トールキンによるエピック・ファンタジーの大成功で、ファンタジーへの需要が非常に大きくなり、このジャンルは大きく花開いたと言える。以後、ファンタジーの多くの良書が出版されたが、特筆すべき作品としては、アーシュラ・K・ル=グウィン の『ゲド戦記』やステファン・ドナルドソンの『信ぜざる者コブナント』がある。
1987年、テキストの電子化により、英米のテキストが一致した。
2004年、50周年記念版として、クリスティーナ・スカル、ウェイン・G.ハモンドによる注釈。トールキン作の「マザルブルの書」の挿絵つきで出版された。2005年、クリスティーナ・スカル、ウェイン・G.ハモンドによる索引の再構成、テキストの全面見直し版が出版された。
他の芸術分野すべてと同じように、立派な作品を真似ただけの派生本はたくさん現われた。『指輪物語』の筋をなぞっただけの派生品について、トルキニスク(Tolkienesque)という用語が使われるようになった。魔法のファンタジーの世界を邪悪な冥王の軍隊から救う探究に乗り出す冒険者の一団が…というストーリーがそれにあたる。
日本語版ホビット庄
1972年から1975年に掛けて瀬田貞二訳の全6巻が評論社から出版され、1977年に同社から内容のほぼ変わらない文庫版全6巻が出版された。1992年、既に亡くなっていた瀬田貞二の訳文をもともと協力していた田中明子が全面的に見直し、両名の共訳という名義になり愛蔵版全3巻、A5版全7巻、文庫版全9巻の三種が発行された。愛蔵版とA5版では、「追補編」Dの後半以降が追加され全訳となった。2003年には、文庫版に第10巻『追補編』が追加発行された。2020年に電子書籍化された際に、長く懸案だった訳文・固有名詞の見直しが行われ、2022年に刊行された「最新版」にもこれが反映されている[13][14]。
作中にある英語由来の固有名詞を翻訳する際には、各国の言語に寄り添うようにというトールキンの意向を反映して、瀬田貞二訳では幾つかの人名や地名が日本語に翻訳されている。
Black Riders → 黒の乗手
Easterlings → 東夷
Glittering Caves → 燦光洞
Gollum → ゴクリ[注 1]
Middle-earth → 中つ国
Oliphaunt → じゅう
Rangers → 野伏
Rivendell → 裂け谷
Shadowfax → 飛蔭
The Shire → ホビット庄
Sting → つらぬき丸
Strider → 馳夫
また、ゴクリが一つの指輪に呼び掛ける“my precious”を「いとしいしと」、マザルブルの間でフロドが上げる鬨の声“Shire!”を「ホビット庄の一の太刀!」と訳した部分などは、瀬田貞二の独創性を示す好例である。なお、瀬田貞二訳で粥村と訳されていたBreeは、田中明子共訳ではブリー村と修正されている。 『指輪物語』はトールキン自身の言語学、おとぎ話、北欧神話、ケルト神話に対する興味から始まった。トールキンは驚くほど自らの世界を詳細に形成し、中つ国とその世界のために、登場人物の系図、言語、ルーン文字、暦、歴史を含む完全な神話体系を創造した。この補足資料のいくらかは『指輪物語』「追補編」で詳述されている。神話の物語は『シルマリルの物語』と題する聖書のような叙事詩的長編へと織りあげられた。 J・R・R・トールキンは以前 『指輪物語』は「基本的には宗教的でカトリック的作品」であると記述した(The Letters of J. R. R. Tolkien
書籍
『指輪物語』のプロットは、前作の『ホビットの冒険』から、そしてより間接的にではあるが『シルマリルの物語』の歴史から組み立てられている。『シルマリルの物語』は、『指輪物語』の登場人物が過去として想起する出来事を含んでいる。ホビットたちは、かれらの全世界を脅かす大きな出来事に巻き込まれ、悪の召使いサウロンは、かれの権力を奪い返すことができる手段として、失われた一つの指輪を回復しようとする。 人間、ホビット、エルフ、ドワーフ、オーク、トロルなどが住む架空の世界である「中つ国(Middle-earth)」を舞台とし、主人公のホビット族であるフロドを含む9人の旅の仲間が、冒険と闇の勢力との戦いを繰り広げる。
あらすじ