戦闘機
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ロケットエンジン
第二次大戦末期や戦後にはMe163などのロケットエンジンを搭載した戦闘機も存在した。強力な推力が得やすいため強力な加速が得やすい、他のエンジンのように外気を取り込まないために空気抵抗の要因となるエアインテークを機体に設ける必要が無い上、空気が薄い・存在しない所(宇宙空間など)でも運用可能(理論上)という利点があるが、安全性に難がある上に航続距離が極端に短いなどの欠点があるため実用機とは言い難く、現在では廃れている。またロケットはエンジン出力が弱かった時代のジェット戦闘機の加速用に使用される場合もあった。また、戦闘機の武装の一つであるミサイルの推進機関はロケットエンジンが主流である。
ジェットエンジン
出現当初は軸流圧縮式と遠心圧縮式のターボジェットエンジンが存在したが、時代と共に軸流式が主流になっていく。ジェットエンジンはレシプロエンジンよりスロットルの反応が悪く、戦闘機用エンジンとしては大きな欠点となった。また、レシプロエンジンに比して部分負荷運転時の効率が悪い。そのため、それを補うためにアフターバーナーを付加するのが、戦闘機用エンジンとしては必須となった。初期のジェットエンジンは低速特性が悪く、そのためにターボプロップエンジンが用いられたこともあった。しかしながら、戦闘機用エンジンとして実用化された例は第二次世界大戦後のジェットエンジン黎明期に開発されたイギリスの艦上戦闘機ウェストランド ワイバーンや、アメリカのXP-81 等の少数に留まった。やがてターボファンエンジンが実用化され、亜音速旅客機や爆撃機などで採用されていくが、超音速戦闘機用のものの実用化は更に後の事となる。現代ではターボファンが主流だが、旅客機など亜音速機のターボファンエンジンは、ほとんどの推力をファンで稼ぐプロペラ機に近い物なのに対し、超音速性能が必要とされる戦闘機用エンジンは、バイパス比が低くターボジェットエンジンに近い。だが、ターボジェットに比べより低速向きの特性のジェットエンジンであり、音速突破にはアフターバーナーの使用が必須になった。ただし最近の戦闘機用エンジンは、超音速巡航を可能にするためにさらにバイパス比が下げられ、また、機動性の向上を狙って推力可変ノズルを装備するものが現れている。レシプロエンジン時代と異なり、運動性が重視される制空戦闘機などにも双発機が多く見られる。ジェットエンジンは、プロペラの干渉が無いためエンジン同士を隣接して搭載でき、また小型エンジン双発の方が大型エンジン単発よりも出力効率が良く、機体を小型にできる傾向にある(F-5戦闘機等はそうした成功例である)。だが、エンジンは機体の部品の中でも高額で、燃費効率は小型エンジン多数使用より大型エンジン少数使用の方が良いため、コスト面や整備性では単発機が有利である。戦闘機でも大型機と小型機が存在する場合は、小型機を単発に、大型機を双発にしてエンジンの種類を統一すれば、量産効果でコストも下げられる(ちなみに前述F-5戦闘機の場合は、ミサイルや無人標的機と同じエンジンを使い、コストを下げている)。洋上での作戦が多いアメリカ海軍航空自衛隊などの機体は、安全性に優れる双発機が好まれる傾向にある(片方のエンジンが停止しても、もう片方のエンジンのみで飛行を継続できるため)。

詳細は「翼平面形」を参照
直線翼
レシプロ機時代は、戦闘機を含めて航空機全般の大半は直線翼であった。直線翼は揚抗比が高く機動性の確保には有利であるが、空気抵抗が大きく、また遷音速域では音の壁にぶつかるなど超音速飛行には向かない形状である。初期のジェット戦闘機にはレシプロ機時代からの継続として当然のように採用されているが、次第に後述する後退翼やデルタ翼など、超音速飛行向きの主翼形状に取って代わられる事になる。ただしF-104のように翼の幅を縮め、厚さを非常に薄くすることによって、超音速向きの特性にした直線翼も存在する。
後退翼
レシプロ機時代は重心をより後方に持っていくための手法であった。最初の実用ジェット戦闘機であるMe262もその目的で後退翼を採用したのであるが、音速付近での翼の衝撃波の発生を遅らせる事ができる利点が発見され、その後の亜音速・超音速戦闘機に広く採用された。直線翼よりも安定性に優れるのが長所であるが、運動性を重視する戦闘機ではかえって弱点ともなるため、主翼に下反角をつけて安定性を下げる設計が行われる場合も多い。F-86MiG-15など、初期の亜音速ジェット戦闘機の多くがこの形式である。
可変翼
低空での機動に有利な直線翼から、超音速飛行に有利な後退翼まで、翼の角度を自由に変えることができる。反面、システムが高価かつ複雑になる。MiG-23トーネードF-14等がこの形式。代表的な可変翼機であるMiG-23
デルタ翼(三角翼)
主翼の前後幅が大きいので主翼自体で安定を保つ設計に適しており、無尾翼形式と併用される事が多い。その場合空気抵抗がその分小さくなり、後退翼よりもさらに高速飛行に適するが、低速域では揚抗比が悪く、機動性の面では不利。また、離陸時の滑走距離が長くなり、着陸時には揚力確保のため大迎え角を取らなくてはならない(そのため、視界が悪くなる)などの欠点がある。初期では尾翼つき形式にする事、最近ではカナード翼を装備する事でこれらの欠点の改善を図っている(これをクロースカップルドデルタ(複合デルタ)或いはコウ・デルタと呼ぶ。ダブルデルタではない)が、空気抵抗に関するメリットは失われる。ただし同じ幅・後退角度の後退翼に比べれは、同等の空気抵抗でより翼面積を大きくできる。また構造上翼をより頑丈にでき、同等の強度であれば翼をより軽量化できるという利点はある。無尾翼形式としてはF-102ミラージュ IIIなど、尾翼つき形式としてはMiG-21など、カナードつきはグリペンタイフーンラファールなどに見られる。
ダブルデルタ翼(二重三角翼)
デルタ翼の欠点であった離着陸時の性能などの改善を図るため、翼の後退角に差を付けたもの。戦闘機としてはサーブ 35 ドラケンが唯一の採用例であるが、決して廃れた訳ではなく、後述するLEX (Leading edge extension) へと発展したと解釈される(ダブルデルタ翼の場合はデルタ翼の一種であるが、LEXは直線翼や後退翼と組み合わせることもでき、より範囲が広い用語と解釈できる)。
クリップトデルタ翼(切り落とし三角翼)
デルタ翼の翼端を切り落とした形状。後退角を浅くしながら翼面積を大きくとれるので、低速域での揚抗比が高く、亜音速域での機動性が高い。その代わり普通のデルタ翼ほど前後幅が取れないので無尾翼形式は無く、ほぼ尾翼つき形式が採用されている(ただし戦闘機でなく爆撃機であれば、アブロ バルカンという無尾翼クリップドデルタ翼採用の例がある)。F-15F-16など。
菱形翼
翼の前縁に後退角が、後縁に前進角がついているもの。空力特性よりもステルス性を優先した設計の新しい形式である。F-22YF-23F-35などがこの形式。
前進翼
後退翼と同じく、衝撃波の発生時差を付けることができるが、後退翼と違って翼端失速になりにくい。反面翼がねじれやすく、また後退翼とは逆の効果により安定性も悪くなる。しかし、前者は軽くて強度のある新素材の開発により、後者は機体制御コンピュータの発達などによって解決されてきている。また、安定性が悪いという事は急激な機体機動が可能という事を意味するので、機動性を重視する戦闘機にとっては利点とも言える(この観点から生まれたのが運動能力向上機である)。
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