拳銃
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単発式・複銃身式拳銃デリンジャーが使用されたリンカーン大統領暗殺の様子を描いた絵

一本の銃身を持ち、一発の弾薬しか装填できないものを単発式と呼び、単発式の銃身を複数にして連射・斉射できるようにしたものを複銃身式と呼び、前装式銃器の時代から様々な形式のものが作られた。

後に銃身後端を切断して、ここに回転式の弾倉(シリンダー)を付けたものが作られるようになり、これが前装式回転式拳銃へと発展した。

弾丸と火薬を一体にした薬莢が用いられるようになった時代から、これを装填するために銃身部と機関部の間で2つに折って装填できる形式のものが作られるようになり、単銃身?4連銃身程度のものが製造されてきたが、本数が増えるだけ重量が増すため小型の製品が多かった。

デリンジャーは上下二連銃身の小型拳銃で、中折れ式拳銃の代表例であり、手の平や袖の中に収まるコンシールメント・ウェポン、つまり隠すのが容易で、目立つ拳銃を取り上げられた場合の最後の抵抗手段としても有名である。.41リムファイヤのレミントン・ダブルデリンジャー、.22LRのハイスタンダード・デリンジャーなどがある。

1865年に第16代アメリカ大統領リンカーン暗殺に用いられたのは、前装式の単発小型銃フィラデルフィア・デリンジャーであり、これが有名となったため、小型拳銃の商品名としてデリンジャーという名称が多用されるようになった。

近年では、銃身と撃鉄を交換するだけで様々な弾丸を撃つことが出来るトンプソン・コンテンダーが、シルエット競技(重い鉄板を撃ち倒す)で人気が高い。
回転式拳銃詳細は「回転式拳銃」を参照ナガンM1895

リボルバーとも呼ばれる。中に薬室を複数納めたレンコン状の回転式弾倉(シリンダー)を有するのが特徴で、装弾数は一般に5発か6発であるが、近年の金属の熱処理技術の向上や、口径の関係で7?8発のものもある。ナガン・リボルバー等一部のリボルバーを除いて、大体は弾倉と銃身の間に隙間(シリンダーギャップ)があるため、発射ガスがそこから放射状に飛散する。このためサプレッサーを付けても効果が限定的である。シリンダーの保持方法によって振出式(スイングアウト)、中折れ式(トップブレイク)や固定式(ソリッドフレーム)等に大別でき、現在最も普及しているのはスイングアウト方式である。

利点として自動式拳銃と比べて構造が単純・堅牢で耐久性を上げやすい。部品数が少なく、保守も容易であり、実包装填時の暴発の危険性が低く信頼性が高い。また、不発が発生した場合も、ハンマーを起こす(シングルアクション)、または引き金を引くだけ(ダブルアクション)で次弾を素早く発射出来る。弾頭の形状・装薬量の変化に作動が左右されないため、大口径で高威力のマグナム弾も作られている。価格も比較的安い。

欠点は装弾数が少ないことや、清掃や保守点検のために分解する際、自動式に比べて手間が掛かることである。弾薬の再装填にも時間を要するが、再装填に関してはスピードローダーやムーンクリップという装填器具を用いて、複数の弾薬をすばやく一括装填できるものもある。現在では自動式に押されつつあるが、個人の護身用、また発砲機会が少ない地域の警察官用としてリボルバーはいまだそれなりの需要がある。

少数ながら回転式の(半)自動式拳銃(オートマチック・リボルバー)も存在する。
自動式拳銃QSZ-92

自動式拳銃とは、射撃時の反動(反動利用式)や火薬燃焼時の薬莢底にかかる圧力及後退動作(ブローバック)を利用し、遊底(スライド、ボルト)と呼ばれる部分を後退させることで、排莢や次弾装填を自動化した拳銃である。9x19mmパラベラム弾以上の威力の実包を使用するほとんどの拳銃は反動利用式(ショートリコイル)の作動機構を持ち、弾頭が発射され、高圧高温の発射ガスが安全圏に下がるまで銃身と遊底は機械的に結合したままである。これに対して.380ACP弾以下の比較的弱装の実包を使用する自動式拳銃は特に機械的な閉鎖機構を持たず、リコイルスプリングの圧力と遊底の慣性質量及び薬莢の靭性によってのみ弾頭が発射されるまでのガス圧をしのぐ(ストレートブローバック、またはシンプルブローバック)。

英語ではオートマチックピストル (automatic pistol)、またはオート (auto) と呼ぶ。世界初の実用自動拳銃であるボーチャードピストルはトグルアクション方式のショートリコイルを採用しており、この機構は後のルガーP08に引き継がれている。

一般的な自動式拳銃は、引き金を引く度に1発ずつ弾丸を発射、排莢、再装填を行う半自動式(セミオートマチック)。引き金を引いたままにすると全自動(フルオートマチック)で発射できるものは「マシンピストル」(後述)と呼ばれ、便宜上は区別される。

利点としては、大半の回転式拳銃に比べて装弾数が多く、かつグリップ内に挿入されている弾倉を交換することで装填が簡単にできるため、連射に向いている。口径にもよるが、7発前後から多いものでは15発以上の弾丸を装填できるものもある。専用のロングマガジンを使うことで、更に装弾数を増やすことも可能である。また、ロングマガジンにグリップ・アダプターという器具をつけて挿入することでホールド感を安定させることもできる。
弾倉の種類
自動式拳銃の弾倉には、弾丸が1列に収められているもの(シングル・カラム:単列弾倉)と、幅を広げてジグザグに収めるようにしたもの(ダブル・カラム:複列弾倉)があり、後者は銃の大きさをほとんど変えずに装弾数を大幅に増やせることから、近年では幅広く採用されている。

欠点としては、部品数が多く回転式拳銃よりも複雑な動作をするため、整備不良や訓練を受けていない者が扱うと弾詰まりや破損事故を起こしやすい。

マイナーではあるが(半)自動動作する回転式拳銃が存在する。
マシンピストルステアー M1912/P16

フルオート射撃可能な拳銃サイズの火器を、マシンピストル (Machine pistol) と称する場合がある。

ドイツ語のMaschinenpistoleやロシア語のПистолет-пулемёт、チェコ語のKulometna pistole、フランスのPistolet-mitrailleur、イタリア語のPistola mitragliatrice、ポーランド語のPistolet maszynowy、スペイン語のPistola-metralhadora、スウェーデン語のKulsprutepistolなど、英語の「マシンピストル」と同様の表現は、短機関銃を指す言葉としてヨーロッパで広く使われてきた[13]

英語のマシンピストルとサブマシンガンはしばしば同義語として扱われるが、一方でこれらを区別するべきとする立場もある。例えば、アメリカ陸軍JFK特殊戦センターが1967年に作成した資料『U. S. Army Special Forces Foreign Weapons Handbook』(陸軍特殊部隊外国製火器の手引)では、「大まかに言えば、サブマシンガンとは、肩撃ち式、空冷式、弾倉式、拳銃弾使用、フルオート射撃可能なもの」(In broad general terms a submachinegun may be described as a shoulder fired arm, air cooled, magazine-fed, chambered for pistol ammunition and capable of full-automatic fire.)であると説明し、同じく拳銃弾を使うものであっても、従来型の半自動拳銃の火力を高めるという発想でフルオート射撃機能と着脱可能な銃床などを追加した銃器、すなわちマシンピストルと混同するべきではないとした[14]。ただし、例えばグロック17ピストルから派生したグロック18Cはマシンピストルであり、MP5はサブマシンガンであるとする場合、一見するとこの2つの違いは明らかに思えるが、そこに明確な境界線を見つけるのは容易ではない。


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