担子菌
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それ以外のものの多くは、何らかの形の子実体を作る。

一般的な印象としてのキノコの形は、柄の先に、傘型の部分があり、その下面にひだがあるものである。これらは一般にハラタケ類と呼ばれる。子実体はそのすべてが菌糸からできており、傘の下面、ひだの側面に担子器が並ぶのが普通である。これらのキノコは、柄を縮め、傘を閉じた形で、あるいはそれがさらに皮をかぶった形で形成され、一気に柄が伸びて傘が開くことで完成する。傘の裏側のひだは、管状になっているものもある。これらのキノコは肉質で、成熟の後、一週間くらいで腐り、早いものはその日のうちにとろけてしまう。

もう一つ、傘を作るキノコで別の型として、非常に堅い子実体を作るものがある。カワラタケサルノコシカケなどであるが、これらのキノコは、傘の裏面に管があり、管の内側の側面に担子器が並ぶ。子実体は堅く、傘を開いた形で、周囲に向かってゆっくりと成長しながら胞子を作る。子実体は何ヶ月もそのまま残っている。

傘型にならないキノコとしては、スッポンタケホコリタケなどがある。スッポンタケは長い柄の先に閉じた傘のようなものがあって、その表面に胞子を含む粘液が付いている。この胞子は、スッポンタケの子実体の柄が縮んだ状態で、袋の中にあるときに形成され、そこで成熟する。ホコリタケは、袋状で、内部に胞子ができる。出来上がる子実体の形は全く異なるが、胞子が袋の中に形成される点では共通している。このようなものをまとめて腹菌類と呼ぶ。

ほかに、キノコらしくないが、キクラゲシロキクラゲなど、寒天質ないし膠質の、ひだの多い子実体を作るものがあり、それらをまとめて膠質菌(こうしつきん Jerry fungi)とよぶ。担子器に特殊な構造を持つものが多い。

また、ロウタケなどのロウタケ目 Sebacinalesは地上で寒天質または膠質の不定形な子実体を形成し、時には植物などを覆うため変形菌などと間違えられる。
担子器

二核菌糸の中で核が融合し、減数分裂して胞子を出芽するのが担子器のしくみである。一般的なキノコ類では、担子器は楕円形で、先端方向に担子胞子を出芽する。担子胞子は短い柄で担子器と繋がり、放出されるときには、柄の部分から打ち出されるようにしてはずれる。いわゆる射出胞子である。

一般のキノコでは、担子器は本体から直接に短い柄が出て担子胞子をつけるが、核融合を起こした細胞から、はっきり区別できるような発達した枝をのばして担子胞子をつけるものがある。それは以下のようなグループである。

シロキクラゲ類は、担子器が縦方向に放射状に四裂し、それぞれから長い柄が出て担子胞子をつける。

アカキクラゲ類は、担子器先端が、細胞は分かれないが二またに分かれ、先が伸びて担子胞子をつける。

キクラゲ類は、担子器が伸びて横に四裂し、それぞれの細胞から柄が伸びて担子胞子をつける。

サビキン類では、担子器は冬胞子として放出され、そこから枝をのばし、その枝が横分裂で四裂し、それぞれの細胞から柄が伸びて、担子胞子を作る。

クロボキン類では、担子器は厚膜胞子として放出され、それがサビキンの場合のように発芽するが、分裂した枝の細胞は、直接に担子胞子に当たる細胞を出芽する。

分類

担子菌の分類体系はその変転が著しい。

古典的には子実体の構造が重視された。その結果子実体を作らないサビキン類とクロボキン類を独立させ、子実体を作るものはいわゆるキノコ型のものと腹菌類を区別するのが通例であった。その結果は以下のようなものである。

半担子菌綱:サビキン・クロボキン

菌蕈綱:一般キノコ

腹菌綱:腹菌

しかし菌類は微生物であり、その特徴には顕微鏡的な部分の意味が大きい。たとえば担子器にはサビキン、クロボキンとキノコ類で大きな違いがあり、またキクラゲ類にも通常のキノコ類とは異なった形のものがあるが、腹菌類のそれは一般のキノコとさほど変わらない。この点を反映させると、たとえば以下のような体系となる。

サビキン綱:サビキン

クロボキン綱:クロボキン

真正担子菌綱:一般キノコ・腹菌

異型担子菌綱:膠質菌

分子系統による情報は、このような問題にある程度の判断を出した。以下にHibbert et al.(2007)による体系を綱までの範囲で示す。内容としては、以下のようなものである[1]

サビキン類とクロボキン類は独立の亜門となった。これらには以前はここに含めていなかった小群がいくつか追加されている。

以前から問題視されていた腹菌類は多系統であることが明らかとなった。そのため腹菌類と菌蕈類と一緒にまとめられ、膠質菌類も個々に含められた。

これらは以前からの体系と大まかな点では一致するものである。ただしそれぞれの群の内部、科や目についてはあちこちに大きな変更がなされている。それ以外の群についても非常に多くの組み合わせの変更や、小さな群が独立させられた例も多い。

Basidiomycota:担子菌門

Pucciniomycotina:サビキン亜門

Pucciniomycetes

Cystobasidiomycetes

Agaricostilbomycetes

Microbotryomycetes

Atractiellomycetes

Classiculomycetes

Myxiomycetes:ミクシア菌綱

Cryptomycocolacomycetes


Ustilagiomycotina:クロボキン亜門

Ustilagiomycetes:クロボキン綱

Exobasidiomycetes:モチビョウキン綱


Agaricomycotina:ハラタケ亜門

Tremellomycetes:シロキクラゲ綱

Dacrymycetes:アカキクラゲ綱

Agaricomycetes:ハラタケ綱


(所属不明)

Entorrhizomycetes:エントリザ菌綱

Wallemiomycetes:ワレミア菌綱



注釈・出典^ 国立科博(2008)p.107-110

参考文献

ジョン・ウェブスター/椿啓介、三浦宏一郎、山本昌木訳、『ウェブスター菌類概論』1985,講談社

David S. Hibbert,(以下67人省略),(2007), A higher-level phylogenetic classification of the Fungi. Mycological Reseaech III,509-547

国立科学博物館、『菌類のふしぎ ―― 形とはたらきの驚異の多様性』、2008、東海大学出版会
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に関する情報があります。

典拠管理データベース: 国立図書館

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