国に委ねられていると主張している[43]。なおワシントン条約違反行為等に関しては、締約国会議の下に常設委員会が設けられており、同委員会は締約国会合において採択された諸決議に即し、条約違反国に対する貿易制裁を締約国へ勧告する権限を有している[44]

また、日本では突きん棒などを使用する他の漁業による違法捕鯨(密猟)や定置網などへの「混獲」という状況を利用した意図的な捕獲(疑似的な捕鯨)が行われて絶滅危惧種が狙われる可能性も指摘されており[45]。実際に、セミクジラ[46]コククジラ[47][48][49]シロナガスクジラ[50]などの所持販売も禁止されている種類[51]が密猟された可能性のある事例や、肉が市場から発見されたこともある。そして、日本では絶滅危惧種の管轄も環境庁ではなく農林水産省が担っており、鯨類の保護そのものが海外の思想の受け売りとみなされるなど他の自然保護の内容と比べて軽視されてきた[52]
ボン条約

国家間の領域を跨いだ移動や回遊や渡りを行う生物の保護を目的とする移動性野生動物種の保全に関する条約(ボン条約)では、ミンククジラをはじめとする日本が捕獲対象として見ている種類もすべて保護の対象に指定されている[53]。しかし、2024年現在も日本は未加盟である。
争点

捕鯨を巡る争点を以下、概説する。

一般的に捕鯨と反捕鯨の対立とされる場合も多いが、中立的な立場や、捕鯨自体には賛成するもののその方向性において様々な立場があり、捕鯨と反捕鯨の対立という短絡的な解釈には問題があり[54]、現実の構図はこの一般的理解よりもはるかに複雑であり、問題を単純化、一般化するのは必ずしも容易ではない。
鯨害獣論

1999年の漁業白書によれば、鯨類の餌消費量は2.8 - 5億トンと日本鯨類研究所が推定した[55][56]大隅清治は1999年の著書で、増えすぎたミンククジラなどの鯨を間引くことは正に一石二鳥の効果をもたらす、としている[57]

元沿岸小型捕鯨担当の水産庁調査員の関口雄祐によれば、この効果を実現する為には「海洋全体のコントロール」が絶対条件であるものの、80種の鯨類の管理は単一種の生物を管理する牧場や畑とは段違いに難しく、気象や温暖化も完全に予測できない現在の人類には不可能であるとしている[58]。また、大泉宏は確かに鯨類は沢山の餌を食べているが、鯨類の餌生物は必ずしも人類が利用する生物ばかりではない(一例、ナンキョクオキアミは現在では然程大きい漁業ではない)。イシイルカが食べるスケトウダラのように漁獲高を圧迫しているのではないかと見られるものもあるが、豊漁期のマイワシは年間百万トン近い漁獲が有り、鯨類の他に魚類や海鳥が捕食していたが、食べきれないほどの数であり、マイワシ資源学者はそれで減ったとは考えておらず。鯨類と漁業との競合は個々のケースで考える必要があるとしている[59]

調査捕鯨を前提にした農林水産省の2011年の「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」第3回と第4回において、この件に触れられており。横浜国立大学教授松田裕之は「数学論モデル的に立証された『ピーター・ヨッジスの間接効果理論』は捕食者と被捕食者以外の第三者に対する影響の間接効果の理論であり、これが鯨類(というより特定の水棲捕食生物)による捕食が餌生物の減少をもたらすとは限らない」と指摘[60]し、WWFジャパン自然保護室長岡安直比は「生態系の変動は一種類の動物だけを見るのではなく、全体的なバランスの上で考えなければいけない。全体的に生態系が絶滅に追いやられるほど大きく崩れた事例はあまり観察されてはおらず、国際社会の中では科学的ではないとみられている。」と指摘[61]した。それに対して、野村一郎は「鯨害獣論は科学的に検証が難しく、それよりも鯨の資源が多いから捕っていいのだと言う議論の方が受け入れやすい」[62]とし、東海大学海洋学部専任講師大久保彩子は「鯨害獣説は2002年ぐらいにPRが盛んに行われていたが、科学的妥当性に批判があり、

また、2009年のIWC会合で日本の政府代表団が日本の科学者が漁業資源の減少の要因がクジラであると結論づけた事がないとの発言を指摘し、仮説に過ぎないものを大々的にアピールするのは日本の科学の信頼性を損ねる」[63]とし、高成田亨は「生物学の権威が疑問を呈している点は真剣に考えるべき所である」[64]としている。

バーモント大学のジョー・ローマン(英語版)は「我々が新たに検証した複数の研究では、クジラのような大型捕食動物が存在するほうが、生態系における魚類の個体数が多くなることが明らかになっている」と2014年に指摘した[65][66]

また、大型鯨類の糞に含まれる大量の窒素リン植物プランクトンの発生を促し、海洋生態系全体への恩恵があるだけでなく、二酸化炭素の抑制にも効果があるとされている。さらに、大型鯨類の死骸による炭素の吸収も指摘されている[67]


2009年6月にマデイラ諸島で開催された国際捕鯨委員会の年次会合において、森下丈二(水産庁参事官)は、日本政府代表代理としての立場から、鯨類の増加による漁業資源への被害を実質的に撤回したが、その後も国内世論を是正するという動きは見られなかった[68]
絶滅の可能性

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出典検索?: "捕鯨問題" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2015年3月)

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国際捕鯨委員会科学委員会の推定資源量では、

ミンククジラは南半球761,000頭、北大西洋174,000頭、西グリーンランド10,800頭、北西太平洋及びオホーツク海25,000頭[30]

シロナガスクジラは南半球2,300頭[30]。(世界的に10000?25000頭(IUCNレッドリスト[69]))

ナガスクジラは33200頭[30]

コククジラは26421頭[30]

ホッキョククジラは11730頭[30]

ザトウクジラは北西大西洋で11,600、南半球42,000、北太平洋で少なくとも10,000頭[30]

セミクジラは約7800頭[30]


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