この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
日本の戸籍制度(こせきせいど)は、国民一人一人を(日本国内外の居住に関係なく)出生関係により登録する制度である。居住地を登録し、地方公共団体との関係を明示する住民登録制度とは異なる。居住地は住民票と関連付けて戸籍の附票に記載されており、居住地の追跡にも利用することができる。
戸籍は元来は徴税・徴兵のために設けられ、家制度の根幹であった。しかし第二次世界大戦後の民法改正に伴う戸籍法改正により、現在の目的は大きく変わった。国民健康保険や国民年金などの行政サービスに用いるデータは住民票を基にしており、戸籍の果たす役割は低下している[15]。
現在では、出生(親と生年月日)、氏名、婚姻(配偶者)、子・養子縁組、国籍の離脱等の個人の関係(法的に「身分関係」と呼ぶが差別的な意味ではない、以下同様。)を明確にするものとなっている。婚姻・離婚の届出や日本国旅券(パスポート)の発行にかかわるほか、親族の関係を証明する唯一の手段として相続人の特定にも活用される[16]。「日本における結婚」も参照 大前提として、よほど手の込んだ不正の無い限り、「出生から死亡までの履歴」が記録され、住民基本台帳制度との連携により、戸籍の附票を閲覧すれば転居の履歴が判明し、市町村名までの出生地は、移記すべき事項と定められているので本人であることの真正性が確実であり、転籍や分籍をした後の戸籍にも記載され、相続などの手続きの際に取るべき手順が明確である。 婚姻や本籍の移転により新戸籍が作られるシステムでは、婚姻や相続の際に、一つの戸籍だけでなく何重にも遡り各地の戸籍を取得しないと、婚姻歴や子の有無が分からないことがあり、一つの戸籍でその者の出生から婚姻・離婚、死亡まで網羅される個人編纂のシステムと比べると不便であると言われているが、個人番号(マイナンバー)制度の導入により、この問題は将来的に解決するとされる[注 2]。 戸籍謄本の身分事項【従前戸籍】(「前の本籍地」ではなく「前の戸籍」)は、前に記載されていた戸籍の筆頭者(婚姻または分籍により新たに戸籍を編製した場合は親、離婚により新たに戸籍を編製した場合は前配偶者。)と本籍地が記載される。転籍歴の記載は無い(戸籍事項・戸籍改製【改製事由】平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製)。 現行制度では外国人(日本国外の外国籍者)と結婚しない限り夫婦別姓が不可能なため、一方の者は結婚前まで使い続けていた名字が公的証明で通用しない。そのため、選択的夫婦別姓制度の導入を望む声が近年増加している[17]。 日本の戸籍法により出生後14日以内に氏名と性別を登録する義務を親権者は負うが、性分化疾患などにより出生時の段階で性別の診断が確定しない場合は、医師の診断書を添えれば生後14日以降でも性別留保ができる。詳細は「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」を参照 性同一性障害当事者で、性別の移行手術をした者は、戸籍上の性別と自身の術後の身体の状態が一致せず日常生活で混乱が起きることがある。従来は性別の変更が認められてこなかったが、2003年に性同一性障害特例法が成立し、2004年に施行した。申し立てを行い、必須要件を満たし第二項の要件を踏まえて厚生労働省の定める2人以上の医師の診断書と出生から全ての戸籍謄本及び本人の申し立て書などの受理により裁判官が全ての要件等を満たしたと判断されれば、従前の戸籍は残るが除籍され新たに性別を変更できるようになった。 現在では世界的に戸籍制度のような血縁・婚姻単位の国民登録制度を持つ国は少数派であり、主要国等では日本、中華民国(台湾)のみである。第二次世界大戦後に家制度は廃止されたが、戸籍制度は残ったために、地方自治体にも国民にも、住民登録との重複業務となっている部分もある。 "夫婦別姓の解禁論"などの理由から、戸籍制度の廃止を提唱する者もいる(橋下徹[18]ら)。 戦前の戸籍謄本は手書きだったが、枠内に収めるため小さな字や略字を多用することから判読が困難であり、同じく手書きだった登記簿謄本と共に行政手続に支障があった[19]。2022年、凸版印刷は人工知能を利用し戸籍謄本や登記簿謄本の手書き文字を判別するシステムを開発した[19]。 離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子とみなす嫡出推定(民法772条)や、夫や元夫からの追跡や暴力を避けるために母親が出生届を出さなかったなどのために戸籍がない無戸籍者がいる。法務省が把握しているのは838人(2021年5月10日時点)、「民法772条による無戸籍児家族の会」は1万人以上と推定している。戸籍を得るためには家庭裁判所で就籍許可を得て、就籍届を市区町村に提出する。裁判・調停となるケースも年3000件程度あるが、嫡出推定などが障害となり500件程度は認められない傾向が続いている[20]。 無戸籍であっても出生証明書や住民票は取得でき、住民票に基づく権利や行政サービス(義務教育など)を受けられる。ただし、婚姻届や旅券(パスポート)取得はできない。
利点と欠点
無戸籍者問題