戦闘における勝敗が戦力の優劣によって決定付けられることを示した数の法則(Law of numbers)はクラウゼヴィッツによって提唱された。彼の見解によれば、部隊の数量が勝利を決定し、数的な優位性こそが唯一の勝利の原因である。またクラウゼヴィッツは戦闘を分析する上では部隊の性質にも着目することで、この数の法則は時代や地域を問わずあらゆる戦闘に一般的に適応可能であることを主張する。クラウゼヴィッツのこの理論は後に戦闘の理論として明確に整理されることになり、部隊の戦闘能力は両軍のそれぞれの数的な戦力と戦力の性質、そして戦闘に影響を及ぼす環境変数の積によって求められ、青軍と赤軍の両軍の部隊の戦闘能力を割った数が戦果として求められることを明らかにした。これを数式として表すと次のようになる。 O = N r V r Q r N b V b Q b {\displaystyle O={\frac {N_{r}V_{r}Q_{r}}{N_{b}V_{b}Q_{b}}}}
Nは部隊の兵員、Vは戦闘に影響する環境の変数、Qは部隊の特性、rは赤軍、bは青軍、Oは戦闘結果であり、戦闘結果が両軍の戦闘能力によって定量的に決定されることが分かる。同様の法則化はランチェスターによるランチェスターの法則やオシポフによるオシポフ方程式としてまとめられている。
摩擦詳細は「摩擦 (クラウゼヴィッツ)」を参照
クラウゼヴィッツは現実の戦闘が机上のそれと全く異なる性格を持つ要素として摩擦 (クラウゼヴィッツ)を考案している。摩擦とは地形、天候などの自然環境や敵の不規則な行動、偶発的な出来事などを含む障害を指している。実際に計画を実行に移すと予測不可能な事態が連続し、計画が依拠していた前提が崩れる場合がある。戦闘において摩擦はさまざまな形で現れるが、その一つに情報的要素がある。戦闘においては敵部隊は通常偽装・隠蔽によって自らの存在をできるだけ知らせないように努めるため、敵部隊の情報を得ることは基本的に容易ではない。断片的な情報を総合的に分析するだけでなく、変化する状況に応じて情報を更新することも必要である。しかし状況の全てについて完璧に把握することは事実上不可能であり、指揮官は常に不完全な情報に頼って決断を下す必要性がある。この情報の不確実性は摩擦の中でも特に戦場の霧と名づけてられており、戦場における意思決定の困難性を示している。 作戦計画の立案において、作戦の目的、敵部隊の規模や配置、作戦に投入可能な部隊、作戦区域の地形などに基づいて策定し、戦闘を具体的にどのように遂行するのかを計画する。例えば敵に対する攻勢作戦を立案する場合、敵の位置や規模などについて考慮した上で、どのような機動攻撃(包囲・迂回・突破など)を行うのかを決定して攻勢を計画する。この過程で必要な武器弾薬、時間、予想される失敗のリスクなどを考慮して具体的な運用が決められていく。作戦が策定された後、上級指揮官からまず各級指揮官に作戦内容が伝えられる。この内容に基づいて作戦部隊はそれぞれが自分の任務を理解して装備を整備し、砲兵部隊や航空部隊に火力支援を要請し、兵站組織から弾薬や食料などを受け取り、戦闘を準備する。戦闘で敵を殲滅するためには、まず敵の動きを「拘束」することが必要である。迅速に機動する敵に対して確実に機動攻撃を行うことは難しいため、迂回や包囲によって敵の機動力を減衰させる。敵の拘束に成功したら、敵の戦闘力を無力化・低下させるために、敵を混乱に陥らせる「攪乱」を行う。攪乱によって敵部隊の連携を分断して組織的な抵抗を封じ込め、逆襲の間隙を与えないように努める。戦闘では常に位置の優位性を巡る攻防があり、戦場では敵味方がしばしば移動している。この移動は「機動」と呼ばれ、この能力は機動力と考えられており、機動力は緊要地形の確保や迂回・包囲などの敵との移動速度を争う戦術行動に大きな影響を与える。また敵を拘束・攪乱して無力化すれば、最終的に火力攻撃・突撃を行う。これを「打撃」と呼び、ここで敵を制圧することができる。戦闘後に敵の一部が孤立化して残存していれば、戦果拡張が行われる。戦果拡張によってより多くの被害を敵に与え、戦闘の戦果をより拡大することができる。またこれに続いて戦場から離脱する敵に対して追撃が行われる場合もある。作戦が終了してからは、戦場を捜索して、死傷者に適当な処置、遺棄物を収集などの戦場掃除を行い、死傷者を収容、情報を収集、略奪を防止する。 陸戦は陸上で実施される戦闘である。徒歩、装輪などの複数の機動手段と部隊編制、多様な攻撃・防御・後退行動の戦術行動、火器が発達した現代では長短射程、直曲射弾道射撃などを有機的に組み合わせて行われる。また陸地は人間の生活基盤が存在するため、陸戦は複雑な心理的影響を与える。加えて陸戦は非常に多様な側面を持っており、作戦、地形、気候、時間帯、戦術などにより様々に分類することができる。
戦闘行動
戦闘理論の応用
陸上戦闘詳細は「陸戦」を参照
野戦 - 人工建築物がほとんど存在しない地域における陸上戦闘。
陣地戦
攻城戦 - 一方が要塞・城砦に立て篭もって防勢をとり、敵対する戦力がそれに対して攻撃して起こる戦闘(近代以降は要塞戦と呼ばれる)。
籠城戦 - 攻撃を仕掛けてくる敵に対し要塞・城砦に立て篭もって迎え撃つ戦闘。攻城戦の守勢側からの呼称(因みに、ではあるが南北戦争で目と鼻の先にある要塞同士で戦闘が行われた事例があった)。
遊撃戦 - 敵戦力の後方または敵の支配地域における戦闘(ゲリラ戦とほぼ同義)。
森林戦 - 熱帯雨林など植生が濃い地域における陸上戦闘。
山岳戦 - 高低起伏が激しい山岳地域における戦闘。
市街戦 - 人工建築物が密集する都市部における戦闘。
湿地戦