押井版ルパン三世
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当初、押井が声をかけた若手のアニメーターたちの多くは「何故、今更ルパン?」とあまり乗り気ではなかったが、押井は「今の時代だからこそ、ルパンが必要なのだから」と説得し参加を求めた[1]。また、押井は『アニメージュ』(徳間書店)1984年12月号から「映画『ルパン三世』制作おぼえがき」の連載を開始した[6]

しかし、ルパンは子供も楽しめる娯楽作品であるべきと考える読売テレビ東宝のプロデューサーは、「ルパンは存在しなかった」という結末が提示された押井の脚本に「訳が判らん」「理屈っぽい」と強固に反対した[7][8]。また「ルパンに動きがない」「アクションに乏しい」などの意見もあり、スタッフのミーティングでは内容的に営業も厳しいと告げられたという[9]

別のストーリーを求められ、ミーティングに出席した飯岡順一は「折角のチャンスだから」と大和屋竺など別の脚本家を起用し一からやり直してみてはどうかと提案したが、押井は明確な答えを出さなかった[9]。押井は『ルパン三世』をやるとしたら当初提示した案しか考えられないというスタンスだったため、後日、正式に降板する。これにより、押井が『ルパン三世』を監督するという企画は潰れた。

押井が脚本段階で降板したため、作画作業には入っておらず、集められたアニメーターは1カットも描かないまま解散した。この企画の頓挫によって、それまで組んで仕事をしていた何人かのスタッフを押井は失う結果となった[10]。押井にとって自信があった企画だけに、しばらく立ち直れないくらいショックだったという。後に押井は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー[注 1]の成功で調子に乗っていて、甘かったと回想している[8]

押井が降板までに半年を費やしたため[10]、『ルパン三世 PartIII』のスタッフを中心とした新たなスタッフで残された短い制作期間の中、劇場作品を完成させた。それが『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』である。
押井の構想と後代の作品への影響

押井守の狙いは「建築や都市環境の細部を美術設定として克明に再現することで新たなアニメ表現を獲得すること」だけだったといい、そのために建築の勉強をし、資料集めをしていた[11]。押井版ルパンで使われるはずだった様々な設定やモチーフは、後の『天使のたまご』『機動警察パトレイバー the Movie』などの押井作品に散りばめられることになる[10][12][13]。押井いわく「『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』でやっとルパンを吹っ切ることができた」という[14]

2000年、押井に対してあらためて新作ルパンの監督のオファーがあり、このときは「好きにしていい」と言われたものの、押井は断った。その理由について問われると、本人は「主人公に腕毛が生えてるのが気に入らないから」とうそぶき[15]、2008年には「今の時代にあんなキャラを成立させられない」と語った[16]

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}なお、ルパンの存在について問うテーマや原爆が取り上げられている点は2008年のOVA『ルパン三世 GREEN vs RED』と共通している[独自研究?]。

計画から数十年を経た2021年9月1日、『ルパン三世 PART6』のゲスト脚本の一人として押井が参加することが発表され[17]、第4話と第10話を担当した。今野敏主催の空手塾で親交のあった大倉崇裕からの依頼で二つ返事で引き受けたという[18]
後の押井守作品への流用

2012年に公開されたアニメ映画『009 RE:CYBORG』は、当初は押井守が監督に予定されており、そのときのアイデアは天使の化石がおさめられた巨大な塔が東京に建造され、そこに主人公の島村ジョーが登っていくというもので、本作の構想の一部が流用されたものだった[19]


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