押井守
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2018年4月、国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致を目指すプロジェクト「ILC Supporters」の発起人を務めることを発表[44]

2019年6月、久しぶりのTVアニメ監督作となる『ぶらどらぶ』の制作を発表[45]。新たに設立された製作会社いちごアニメーションが単独出資する。最終的に発表はネット配信となり、2020年12月の「第1話特別編」の発表を経て、2021年2月から公開された[46][47]。2021年7月から地上波、BSで放送開始。
作風

押井守が多く用いる映像表現として、アニメに
レンズの概念など実写的要素を取り入れたレイアウトシステムの導入、2Dの手描きのアニメと3DのCGIの融合、更にそれら素材にデジタル加工を施し、手描きの絵やCGIでは得られない質感を加えたり、画面全体に統一感を持たせるエフェクト処理(ビジュアルエフェクツ)などがある。

「映画の半分は音である」と語るほど音響と音楽を非常に重視する。『紅い眼鏡/The Red Spectacles』以降の音楽はほとんどを川井憲次に任せている。近年の作品では音響作業を米国のスカイウォーカー・サウンドで行うことが多い。

虚構と現実をテーマとして用いることが多い。これに付加して、同じ状況を何度も繰り返すなど「永遠性」を意識した演出も多用される。

「映画は単に映像の快感原則の連続によってのみ成立するのではなく、あえて流れに逆らう部分が必要」「現実とは異なり、映画の中のキャラクターとも異なる、映画の中だけの時間を演出する。それがない映画は、物語を追いかけているだけであって、テレビドラマと変わらない。特に実写は一見無駄に見える作業やシーンをこなさないと映画にならないし、アニメーションにも当てはまる」[48]という考えから、多くの割合でストーリーの進行とは直接関係ないダレ場が挿入される。

職業監督として、決められた予算で納期までに仕上げることをポリシーとしており、ほとんどの作品で予算と納期を守っている。

現場監督として、絵コンテ作業を除いては、一番大切なのは「どの様に各スタッフの力を引き出すか」「スタッフが読んだ世界が、予想もしなかった新しい表現・世界観が生まれる」と考え、敢えて止めないで専門のスタッフに一任することもある。ただしこれは飽くまで、制作現場・映画そのものの生命線をまもるために「信頼できるスタッフと相棒関係を結んだ」場合に留めている[49]

脚本家として、まず大まかな粗筋・構成を作り、縦筋を全部書き出して、無駄なエピソードがないかどうかをチェックし直して、固まった縦筋を元にキャラクター同士の対話を書き込んでいく様にしている。特に「このキャラクターはどういう役割なのか?本当に必要なのか?どこで登場して、どこで退場するのか?」を脚本執筆の時点で固めていく。一番重視しているのは「対話」であり、「一つか二ついい掛け合いがあれば、それを目指して絵コンテを切れる」と話している。原作付きの作品を手掛ける場合には、原作を何度も読んで、使える台詞を全部拾い出して、書き直す様にしている[50]

デジタル技術の登場により、実写アニメーションは融合して区別できなくなる、というのが年来の押井の持論である。『ガルム戦記』において、その自身の理論を現実に展開するはずであったが、パイロット版を作ったあと、制作は途中で凍結された。このパイロット版の制作で得たノウハウは後に『アヴァロン』に活かされている。

アニメにおけるレイアウトシステムの重要性を訴え、自らの作品における大量のレイアウトを解説した『METHODS 機動警察パトレイバー2 演出ノート』を上梓している。

遠浅の東京湾が埋め立てられる過程を見て育ったためか、作品には埋立地が多く登場する。

人物像

影響を受けた映画監督は、
ジャン=リュック・ゴダールを筆頭に、ヴィム・ヴェンダースアンドレイ・タルコフスキーフェデリコ・フェリーニルイス・ブニュエル鈴木清順大和屋竺フランソワ・トリュフォーイングマール・ベルイマンアラン・レネなど。好きな監督にリドリー・スコットデヴィッド・リンチドン・シーゲルサム・ペキンパージョン・カーペンターを挙げている[51]

嫌いな映画監督には、ウッディ・アレンマイケル・ムーアティム・バートンを挙げている[52]

55歳を過ぎてから空手を習い始めた[53]。その理由については「いまから自分の身体を鋼のように鍛えるということではなくて「どううまく使おうかな」というふうなことなんですよ」と今野敏との対談で述べている[53]

無類の好きで、犬を飼うためだけに熱海へ引っ越したと公言している。魚、鳥とともに犬を作品のモチーフとし、自らの愛犬を作品によく登場させる。愛犬雑誌の『WAN』(ペットライフ社)に連載「熱海バセット通信」を執筆した。かつては犬(バセットハウンド)の絵柄がデザインされたTシャツやトレーナーを好んで着用していた。

高度化したネット社会を扱った作品を複数手がけているため、ネットの達人と誤解されることが多くあるが、実際はまったくと言っていいほどインターネットを利用せず、時々調べものに使う程度だという[54]。2008年当時は携帯電話も持たず(それ以前に電話が嫌いと述べている)、「電話をかけるとき時は相変わらずテレフォンカードを手に公衆電話を探しているような有様」と記していた[54]。2012年の著書では、東日本大震災の折に携帯電話をかけようとしたがつながらず、ちょうど治療を受けていた歯科医から「ありったけの硬貨を借り受けて」公衆電話をしたと記しており[55]、2011年時点では携帯電話を所持していたとみられる。ネットの掲示板などで自身の作品についての議論が行われていることについて2008年の著書で「筆者が正体を現わさない批評に耳を傾けるつもりはない」と匿名での発言に興味のないことを示した上で、「もしも僕に何か言いたいことがあれば、いっそ手紙でもくれたほうがいい。しかし、実際はそんな手紙が来たためしはほとんどない」「ドイツの女子中学生が定期的に手紙をくれるが、ほんとうにそれくらいだ」と語っている[54]

コンピューターゲームの原作者であると同時に、自らもゲーマーである。ゲーム雑誌『コンプティーク』および『電撃王』にエッセイ『注文の多い傭兵たち』を連載。製作に関わったゲームには、ファミコンゲーム『サンサーラ・ナーガ』、スーパーファミコンサンサーラ・ナーガ2』、メガドライブ『機動警察パトレイバー ?98式起動せよ?』、そして昨今ではPSP『機動警察パトレイバー かむばっく ミニパト』がある。またコンピュータRPGウィザードリィ』の影響を強く受けており、『機動警察パトレイバー2 the Movie』には「トレボー」「ワイバーン」など『ウィザードリィ』にちなんだ名前が劇中に登場する。『アヴァロン』に至っては、『ウィザードリィ』を押井が独自の解釈で映像化したものであり、押井が脚本を担当した『パトレイバー』TV版の『地下迷宮物件』および『ダンジョン再び』は、エピソードそのものが『ウィザードリィ』のパロディとなっている。

戦車や銃、戦闘機を愛好するミリタリー好きである。アルバイトで加わったアニメ『名犬ジョリィ』では、必要以上にガンの描写にこだわった絵コンテを切った。下でも触れているが、人手が足りない『うる星やつら』初期に、戦車の原画を描いたことがあった。『うる星やつら』の演出を担当した最後の話では、第二次世界大戦時代の戦車や航空機を用いて攻防戦を描いた。特に好きな航空機は、旧日本陸軍の戦闘機「飛燕[56]。映画『ミニパト』でも銃について薀蓄を披露している。初のOVAダロス』製作時には、作画スタッフをビルの屋上に集めて目の前でモデルガンを撃ち、薬莢は均一に飛ばないことを力説した。

夫人の影響で、2000年代頃からはサッカー観戦も趣味となった。贔屓のクラブチームはジュビロ磐田チェルシーFCとその元監督ジョゼ・モウリーニョのファンであり、UEFAチャンピオンズリーグも非常に楽しみにしている。


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