戦闘
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ヨーロッパにおいてもナポレオン戦争が発生する前にはヴェゲティウス(4世紀頃)、マウリキウス(539 - 602)、レオ[要曖昧さ回避]、ド・サックスフリードリヒ2世などの先駆的な研究がある。だが、近代的な戦闘理論が成立したのはナポレオンの時代に入ってからである。ナポレオン・ボナパルト(1769 - 1821)は軍事理論に関する論文を執筆しなかったが、士気が物的要素に対して三倍の効果をもたらすこと、また機動的に戦力を運用する重要性を指摘するなどの研究成果を残した。ナポレオンの幕僚でもあったアントワーヌ・アンリ・ジョミニはナポレオンの軍事思想の本質を理論化し[要出典]、戦闘を規定する戦いの原則を確立した。それは主力をある決定的な地点、敵の側面や背後に対して集中させるという普遍的な原則である。またナポレオン戦争で参加したカール・フォン・クラウゼヴィッツ(1780 - 1831)はジョミニとは別のアプローチでナポレオンの軍事思想を解釈し、独自のアプローチで戦闘の法則、戦闘力の要素、攻撃や防御の行動を体系化した。クラウゼヴィッツの戦闘理論は敵の殲滅を目的とする暴力的な行動によって定義されるものであり、戦闘力の優劣によって勝敗が決定されるものと定式化される。
近代の研究

ジョミニやクラウゼヴィッツに影響を受けた研究者たちは後に戦闘の研究を理論的に発展させるための研究成果を残してきた。アメリカではデニス・ハート・マハン(1802-1871)はジョミニの影響の下で戦闘にいて依拠するべき原則を提示し、ドイツではヘルムート・カール・ベルンハルト・フォン・モルトケ訓令戦術と包囲を重視した機動理論を提起した。一方のフランスではチャールズ・アルダン・ドゥ・ピッグによって戦闘における士気という心理的要素を解明して戦闘理論の研究に寄与した。海上戦闘の研究者であるアルフレッド・セイヤー・マハン(1840 - 1914)はジョミニや父親のデニス・ハート・マハンの影響の下で陸上戦闘の研究を海上戦闘に応用することに成果を挙げ、戦闘の一般理論が地理的環境の変化にも適応可能であることを示した。またモルトケの研究を受け継いだアルフレート・フォン・シュリーフェン(1833 - 1913)は戦闘における殲滅の原理を発展させて包囲殲滅の教義を確立し、その研究成果はシュリーフェンプランとして結実した。コルマール・フォン・デア・ゴルツはモルトケやシュリーフェンの影響の下でそれまでのドイツにおける戦闘の研究を総合し、フランスやイギリスに紹介する役割を果たした。フェルディナン・フォッシュはドゥ・ピッグの研究に影響を受けるとともにドイツの殲滅の原理を受容しており、特に士気などの精神的要素を戦闘の理論において位置づけた。航空戦闘に戦闘の理論を始めて応用したジュリオ・ドゥーエは陸上や海上とは異なる地理的、技術的条件の下で行われる戦闘が理論的にどのような作戦を可能とするかを明らかにした。またジョン・フレデリック・チャールズ・フラーは現代の戦闘の理論を研究するための科学的な方法論を準備し、戦いの原則を現代の戦闘の形態に応じて発展させた。フレデリック・ランチェスター(1868 - 1946)は戦闘の数学的モデル化に取組み、特に戦闘力と戦闘結果の因果的な関係を定式化した。
戦闘理論
戦闘の概念

戦闘の理論において戦闘の本質をはじめて哲学的に定義したクラウゼヴィッツは戦争との関係から戦闘の性格を捉えている。クラウゼヴィッツの見解によれば、戦争とは政治の延長として位置づけられており、政策の道具として戦争が特徴付けられることを論じており、これを現実の戦争と呼んでいる。同時にクラウゼヴィッツは政策の道具として戦争を見なさずあくまで政治に対して孤立的な行動として戦争を見なした場合、戦争本来の性格が無制限の暴力にあることを明らかにして絶対戦争として定式化した。彼の戦闘の基本的な概念は絶対戦争と同様に本来の性格が敵の殲滅に他ならないことを論じている。なぜならば、「戦闘は即ち闘争であり、この闘争の目的は敵の撃滅もしくは征服である」ためであり、これが戦闘の最も簡潔な概念であると定義づけた。彼にとって戦争におけるあらゆる戦略的な行動は戦闘に行き着くのであって、個々の戦闘はその規模を問わず、戦争全体の目的に従属する目標のために行われる。
戦争の階層構造

戦闘とは戦争の階層構造の中で理解することができる。ここでは戦闘の下位における交戦、そして戦闘の上位における作戦と戦争について概観する(Field Manual 100-5を参考)。

交戦(engagements) - 敵対する戦力間で発生する小衝突、小競り合いを指す。ただし、片方の戦力が防御行動に出ている場合は、これが戦闘に発展することはない。ただし航空戦においてはミサイル、機関砲が使用された時点で交戦と見なされる。

戦闘(battles) - 戦闘とはある目的を達成するため(
作戦を通じて)に敵対する戦力によって組織的に行われる戦術的な衝突であり、交戦の集合体である。


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