拳銃
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用途について「制式拳銃」および「en:Service pistol」を参照
軍事用途拳銃を使用するNavy SEALs隊員模擬拳銃(実銃との区別のため赤い樹脂で出来ている)を使用して臨検の訓練を行うアメリカ海軍兵士、狭い空間での戦闘では拳銃が使用される場合がある

現代では将校、狙撃手重火器の操作手、車両および航空機の乗員などに、護身用として自動拳銃が支給されるのが一般的である。対して一般の歩兵部隊ではごく限定的な数が運用されるのみである[注 10][11]

拳銃は一般的な火器と異なり、ストック(銃床)やフォア・グリップ(前方銃把)の類が存在しない上に、そのものが軽量であるため制動が難しい。そのため、射撃には習熟が必要[注 10][11]な上に、野戦において小銃類に対抗することは不可能に近い。中近距離の戦闘においても、アサルトライフル短機関銃といった自動火器に比べて、有効射程や発射速度が絶対的に不足しており、不利は免れない[注 11][11]。わずかに室内などの数m以内の近接戦闘で対抗しうる程度である。さらに、小銃弾に比べて殺傷力(ストッピングパワー)が低い上に、現代の歩兵が着用しているボディーアーマー戦闘用ヘルメットすら貫通出来ない場合が増えている。それに加え用途の限られる拳銃補給兵站への余分な負担となる。

しかしながら、実用上の不利にも関わらず、副武装(サイドアーム)として未だに拳銃は現役である。つまり、自動小銃や軽機関銃などの主武装を失っても丸腰にならずに済むという心理的充足には、小型で携帯性が高い拳銃が適している。特殊部隊のように特別に訓練・予算が充実している部隊は拳銃の訓練をする場合が増える[注 10][11]。同様に先進国では軍隊の職業軍人化にともなう人員削減によって兵士一人あたりの訓練・予算が増加し、拳銃訓練を施される兵士の割合が増える傾向にある。とはいえ拳銃を携行するのは負担になるため必要な任務に限られることが多い。
近世の拳銃
先込め式のピストル拳銃を発砲する胸甲騎兵火縄銃の時代から存在した。日本では短筒(片手用)、あるいは馬上筒(両手用)と称した。しかし当時の拳銃は、単に火縄銃の銃身を短くしたものに過ぎない。そのため取扱いの手間も火縄銃と全く同じであり、サイズこそ小型であってもポケットや懐に隠し持つ事など不可能な代物であり、現代の拳銃のような護身用に使えるものではない。また、片手で撃てるように反動を減らした場合(前装式なので火薬の量の調整は容易である)威力不足で実用に耐えない場合もあった。しかしながら、銃身にライフリングが施されていない当時、銃身を短くした拳銃であっても、命中率は普通の小銃に比べてさほど劣らない利点もあった。これらは主に騎兵銃として運用された。上記の馬上筒という名称は、そこからの命名である。伊達政宗大坂の陣において騎馬鉄砲隊を編成し、後藤基次らを打ち破っているが、真田信繁には敗れている。以降の日本では戦乱が終息したため、これ以降の進歩は途絶えた。一方で西ヨーロッパでは、騎士と呼ばれる重装の槍騎兵が衰退し、三十年戦争ころまでには拳銃で装備した胸甲騎兵重騎兵の主流になった。三十年戦争においてスウェーデン軍はより軽装にした胸甲騎兵を大々的に運用し、他国でも模倣された。また、銃の点火方式が火縄からフリントロック式に移行すると、懐に隠し持つ事も可能になり、護身用として用いられるようになった。
近代の拳銃
銃身にライフリングが施されるようになると小銃と拳銃の命中率の差が顕著になった。一方で、金属製のカートリッジと無煙火薬等の発達により銃が軽量化されていくと、小銃より若干銃身が短い程度の騎兵銃であっても、騎兵用としての要求を満たせるようになった。そのため騎兵用の主要装備としては拳銃は次第に用いられなくなっていくが、サーベルを主要装備とする抜刀騎兵/槍騎兵の補助装備として用いられる事はあった。
第一次世界大戦までの拳銃
リボルバーが、そして20世紀初めには自動拳銃が発明され連射能力を獲得した。それに対して当時の小銃はまだ手動装填で連発能力が低く近接戦闘は銃剣に頼っていた。そのため拳銃の有効射程内なら小銃に対して優位に渡り合うことができた。この時期の拳銃は将校や下士官の護身用として存在感のあった時期といえる。小型であることから第一次世界大戦では塹壕戦用の武器としても使用された。しかし大戦後期には発射速度で拳銃を圧倒する短機関銃が実用化され能力不足を露呈し始めた。
第二次世界大戦以降
将校下士官の護身用に使用されたが能力不足が目立ち、拳銃弾を補給する負担を減らすという意味もあり、短機関銃やカービンに置き換えられる場合がある。さらには第二次世界大戦末期のアサルトライフルの実用化により主要な兵器として陳腐化するに至った。それ以降も歩兵の防弾装備が発達しており、拳銃弾の威力不足が顕著となっている。
警察・治安維持部隊用途グロック19の射撃訓練を行うイラク警察の警察官

拳銃は警察官の基本装備として各国で広く使用されている。

米国では、かつては安価で扱いやすく信頼性が高いリボルバーが一般的だった。しかし犯人側の重武装化に対して警察側の火力不足が目立つようになり、特に1997年のノースハリウッド銀行強盗事件を契機として、現在ではほぼすべて多弾数のオートマチックへ移行した。世界的にも自動拳銃が主流となりつつあるが、大規模な銃撃戦が稀な日本では、リボルバーは軽量である、操作が容易、調達価格などの理由からいまだ警察用拳銃の主流となっている。また中国の武装警察のように、既存装備のオートマチック拳銃を新開発のリボルバーに切り替える国もある。従前の軍用拳銃の流用では警察用として威力が過大であること、ゴム弾が使用できることが理由という[12]
信号・照明用ドイツ連邦軍のH&K P2A1信号拳銃

信号拳銃と呼ばれる専用の拳銃が存在しており、軍隊や民間で連絡や遭難時に使用される。
犯罪用途

隠し持てるため、犯罪に多用される。そのため所持規制を課している国家が多い。
市民の自衛用

元は比較的容易に所持登録できたが、1970年代以来、規制が強化されていった。

現在一部の国は市民が自衛用に所有することを認めているが、持ち歩く携帯は別の許可を要する場合が多い。
競技用競技向きに改造された自動拳銃

射撃競技ピストル種目に使用する。最初から競技用として設計されたものと、既に製造された銃を競技向けに改造したものがある。
狩猟用

拳銃の民間所持が認められている国では、猟銃とともに拳銃を持ち歩くハンターがいる。目的はさまざまで、

大型獣に遭遇した時の護身用。通常散弾銃に装填してある散弾をそのまま発射しても獣の突進を止められず、かと言ってスラッグ弾を装填しなおす時間もない場合に、大型拳銃で対処する。

動きの速いオオカミや毒ヘビに対して、長い銃身の散弾銃やライフルでは捕捉が困難なため、取り回しのよい拳銃を用いる。

ウサギや鳥などの小型動物を獲る時に、高価な猟銃弾を節約し、また食べる部分を損なわないように拳銃を用いることがある。

拳銃の種類について

拳銃には、単発式・複銃身式・回転式・自動式といった種類に大別される。
単発式・複銃身式拳銃デリンジャーが使用されたリンカーン大統領暗殺の様子を描いた絵

一本の銃身を持ち、一発の弾薬しか装填できないものを単発式と呼び、単発式の銃身を複数にして連射・斉射できるようにしたものを複銃身式と呼び、前装式銃器の時代から様々な形式のものが作られた。

後に銃身後端を切断して、ここに回転式の弾倉(シリンダー)を付けたものが作られるようになり、これが前装式回転式拳銃へと発展した。

弾丸と火薬を一体にした薬莢が用いられるようになった時代から、これを装填するために銃身部と機関部の間で2つに折って装填できる形式のものが作られるようになり、単銃身?4連銃身程度のものが製造されてきたが、本数が増えるだけ重量が増すため小型の製品が多かった。

デリンジャーは上下二連銃身の小型拳銃で、中折れ式拳銃の代表例であり、手の平や袖の中に収まるコンシールメント・ウェポン、つまり隠すのが容易で、目立つ拳銃を取り上げられた場合の最後の抵抗手段としても有名である。.41リムファイヤのレミントン・ダブルデリンジャー、.22LRのハイスタンダード・デリンジャーなどがある。

1865年に第16代アメリカ大統領リンカーン暗殺に用いられたのは、前装式の単発小型銃フィラデルフィア・デリンジャーであり、これが有名となったため、小型拳銃の商品名としてデリンジャーという名称が多用されるようになった。

近年では、銃身と撃鉄を交換するだけで様々な弾丸を撃つことが出来るトンプソン・コンテンダーが、シルエット競技(重い鉄板を撃ち倒す)で人気が高い。
回転式拳銃詳細は「回転式拳銃」を参照ナガンM1895


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