指輪物語
[Wikipedia|▼Menu]
2001年 - 2003年の映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のリリースは、本作の認知度・影響力をさらに高めることとなった[8]

三部作はすべて世界史上のベストセラーのトップ10に入り、それぞれ1億5500万部、1億5000万部、1億4000万部を売り上げている[9][10][11]
本書の構成

トールキンは、『ホビットの冒険』を書いた後、別の本を書くつもりはなかったが、出版社に説得され、「新ホビットの冒険」を構成しはじめた。完璧主義者であるトールキンの希望のため、執筆ははかどらなかった。かれは小説作品を準創造(sub-creation)、そしてかれ自身を準創造者と考えて、創造をかれの義務であると信じていたため、その創作には妥協がなかったものと推測される。

3巻構成版が非常に広く流通しているので、作品はよく『指輪物語』三部作と呼ばれるが、一つの小説として構想され書かれたので、これは厳密には正しくない。元々トールキンは本作を、大きな一巻本で刊行しようと意図していたのだが、これは第二次世界大戦後の紙不足のために不可能になり、そのかわりに『旅の仲間』(第1部、第2部)、『二つの塔』(第3部、第4部)、『王の帰還』(第5部、第6部、追補編)の3巻に分割され、1954年から1955年の間に出版された。1966年、この他にファンの作った三つの索引が『王の帰還』に追加された。

分割の際に、第5部・第6部に対する『王の帰還』という題について内容を知らせすぎるとしてトールキンは難色を示していた。トールキン自身はこの部分に対し「指輪戦争」を提案していたが、出版社に退けられた。トールキンがもともと6部構成につけようとしていた題は次のとおりである。

第1部「指輪、世に出る」 The Ring Sets Out

第2部「指輪、南へ行く」 The Ring Goes South

第3部「アイゼンガルドの反逆」 The Treason of Isengard

第4部「指輪、東へ行く」 The Ring Goes East

第5部「指輪戦争」The War of the Ring

第6部「第三紀の終わり」 The End of the Third Age

作品全体の名前はLotR(LOTR)あるいは単にLRと、三巻はそれぞれ、FR、FOTRあるいはFotR(The Fellowship of the Ring)、TTあるいはTTT(The Two Towers)、そしてRK、ROTKあるいはRotK(The Return of the King)と略記される。

いくつかの場所や登場人物について、トールキンは自ら幼年期にすごしたセアホール(当時はウォリックシャーの一農村で現在はバーミンガムの一部)、そしてバーミンガム自体から着想を得ている。
出版史

最初、全3巻はアレン・アンド・アンウィン社から1954年から1955年にかけて、数か月おきに刊行された。その後、多数の出版社が1巻、3巻、6巻あるいは7巻の体裁で複数回にわたり再発行した。ISBN 0-007-20363-2(全4巻セット)等が現在入手可能である。

1960年代初期、ペーパーバック出版社エース・ブックスのSFの編集者ドナルド・A・ウォルハイムは、『指輪物語』の米国ハードカバー版は、米国著作権法では保護されないと考えた。そしてエース・ブックスはトールキンに許可を得ず、印税も払わずに本作を出版し始めた。

トールキンは、かれに手紙を書いた米国のファンへこのことをはっきりと述べたため、ファンによる草の根の圧力は次第に大きくなり、エース・ブックスはそれらの出版を取りやめ、正式な出版の場合よりはかなり低い額ではあるが、トールキンへの名目上の印税支払をすることになった。しかしながら、正式に認可された版がバランタイン・ブックス(英語版)から出版され、すさまじい商業的成功を得たため、トールキンは十分に報われることとなった。1960年代半ばには、本作はアメリカで最も有名な作品の一つになり、「ガンダルフを大統領に!」といったスローガンが現れるなど、社会現象とまでなった。

本作は多数の言語に翻訳されたが、トールキンは言語学の専門家として、これらの翻訳の多くを検査し、翻訳過程およびかれの作品内容両方を説明するコメントをした。

デンマーク語版の翻訳作業にはマルグレーテ2世も参加しており、挿絵もマルグレーテ2世によるものである[12]

トールキンによるエピック・ファンタジーの大成功で、ファンタジーへの需要が非常に大きくなり、このジャンルは大きく花開いたと言える。以後、ファンタジーの多くの良書が出版されたが、特筆すべき作品としては、アーシュラ・K・ル=グウィン の『ゲド戦記』やステファン・ドナルドソンの『信ぜざる者コブナント』がある。

1987年、テキストの電子化により、英米のテキストが一致した。

2004年、50周年記念版として、クリスティーナ・スカル、ウェイン・G.ハモンドによる注釈。トールキン作の「マザルブルの書」の挿絵つきで出版された。2005年、クリスティーナ・スカル、ウェイン・G.ハモンドによる索引の再構成、テキストの全面見直し版が出版された。

他の芸術分野すべてと同じように、立派な作品を真似ただけの派生本はたくさん現われた。『指輪物語』の筋をなぞっただけの派生品について、トルキニスク(Tolkienesque)という用語が使われるようになった。魔法のファンタジーの世界を邪悪な冥王の軍隊から救う探究に乗り出す冒険者の一団が…というストーリーがそれにあたる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:88 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef