戸籍
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"夫婦別姓の解禁論"などの理由から、戸籍制度の廃止を提唱する者もいる(橋下徹[18]ら)。

戦前の戸籍謄本は手書きだったが、枠内に収めるため小さな字や略字を多用することから判読が困難であり、同じく手書きだった登記簿謄本と共に行政手続に支障があった[19]。2022年、凸版印刷人工知能を利用し戸籍謄本や登記簿謄本の手書き文字を判別するシステムを開発した[19]
無戸籍者問題

離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子とみなす嫡出推定(民法772条)や、夫や元夫からの追跡や暴力を避けるために母親が出生届を出さなかったなどのために戸籍がない無戸籍者がいる。法務省が把握しているのは838人(2021年5月10日時点)、「民法772条による無戸籍児家族の会」は1万人以上と推定している。戸籍を得るためには家庭裁判所で就籍許可を得て、就籍届を市区町村に提出する。裁判調停となるケースも年3000件程度あるが、嫡出推定などが障害となり500件程度は認められない傾向が続いている[20]

無戸籍であっても出生証明書や住民票は取得でき、住民票に基づく権利や行政サービス(義務教育など)を受けられる。ただし、婚姻届や旅券(パスポート)取得はできない。責められるような違法行為だと思い込み、困窮しても自治体に相談せず、餓死に追い込まれた例もある。このため、無戸籍者を含む孤立・困窮世帯の把握や相談対応を強化する自治体もあるほか、法務省は再婚後に生まれた子供は再婚した夫の子とする法改正の準備を進めている[20]

母親が匿名で出産し子供に名前を伝えない「内密出産」の場合、出生届は母親の欄が空欄として提出されるが、法務省では、「一般論として出生届の母親の欄が空欄だとしても、日本国籍だと認められれば戸籍に記載する」との見解を表明している[21]
内容戸籍謄本
戸籍簿を電算化していない自治体のもの戸籍全部事項証明書
戸籍記録を電算化している自治体のもの

戸籍簿は、日本国籍を有する者のほとんどについて男女の性別、氏名や生年月日などの基本情報と、婚姻などの事跡が記載されており、行政事務で極めて重要な役割を持っている。戸籍は日本国籍を有する者の身分関係を証明する唯一無二の公的証書である。戸籍は和紙に印刷してあるが、以前は枠以外は手書きで書くか、和文タイプライターにより記入されていた。

戸籍簿は、一人もしくは2世代を最大とする複数人の生年月日・死亡年月日、性別、氏名、続柄(血縁関係)、婚姻歴・離婚歴、養子縁組歴などの情報が記載されており、戸籍の附票は現住所と転居履歴が記載されている。

この戸籍簿と同一の記録事項を、一定条件のもとで請求があれば、戸籍簿を管理している自治体(本籍地を所轄する自治体)が公的証明書類として発行する。戸籍簿の電算化が行われる以前は戸籍簿のコピー(コピー機の導入以前は手書きによる写し)に自治体の長の公印が押印されたものが発行される、そしてこれを「戸籍謄本」という。電算化が行われて以後は、戸籍簿と同一の記録事項を出力印字して自治体の長の公印が押印された書類が発行される、そしてこれを「全部事項証明書」という。戸籍謄本および全部事項証明書は戸籍簿に登録されている全員の記録事項が記載されるが、特定の一人のみ抽出して記載した書類をそれぞれ「戸籍抄本」「個人事項証明書」という。

日本の戸籍は日本国籍を有する人物のみが記載され、外国籍の者は、日本国籍を有する者の配偶者や父母としてのみの記載がされる。住民基本台帳は記載されているが戸籍は記載されていない人物(住民票及び個人番号がある無戸籍者)も存在し得る。

なお、皇室を構成する天皇上皇皇族[注 3]は一般国民のような戸籍を持たず、天皇・上皇・皇族の身分に関する事項は「皇統譜」(こうとうふ)に登録される[22]皇室典範の規定により皇族の身分を離れた者については、皇統譜にその旨が記載され、法律の規定に基づき新たな戸籍が編製されるか既存の戸籍に編入される。一方で、婚姻により非皇族から皇族になった者は戸籍から除かれる[23]

天皇・上皇・皇族には戸籍法が適用されないため、住民基本台帳法も適用されない[24]。つまり、天皇・上皇・皇族には戸籍も住民票もない[注 4]
戸籍の届出の種類

本人の本籍地または届出人所在地でしなければならない。(第25条)


書面または口頭ですることができる。(第27条)※実務では、口頭届け出を受け付けることはまず無く、書面を要求される。口頭の場合は、調書を役人が作らねばならず、面倒だからである。

出生届(戸籍法第49条の届)
子が出生したときに14日以内に提出する届出である。医師等による出生証明書を添付する(一般的にA3判の用紙の右半分に欄が設けられている)。
婚姻届(戸籍法第74条の届)
婚姻(結婚)をする場合に必要な届出である。証人2名の署名押印が必要。
離婚届(戸籍法第76条の届)
離婚をする場合に届ける。筆頭者でない側(配偶者)が、戸籍を抜けることになる。協議離婚と裁判離婚(調停、審判、訴訟)との2種類がある。
死亡届(戸籍法第86条の届)
死亡を知ってから7日以内に届ける。死亡診断書または死体検案書の添付が必要である(一般的にA3判の用紙の右半分に欄が設けられている)。身元不明で引取者がいない場合(いわゆる行き倒れ)は行旅死亡人といわれ、引取り人を探すために市区町村長名での公告が官報に掲載される。
認知届(戸籍法第60条の届)
(主に男性が)生物学的な自分の非嫡出子を法的な自分の実子とするための届出である。子の母が別の男性と結婚している場合、子はその夫婦の嫡出子となる(離婚後300日以内の出産の場合を除く)ので、嫡出否認もしくは親子関係不存在の訴えが認められるまで認知できない。
養子縁組届(戸籍法第66条の届)
養子を受け入れるための届出である。年上の人物と尊属と自分の嫡出子は養子にできないが、嫡出でない実子と、実妹弟、実孫などは養子にできる。
養子離縁届(戸籍法第70条の届)
養子を解消するための届出である。
特別養子縁組届
特別養子を受け入れるための届出である。実親が養育に不適格であるなどの特段の事情がある場合のみに認められる。通常は15歳未満でなければ特別養子縁組はできず(ただし15歳未満から養親候補から事実上養育されており、やむを得ない事由で15歳までに申し立てが出来ない場合は15歳以上でも可能)、縁組は家庭裁判所の審判が必要。
特別養子離縁届
特別養子を解消するための届出である。特段の事情がある場合のみ認められる。
離縁の際に称していた氏を称する届(戸籍法73条の2の届)
養子離縁によって旧姓に戻った人が養子時の苗字に戻るための届出である。
離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)-いわゆる「婚氏届」
離婚によって旧姓に戻った人が婚姻時の苗字に戻るための届出である。離婚から3ヶ月以内に届け出なければならない(離婚届と同時に届け出ることも可)。
親権(管理権)届
「親権者指定」「親権者変更」「親権喪失」「親権喪失取消」「親権辞任」「親権回復」「管理権喪失」「管理権喪失取消」「管理権辞任」「管理権回復」の10種類の届出があり、子供を養育する権利と財産を管理する権利についての手続きを行うための届出である。
失踪届(戸籍法第94条の届)
ある人が平常地域で行方不明失踪)になった場合(普通失踪)は、最後の目撃日から7年後に家庭裁判所が6ヶ月間の失踪宣告を行い『官報』などに掲示する。戦地での作戦行動中行方不明や沈没船に乗船していたなどの場合(特別失踪)は、戦争終結あるいは船の沈没から1年後に家庭裁判所が2ヶ月間の失踪宣告を行い『官報』などに掲示する。それでも発見されない場合は失踪が確定し、本届を提出すると失踪した人は死亡したものとみなされ、相続などが行われる。
復氏届(戸籍法第95条の届)
配偶者と死別した人が、旧姓に戻る場合に行う届出。
姻族関係終了届(戸籍法第96条の届)
配偶者が死亡してもそのままでは配偶者の血族との間に姻族関係があるため、姻族が生活困難になった場合などに扶養義務がある。姻族との関係を終了させるための届出である。
推定相続人廃除届(戸籍法第97条の届)
推定相続人が被相続人に対して著しい虐待などをした場合に推定相続人の遺留分を含む相続権を剥奪する届出である。廃除の裁判が確定した場合は裁判の謄本を添附して届け出なければならない。
入籍届(戸籍法第98条の届)
父母の離婚・養子縁組・養子離縁などによって父母と別戸籍になった子を父母(父または母)と同じ戸籍に入れるための届出である。
分籍届(戸籍法第100条の届)
特定の一人のみ戸籍を分ける際に出す届出である。18歳以上の未婚者(つまり筆頭者と配偶者以外の者)であれば可。戦前の「分家届」と似ているが、全く異なるものである。
国籍取得届(戸籍法第102条の届)
国籍法の規定により外国人が日本国籍を取得した際にする届出である。
帰化届(戸籍法第102条の2の届)
外国人が帰化した際にする届出。法務大臣による帰化の許可の告示から1か月以内にしなければならない。
国籍喪失届(戸籍法第103条の届)
日本国籍を持つ者が外国籍を自己の意思で取得した場合は日本国籍を自動的に喪失するので(国籍法11条)、外国籍を得た時は日本国籍の自動喪失を届け出ねばならない。
国籍選択届(戸籍法第104条の2の届)
外国籍を有する日本人が日本国籍を選択する場合に届け出る(国籍法14条)。重国籍になったのが18歳未満であれば18歳が期限であり、18歳以上であればなった時点から2年が期限である。期限を越えた場合、法務大臣は書面により当人に国籍の選択をすべきことを催告することができる(国籍法15条)。
外国国籍喪失届(戸籍法第106条の届)
外国の国籍を有する日本国民が当該外国の国籍を喪失した場合に届け出る。
氏の変更届(戸籍法107条1項の届)
家庭裁判所の許可を受け、氏(苗字)を変更する。
外国人との婚姻による氏の変更届(戸籍法107条2項の届)
外国人と結婚した日本人はそのままでは氏(苗字)は変わらないが、結婚後6ヶ月以内であればこの届出で苗字を変えることができる。
外国人との離婚による氏の変更届(戸籍法107条3項の届)
外国人と結婚後、107条2項の届出によって氏(苗字)を変えた人が、離婚後3ヶ月以内に旧姓に戻るための届出である。


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