技術士(補)登録をすると、技術士(補)の名称を使用する権利を得る反面、以下の義務を負う。これらの義務に違反すると、技術士法 第36条の2の規定により、技術士(補)登録を取り消されることがある。
技術士法 第44条 (信用失墜行為の禁止)
技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
技術士法 第45条 (技術士等の秘密保持義務)
技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても、同様とする。
技術士法 第45条の2 (技術士等の公益確保の責務)
技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たっては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。
技術士法 第46条 (技術士の名称表示の場合の義務)
技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。
技術士法 第47条の2 (技術士の資質向上の責務)
技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。
秘密保持義務には刑事罰も規定されている。
技術士法 第59条(秘密保持義務に違反した場合の罰則)
第45条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
技術士法 第59条第二項(親告罪)
前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
非技術士の技術コンサルタントが秘密を漏洩しても民事責任を問われるのみだが、技術士(補)は技術士(補)登録を取り消されるだけでなく刑事罰にも処せられる可能性がある。 他の技術系資格が専門分野ごとに制度を設けているのに対して、技術士は科学技術におけるほとんどすべての領域に渡る分野をカバーしている[4]。以下の21の技術部門が設けられており、各部門はそれぞれ部会を作り活動している。船舶・海洋部門と航空・宇宙部門は同一の部会として活動しており、総合技術監理部門では部会が設立されていないことから、19の部会がある。
技術部門
機械部門
船舶・海洋部門
航空・宇宙部門
電気電子部門
化学部門
繊維部門
金属部門
資源工学部門
建設部門
上下水道部門
衛生工学部門
農業部門
森林部門
水産部門
経営工学部門
情報工学部門
応用理学部門
生物工学部門
環境部門
原子力・放射線部門
総合技術監理部門
試験「技術士試験」を参照
評価
民間での評価
IT業界
政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン実務手引書第6章では、政府情報システムの調達に係る入札要件の記載例に、技術士情報工学部門または技術士総合技術監理部門(情報工学を選択科目とする者)が記載されている[13]。ただし、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ試験など)合格者や情報処理安全確保支援士、「同等の能力を有する者」と併記されており、技術士(情報工学部門)であることを必須とはされていない。
情報処理学会が実施する認定情報技術者制度において、技術士情報工学部門または技術士総合技術監理部門(情報工学を選択科目とする者)は個人審査及び審査料の一部を免除される[14]。
建設業界
建設業法に基づき、公共工事の入札に参加する企業の経営事項審査項目のひとつとして技術士取得者数が評価されている[15]。
国土交通省の建設コンサルタント登録制度では、技術士登録をした者を常勤の技術管理者として設置することを必須条件としている[16]。建設業は大きく分類すると「建築」「土木」に分かれ、「建築」分野は建築士が設計等の業務独占資格として存在する為、技術士は建築士の独占業務以外である「土木」分野や「建築」の施工分野において「建設コンサルタント」等の業務を行っている。
一部の企業例
人材活用の基準として評価する企業もある。例えば大成建設では、設計・技術およびプロジェクトに係わる部署や、技術研究所に、技術士を積極的に配置している[15]。
資格取得者に報奨金を支給する企業もある。例えば三菱電機では、博士と並び技術士を最高位に位置付けて同レベルの報奨金を支給している[17]。
収入面
2005年(平成17年)以降、賃金構造基本統計調査の調査対象職種として賃金が把握されている[18]。
「年収ラボ」の調査によると、2015年における技術士の平均年収は596万円であり、資格別年収ランクは第10位である[19]。
公的な評価
労働基準法第14条2の規定に基づき厚生労働大臣が定める「高度の専門的知識等」の基準を満たす資格の一つとされている[20][21]。
高等教育機関の教官や研究者の求人では、博士(工学)または技術士を取得していることを応募資格としている事例がある[11]。