宇宙モノを前提とした企画の時点で主役メカ(後のアイアン・ギアー)のデザインは決められており、同様の企画が他社で進行中と判明したことで、西部劇のコンセプトに改められた。西部劇は荒野が舞台になるイメージから、全てが荒野化した惑星ゾラが設定され、企画当時に騒がれていた石油枯渇問題という時事ネタを採り入れ、富野監督によってガソリンで動く設定が考案された。そして四輪車が合体変形する新たな主役メカ(ザブングル)が考案された[9]。 監督の富野由悠季が本作の作業に関わるのは、放送予定4?5カ月前というタイミングで、この時点で、主役メカであるザブングル以外のWMのデザインも、作業は既に開始されていた。主役機以外のメカコンセプトは、高年齢層を意識したリアルな兵器として、主役機は『トライダーG7』や『ダイオージャ』の延長線として、低年齢層向けにデザインされた[10]。 担当した池田繁美(当時スタジオ・ユニ所属)は、前番組の『ダイオージャ』(中盤から参加)に引き続いての担当だったが、冨野監督の制作入りが遅れ、顔を合わせての打ち合わせは1、2回しかなかった。舞台となる「惑星ゾラ」について、「海水面を300m下げた地球」というコンセプトが監督から提案され、池田はそれに基づいた地球図を作成し、米国西部の植生を参考に植物のデザインなども行った[11]。 吉川惣司に替わって監督を務めた富野由悠季は、「スケジュール的に見てニコニコやれる状態じゃない。正直言って初めは嫌々でした」と振り返り、『ガンダム』『イデオン』とシリアスな作風を連作した反動から、「肩肘張って作るばかりがアニメじゃない。遊んでみる気持ちがあっても良いんじゃないか」との思いから、本作は、自らの思想や理念、主張を一切行わずに仕事を成立させる実験台にしようという気持ちがあったとしながら、「点数をつけるとしたら30点が良いとこです。ストーリーが破綻しちゃって、構想論から見たら完全な失敗作です。ホント、粗だらけ」と厳しい評価を下している。しかし実験台としては大正解だったとして、「アニメの本道は『ザブングル』のようであるべきだ。僕は確信を持って結論に達しました」とコメントしている。また本作のような、監督の気持ちを一歩引いたアニメの制作には、予想を上回る作画と演出が必要だったと述懐し、絵コンテはストーリー性のある作品の3倍の手間が必要となり、動画の中割り指定までコンテに描き込まないといけなかったことを明かして、「アニメーターには極度に嫌われました」と語っている。そして制作過程については、『ガンダム』と『イデオン』に専念して手が回らなかった最初の1クール半は「絵とか動きが重い」と指摘し、その後、第2スタジオのアニメーターたちが、『超電磁マシーン ボルテスV』で身につけたノウハウに囚われ、本作の作画に慣れていないと感じ、2クールを過ぎても改善されなかったことから、当初の方針を転換、積極的な現場介入を行い、「『ダイオージャ』までのアニメで表現できると思っちゃ困る」「あなたの覚えてるアニメの仕方は皆ウソ」「総監督の僕のいうことを聞け」とパワハラに等しい発言を行って現場が険悪になり、「何人のアニメーターが辞め、何人の演出家が逃げ出すだろう」と当時の心境を明かした上で、3クール目からスタッフとの意思疎通が図られ、「走り出した」手応えを掴んだと証言している。本作を通じて富野は、「キャラクターを自由に動かすには、最低限の足場だけで良い」として、「アイアンギアーという1つの社会だけで良かった。ソルトみたいなのを作ってしまったのは姑息でしたね」と反省を述べ、この作品で本当に描かなければいけなかったのは「ジロン、エルチ、ラグたちが最後まで物語を走り切れるか否かの部分だった」として、方向性を掴んだのが物語の終盤近くだったが、その頃にはスタッフも楽屋落ちをやる余裕が生まれ、本来なら嫌いな楽屋落ちも、本作に関しては余裕の産物で気に入っていると述べている[12]。 原作を務め、五武冬史名義で脚本にも参加した鈴木良武は、「ギャグ物だけど、裏にシリアスな世界がある」として、それを踏まえてのギャグ表現を富野監督が色々考えてくれたとフォローした上で、「企画の根本である『ロボット物のギャグ』は一貫して活かされている」「(富野監督は)ギャグをどう描くか大変だったと思う」とその労をねぎらい、肩肘を張らず、リラックスして見られる作品であると述べている[13]。 演出を担当した加瀬充子は、「コンテが2本しか切れなかったのは残念」としながら、富野監督が想定する範疇で自由にやらせて貰った楽しい仕事だった述べ、本作は、全てのキャラクターが主人公であり、彼らが成長することで生きるパワーが感じられる作品だったと振り返り、無法な世界で主人公が自分の意思で生きるのが人間的で、普通なら感情を抑える所を出すことで、他のキャラクター達に新たな感情が芽生える流れが一番好きであるとして、「シリアス、ギャグ、全て含めて『ザブングル』」「結局、わたしは人間が好きなんですね」とコメントしている[14]。 演出を担当した関田修は、ギャグを貫いた作品の仕事は初体験で、「ギャグのタイミングの取り方が勉強になった」と、演出家としての成長の転機だった作品と振り返り、ギャグとシリアスとの徹底した振れ幅が本作の魅力で、主人公も当時主流だったヒーロー像から程遠く、親近感を持ったキャラクターだったと評価した上で、「仕事をしてい後味も良く、最初の印象も良い作品なんて、そうあるものじゃありません」と好意的なコメントを寄せている[15]。 演出を担当した鈴木行は「型に嵌らない作品」と評し、「合体」の一言で済ませる従来のプロセスを逆手に、細かいディティールで見せているとして、「楽しく、自然にキャラの動きが浮かんできた」との感想を述べている。一方で制作当時の反省点として、「中コマヌキ」を多用し過ぎたことを挙げ、メリハリが必要だったとしている。そして自身は戦闘シーンが苦手で、38話以降のアイアンギアーとイノセントの戦いは辛い仕事だったと明かして、「作品は好みだったんですが、富野(監督の)感覚を掴むまでは、かなり肩を張ってましたね」とコメントしている[16]。 演出を担当した菊池仁は、「考える間もなく入り込めた」と当時を振り返り、「ザブングルは動きのアニメ」と評し、演出の融通が利く反面、ギャグで破目を外さないよう注意し、ギャグのテイストを掴むのが一番苦労したと語っている。また、担当したエピソードについては46話を挙げて、「盛り上がりを作るための途中経過な仕事が多く、ドラマ的変化に乏しかった。トロン・ミランみたいな劇的な話がやりたかった」と、無念さを滲ませたコメントを寄せている[17]。 脚本を担当した荒木芳久は、「何を考えているか掴みにくい作品だった」と述懐し、登場人物が多く、各々にスポットが当たる等して展開が分からず、「演出の方々は苦労したと思う」と労った上で、スタッフ達が制作に慣れて来た中盤以降が、自然な感情や本音を表現できていて面白いとして、「ザブングルは見る側によって自由に捉えて貰えるごった煮のような作品」と評している。また、自身が手掛けた脚本回では、ハナワン族の話が一番気に入っていると述べている[18]。 かつて地球と呼ばれた惑星ゾラはどこまでも砂漠が広がる星となっていた。「イノセント」と呼ばれる支配階級の人々がドーム都市に住み、「シビリアン」と呼ばれる庶民階級の人々がその外に住んでいた。シビリアンたちは、ロックマン(ブルーストーン採掘業者)、ブレーカー、運び屋、交易商人などを営んで生活していた。 ゾラには「泥棒、殺人を含むあらゆる犯罪は三日逃げ切れば全て免罪」という「3日限りの掟」が存在した。しかし、シビリアンの少年ジロン・アモスは両親を殺したブレーカーのティンプ・シャローンを、掟の三日を過ぎても追いかけ続けていた。ジロンは目的を果たすために戦闘用ウォーカーマシン「ザブングル」を手に入れようとするが失敗し、その持ち主である交易商人「キャリング一家」のお嬢様エルチ・カーゴや無法者集団「サンドラット」の女リーダーであるラグ・ウラロたちとランドシップ「アイアン・ギアー」に乗り込み、行動を共にすることになる。アイアン・ギアーの派手な活動はやがてイノセントにも注目されるようになる。やがてアイアン・ギアーのクルーたちは反イノセント組織「ソルト」と合流していく。 「イノセント」の本来の支配者である貴公子アーサー・ランクはジロンたちに共感し、真実を告げる。「シビリアン」とは、将来的に地球(ゾラ)を託すために「イノセント」によって人工的に創りだされた種族であった。大異変により環境が激変し、それまでの地球人の体のままでは生存できなくなってしまったのだ。「イノセント」たちは「シビリアン」を穏健に支配育成し、いずれはゾラを譲るつもりだった。しかし、対立する「イノセント」の大物カシム・キングはこの計画を反故にし、「シビリアン」を支配し続けようとしていた。 カシム・キング一派はエルチを拉致して洗脳し、アーサーやジロンたちを抹殺させようとする。ジロンたちは何とかエルチを救い出し、アーサーの助力を得て洗脳を解く。シビリアンたちはあちこちで暴動を起こしてキングの勢力に対抗し、これを圧倒するに至る。窮地に陥ったカシムはICBMで反撃しようとするが、その誘爆で死亡する。しかしこの過程でエルチは負傷し失明してしまう。シビリアン側の勝利が確定した後、エルチは洗脳の所為とはいえ仲間を裏切った罪悪感から荒野に独りザブングルを駆り飛び出すが、迎えに来たジロンの呼びかけに応え、仲間と共に生きていくことを決意する。 記事の体系性を保持するため、リンクされている記事の要約をこの節に執筆・加筆してください 登場キャラクターは古今東西の様々な銃器を使用する。例えば、ジロンは「ボーマーサイトを装備したカスタムタイプのブローニング・ハイパワー」、ティンプは「コルト・ピースメーカーを二挺拳銃で」など。これらはオリジナルではなく、イノセントがコピーして製造し、シビリアンに支給したものである。WMやLSに装備されている火器も同様で、特に12.7mmM2重機関銃と20mmFlak38対空機関砲は多用されている。 移動手段は基本的に車輪、ホバークラフト、歩行(WM)のいずれか。砂漠などの不整地が多いため、車輪は少数派である。飛行機械はほとんど存在しないが、実在する爆撃機フライング・ガン・シップ「ミッチェル」(ノースアメリカンB-25J爆撃機)などが登場する。外観はオリジナルの通りで米軍のマーキングまで再現されているが、イノセントがドームの外に出る際の移動手段として使用されている。機内はドーム内と同様に彼らの生命が保たれるようになっており、内装も作り変えられている。最終回で飛行機だけでなく、飛行船や気球等ドームから逃げ出すイノセントたちが乗る機体が大量に登場している。
制作
美術
評価
富野由悠季
鈴木良武
加瀬充子
関田修
鈴木行
菊池仁
荒木芳久
ストーリー
登場人物「戦闘メカ ザブングルの登場人物」を参照
登場メカ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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